休憩時間の「雑談」って、ちょっと困ることないですか? でもスマホを見て自分の殻に閉じこもるのはNGです。雑談は、人間関係にも自分のコンディションにもいい影響をもたらします。シリーズ累計90万部の『アウトプット大全』の超実践的コミック『もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら』著者の精神科医・樺沢紫苑が解説します。
目次
接触回数が多いほど、相手との親密度は深まる
「雑談が苦手」という人は多いと思います。話す前に「何か気の利いたことを言わないと」「オチがない話は迷惑かな」などといろいろ考えてしまい、「だったら話さないほうがマシ」と、相手と目を合わさないまま、スマホに目を落としたり、休憩室や洗面所に逃げるよう去ったり……。これでは、せっかくのコミュニケーションの機会が失われてしまいます。
そこでおすすめしたいのが「1分雑談」です。「週末はどこかへ出かけた?」「今日のシャツ、似合ってるね」「忙しそうだね。最近仕事はどう?」など、ちょっとしたことでいいから、「とりあえず」相手に話しかけてみるのです。
というのも、有名な心理学の法則「ザイオンス効果(単純接触効果)」によると、接触回数が多いほど相手との親密度が深まります。1回の「実のある会話」より、「ちょっとした声がけ」を何度も行うほうが、相手と仲良くなることができるのです。
「雑談不足」がうつを招く
相手とのコミュニケーションを深めるだけでなく、自分のストレス状態をコントロールするうえでも、「雑談」は非常に大切です。雑談の心理的効果に関する研究によると、職場での雑談には、ポジティブな気持ちを増やし、燃え尽きを減らす効果があることがわかりました。
最近はテレワークで仕事をする人が増えましたが、テレワーク中に燃え尽きたり、うつになったりする人も多いと聞きます。その理由として指摘されているのが「雑談不足」です。雑談には、癒やしの効果やガス抜きの効果もあるのです。
休憩時間には雑談することを、強くおすすめします。「机の前に座ったままスマホを触っている」なんて、もってのほか。スマホは「目と脳を疲れさせる」「座り続けることで、脳と身体のパフォーマンスを下げる」と、ダブルで逆効果です。
「近くの公園を、気の置けない同僚と雑談しながら散歩する」−−そんな休憩時間を過ごせたら、最高のリフレッシュになるでしょう。同僚との仲もさらに縮まり、一石二鳥です。テレワーク中なら、オンライン会議前後のちょっとした会話や、普段接する家族や友人との雑談を大切にしましょう。
天気の話でいいから「とりあえず」話しかける
こうした「雑談する」という行為は、「話す」「書く」「行動する」「伝える」などと並ぶアウトプットの一種です。『学びを結果に変えるアウトプット大全』(2018)では、こうしたアウトプットの重要性と、その具体的な方法を紹介しています。
そして、同書を完全オリジナルストーリーで漫画化したのが『もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら』です。主人公の外山健(とやまたける)は、顔色も悪く、頭も回転せず、アイデアもまったく出ない「社畜ゾンビ」状態の会社員。早く出勤した朝、ばったり遭遇した後輩と公園を散歩することになります。そして、どうということのない雑談に癒やされた気持ちになるとともに、彼女との会話の中から、「社畜ゾンビ」脱出への道筋となる気付きを得るのです。
何気ないように思える「雑談」には、ストレス解消、癒やし、ガス抜き、コミュニケーションの最適化など、数え切れないほどの効果があります。困ったら、「暑いね」「雨続きで困っちゃうね」といった天気の話でかまいませんから、「とりあえず」話しかけてみましょう。相手との距離、自分の心のあり方、いずれも目に見える変化が現れてくるはずです。
この記事は、”もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら” 樺沢紫苑(著)・齋藤邦雄(漫画) の新刊コラムです。