ウーマンラッシュアワーという漫才コンビの村本大輔と言います。
僕は2024年の2月からニューヨークに活動の拠点を移し、マンハッタンに住み、英語で、毎晩コメディクラブでネタをやってまわってる。
英語でというと聞こえがいいが、日本語で書いたものをChatGPTで英語にしてもらいそれを丸暗記して話している。高校も卒業していないので40歳でbe動詞を覚えたレベルだ。
そんな僕のニューヨークでの生活をここに書き、少しでも僕のことを知ってもらおうと連載を受けることになった。
目次
トランプを批判すると
ニューヨークでコメディアンをやって約一年半が過ぎた。
トランプが大統領になってから、まわりの日本人の人たちの不安が伝わってくる。
この前、シカゴでライブをした時、おれがトランプをネタにしたら、ライブにきてた日本人の芸大生が「トランプをネタにしてくれてありがとう、学生は今大変だ」と言った。
どうしたの?って聞いたら、トランプを批判すると、追い出される可能性がある、と。
直接批判できないから、絵があり、歌がありコメディがある。
時に芸術は風刺として、声を上げられない人たちの代弁をする。
しかし学生から、特に芸大生から自由な表現を奪うなんて。
今度、アメリカの田舎の方に住む日本人に呼ばれて日本語と英語でネタをやる。
主催した方から「トランプ批判は気をつけて」と言われた。その州はトランプ支持者が多数の街で危険だ、と。
最近、フィリピンのコメディアンが銃で撃たれて殺された。
理由は、特定の宗教をコメディで非難してたから、だそうだ。
彼のYouTubeをみたけど、そのジョークでお客さんは大笑いしてた。
しかしその動画を見た熱狂的な信者が彼を撃ったらしい。
アメリカで一度、こんなことを聞いた。
コメディアンとして成功したいなら、ギリギリの線を見つけろ、その線の上でダンスをするのがコメディアンの仕事だ、と。
素晴らしい言葉だが、普通の人間は絶対やりたくないだろう。
コメディクラブでは線の上であっても、それがSNSで外に出た瞬間に、線を越えることがある。不寛容な人間の線はとても狭い。
そしていま、コメディアンは名刺がわりに自分のジョークをSNSに投稿する時代だ。
守りに入って、内側でひっそり芸人をやっていくか、撃たれる覚悟で攻めて、コメディアンとしての生き様を見せるか。
芸人を守るならば
俺の場合、日本では吉本という会社に入ってる。
俺が波風立つようなジョークを言うと、クレームが来るのは会社だ。
そして会社はマネージャーに注意する。
テレビの仕事の場合はテレビ局にクレームが来る。
不倫ぐらいでテレビから追い出されるぐらいの、リスクをとにかく嫌がるサラリーマンテレビ局員が作る世界で、ジョークは忖度により、政府ではなくテレビ局側がカットする。
「あなたを守るために」というが、守るべきは俺の仕事ではなく俺の言論の自由だろうと思う。
だから、おれがトランプ批判をアメリカでやることを心配してくれる人は、俺の身を心配してくれる。おれのVISAが剥奪されることを心配してる。
でも、追い出されたら追い出されたで、それをネタにまた違う国や街でそれをネタに人を笑わせるだけ。
なので芸人を守るならば、芸人の自由な言論を守って欲しい。
フィリピンの芸人は命は奪われたが彼の自由なコメディは残り、日本人の俺のところに届いて勇気をもらった
村本大輔 コメディアン。ウーマンラッシュアワー。 1980年生まれ。福井県出身。2008年中川パラダイスと漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。漫才コンクール、NHK上方漫才コンテスト、THE MANZAIなどで優勝。 Abema TVのMCとしてニュース報道に関わったことをきっかけに、政治・社会問題を取り上げた漫才をつくりはじめる。自身の考えをストレートかつスピーディーに届ける独演会が話題となり、舞台での活動が軸となっていく。2024年2月からニューヨークに拠点を移し、スタンダップコメディアンとして日々ステージに立つ。 Instagram:@muramotodaisuke1125 Voicy:https://voicy.jp/channel/820839