強い感情に圧倒されて衝動的な態度を取ってしまったり、過去の後悔や将来への悪い想像が
止まらなくなったりすることはありませんか。
感情を安定させるには、マインドフルネスを使って「今この瞬間」を生きることが大切です。その方法を、メンタルクリニック院長である須田賢太著書の『メンタルヘルス大国アメリカで実証された 心がモヤらない練習』より紹介します。
目次
マインドフルネスで心をコントロール
マインドフルネスとは、「今この瞬間」を生きることです。今に注意を向けることで、怒ったり悲しんだりというような感情に振り回されるのではなく、自分で自分の感情をコントロールしやすくなります。
なぜなら今起きていることに注意を向けることで、自分の思考や思い込みに疑問を持ったり、ストップをかけたりする機会が増えるからです。
つまり、感情をコントロールするためのハンドルとブレーキを手に入れるイメージです。
マインドフルネスは、もともとは仏教の瞑想から派生したもの。現在マインドフルネスは科学的根拠に基づいた心理療法として、医療現場でも使われています。
東洋思想をもとに生まれたマインドフルネスは、日本でも比較的取り組みやすい方法といえるでしょう。
マインドフルネスで賢い心へ
マインドフルネスが習慣化されると、感情的な心と理性的な心のバランスがよくなり、やがて賢い心に到達して心は安定します。
以下、3つの心について解説します。
- 感情的な心
- 理性的な心
- 賢い心
感情的な心とは
イライラやもやもやなどの不快な感情にいつも振り回されていると、「ネガティブな気持ちになる私が変かな」「いっそ、なにも感じなければラクなのに」と思うこともあるかもしれません。
でも、感情自体は悪いものでも間違ったものでもありません。今あなたの中に湧いている感情は適切だということを、まずは知ってください。
強い感情は、思考や行動に影響を及ぼします。
恋人とケンカをして怒りがこみ上げ「もう私のことなんか好きじゃないんだ」と思い込んだり、勢いで「別れる!」といってしまうなどです。
一方で、「感情的な心」が役に立つケースもあります。好きな人に振り向いてほしくて自分磨きをがんばったり、上司に褒められたことが嬉しくて仕事によりいっそう力が入ったり。
本来の自分以上の力を発揮できるときは、「感情的な心」がモチベーションになっていることが多いもの。ある程度の「感情的な心」は人生に必要なのです。
理性的な心とは
「感情的な心」の対になるのが「理性的な心」です。物事を論理的に計画し、評価する、冷静な心。仕事や家事をするとき、問題を解決しようとするときに私たちが働かせるのが「理性的な心」です。
気分がいいときは簡単に働かせることのできる「理性的な心」ですが、そうでないときは難しく、代わりに「感情的な心」が強く働きます。
賢い心とは
2つの心のバランスをとり、統合することによって、「賢い心」に到達します。その手段となるのが、マインドフルネススキルです。今この瞬間の感情に意識を集中させながら、冷静に把握・対処していくことで、「感情的な心」と「理性的な心」がちょうどいいバランスで共存する「賢い心」の状態にもっていきます。
「賢い心」は本来、誰もが持っているもの。また、いつでも「賢い心」をキープできている人はいません。大小の差はあれ、みんな2つの心の間で揺らいでいます。
だから感情が不安定でも、心配はいりません。マインドフルネススキルを身につければ、「賢い心」に到達して心を安定させられるのです。
マインドフルネスとは、世の中や自分自身を深く知ること。とはいえ、あまり難しく考えず、楽しみながらトライしてみることが、賢い心へ到達する秘訣です。
マインドフルネススキルを磨くための7つのキーワード
マインドフルネススキルを習慣化するための大切なキーワードをご紹介します。
以下の頭文字をとって「ONE MIND」ひとつの心です。
- One thing (ひとつのこと)
- Now (現在)
- Environment (環境)
- Moment(瞬間)
- Increase senses (感覚を高める)
- Non-judgmental (断定しない)
- Describe (描写する)
1. One thing (ひとつのこと)
ネガティブな過去や未来を想像しがちな人は、「ひとつに集中する」ことを意識してみましょう。
食事中は食べることだけ、入浴中は体や髪を洗うことだけに集中することで、今この瞬間の感覚に注意深くなります。
2. Now (現在)
過去や未来ではなく、現在に意識を向けることで、心を穏やかなほうへ導きましょう。
私たちは、無意識的に体験をフィルターにかけています。今この瞬間の体験が、自分の過去や未来にとってどんな意味があるのかを判断し、思い込みを作っているのです。
マインドフルネスは、思い込みという色眼鏡を外して、今この瞬間に起きていることに集中します。
3. Environment (環境)
そこで起きていること=事実に意識を向けます。事実は事実として受け止め、断定しないこと。事実と思い込みを切り離すことが、モヤモヤを止めるカギになります。
4. Moment(瞬間)
その瞬間の体験に意識を向けます。
マインドフルネスでは、できるだけ思い込みというフィルターを外して、今この瞬間に起きていることに集中することが大切です。
5. Increase senses (感覚を高める)
視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚を研ぎ澄ませることで、今この瞬間に起きていることに意識を集中させます。
おすすめは、触覚を使った方法。足湯をしたり、ペットをなでたり、意識のすべてを集中させて丁寧に感じとりましょう。
6. Non-judgmental (断定しない)
善悪や正誤で物事を評価しません。
良いことか悪いことか、正しいか間違っているか、すべきかすべきではないか。物事に白黒つけたくなるときは、あえてグレーのままにしておきましょう。
自分の価値観で判断するのではなく、自分が本当に大切にしたいことを思い出して、そのために必要な言動を選択します。
7. Describe (描写する)
体験を言語や思考で表現します。
嫌な気持ちになったら、まずは自分の体験を観察すること。それから描写です。今なにが起きているのか、自分の中でどんな感情が湧き上がっているのか表現します。
思い込みを混在させないようにしましょう。思い込みが入っていたら、それを除いてもう一度言葉にします。
まとめ
人間には感情的な心と、理性的な心が存在します。どちらにも長所と短所があり、使いこなすことで、「賢い心」へと到達できるようになるでしょう。
自分の感情をコントロールするには、マインドフルネスが最適です。マインドフルネススキルを身につければ、「賢い心」に到達して心を安定させられます。
日常にマインドフルネスを取り入れて、感情をコントロールする技術を身につけましょう。
『メンタルヘルス大国アメリカで実証された 心がモヤらない練習』では、強い感情に振り回されてイライラしたり、つらい気持ちを抑えこんだりするのではなく、自分の心をコントロールできるようになる30の行動リストを4コママンガとともにお届けしています。
心を落ちつかせ、今を楽しみましょう。