村本大輔のニューヨークの日常コラム WTF

移民として

#連載エッセイ
#村本大輔のニューヨークの日常コラム WTF

ウーマンラッシュアワーという漫才コンビの村本大輔と言います。
僕は2024年の2月からニューヨークに活動の拠点を移し、マンハッタンに住み、英語で、毎晩コメディクラブでネタをやってまわってる。
英語でというと聞こえがいいが、日本語で書いたものをChatGPTで英語にしてもらいそれを丸暗記して話している。高校も卒業していないので40歳でbe動詞を覚えたレベルだ。
そんな僕のニューヨークでの生活をここに書き、少しでも僕のことを知ってもらおうと連載を受けることになった。

「スーパー日本人ファースト」

今、日本は外国人の受け入れをどうするか、という議論真っ最中。

そんな僕はいま、ニューヨークで移民として暮らしてる。
第二言語に苦戦し、友達を作るのに苦戦し、知らない街で不安で泣けてくる夜もある。

ニューヨークから日本に戻ると、ホテルの清掃やコンビニで働く外国人、彼らを見ると、いつもかっこいいな、すごいなと思うようになり、後ろに人がいない時なんかは、どこの国出身?それはどんな国なの?日本どう?とか話しかけるようになった。

彼らもちょっと気持ち悪いだろう。すごいキラキラした目で話しかけてくるよくわからない日本人の俺を見て。

アメリカで不法で入国し、働いてる人たちをみても、あの国境を命からがら超えてきたのか、すごいな、と尊敬すらする。

ちなみに、日本は国民の3%しか外国人がいない。

2023年、日本政府は約 14,000人 の難民申請を受け付け、そのうち 303人 を認定(約 2 % の認定率)これでも日本としては過去最高の人数だった(ちなみにドイツは2023年に約51%の難民認定率)

日本は依然として非常に低い数字で、国際順位では、実質的な“最下位ランク”に近い位置にある。

だから今回の選挙で「外国人問題」を論点にした党があったが、外国人問題などなく、そこに問題をあえて作っているようにみえた。

日本人ファーストという言葉が流行ったが、実際は、日本はずっと「スーパー日本人ファースト」な国だ。

外国人を受け入れない人たちの言い分は、要は不安だからだ。治安が悪くなる不安。
しかし、外国人の受け入れは増えても犯罪率は下がってる。

しかし不安な人たちは、ニュースで容疑者の横に違う国の国籍が書いてると不安になり反応する。

秋田美人と同じだ。前に秋田に行った時、友達が「見て!大輔!美人がいる!あそこにも!美人ばっかりいる、秋田美人てほんまなんやな」と。

しかし彼は美人しか見てなくて、そうでない人はとばしていた。

外国人の犯罪もそうだ。そればかりを意識して探すから多く感じる。

今後、日本人が犯罪を犯したときも、容疑者の隣に赤線引いて日本国籍って書いたら、一気に「わ、日本人がまた犯罪を!」って言いだすはずだ。

しかしデータとして、犯罪率が少なかろうと、不安な人たちは数字を受け付けない。
コロナの時もワクチンの時も互いに不安な人たちは、数字を気にしない。

ところで、福島の原発事故の処理水を、日本政府は福島の海に流した。

その海を使う韓国や中国は、日本政府に抗議。韓国人の若い女の子達がデモで自分の髪を切って反対運動をしていた。

流す側の言い分は、薄めてて安心だから大丈夫。科学の力、データがある、と。

その時僕は、日本が嫌になった。自分の国にいられなくなった外国人は不安なもの扱いし受け入れず、処理水は安心だと言い向こうに受け入れさせる。

たまたま生きやすいだけ

受け入れられることがどんなに嬉しいか、という話をしたい。

驚くかもしれないが、日本人にも難民はいる。

最近、同性カップルの女性が、日本で同性愛者として差別を受けた、とし、それをカナダ政府が「難民」として認定して、彼らを国に受け入れた。それも難民だ。

同性愛者が生きづらく、差別的な扱いを受けて日本から逃げてカナダへ。

ニューヨークやシカゴ、ロンドンでライブをやると、日本人の人たちも来てくれるんだけど、どの街にも同性愛の日本人がいて、彼らは同性婚が禁止されてる日本を離れ、それが認められる外国に来た。まさに、流れてきた。

僕はいつも”たまたま”だと思ってる。

たとえば、僕が日本という国で生まれ、健康で生まれ、女性が好きで、それらはたまたまで、たまたま生きやすいだけ。日本に住む上で、なんの不自由もない。

同じようにその国に生まれ、たまたま、その国で生きづらい人たちがいる。

本来なら、その国が彼らも生きやすいように、形を変えていけばいい。文化やルールは変わる。

外国人が入ってくると日本の文化が、形が変わる、という人は、西洋人のようにファーストなんて英語を使い、着物ではなく、スーツを着て訴えている。

日本が変わる?不都合な人がいれば変えていけばいい。

普遍的なものは自分の中にこそあればいい。移民としてそんなことを思う。


村本大輔
コメディアン。ウーマンラッシュアワー。
1980年生まれ。福井県出身。2008年中川パラダイスと漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。漫才コンクール、NHK上方漫才コンテスト、THE MANZAIなどで優勝。
Abema TVのMCとしてニュース報道に関わったことをきっかけに、政治・社会問題を取り上げた漫才をつくりはじめる。自身の考えをストレートかつスピーディーに届ける独演会が話題となり、舞台での活動が軸となっていく。2024年2月からニューヨークに拠点を移し、スタンダップコメディアンとして日々ステージに立つ。

Instagram:@muramotodaisuke1125
Voicy:https://voicy.jp/channel/820839