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精神科医が提案、仕事に必要な「叱る力」

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あなたは部下のことを叱れていますか? 気になることがあっても「ハラスメントだ」と言われるのが怖くて、なあなあにしていませんか? タブーだらけの現代社会でも、部下の成長を促す効果的な「叱り方」があります。シリーズ累計90万部の『アウトプット大全』の超実践的コミック『もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら』著者の精神科医・樺沢紫苑が解説します。

ハラスメントを恐れて「叱れない」上司が急増

上司に叱られてへこんだ経験は、多くの人がお持ちでしょう。逆に、叱った部下が落ち込む姿を見て「言い過ぎたかな……」と後悔した経験のある上司の方もいるでしょう。

上司が部下を叱るのは、相手に「伸びしろ」があるからです。「叱る」とは、「失敗」や「好ましくない結果」に対するフィードバック。結果として「気付き」を誘発し、「対策」を講じることで「行動」の変化が起こり、相手の「自己成長」が促されます

もし、上司から「お前からは本気が感じられない」と厳しい言葉で叱責されたとしたら。そこには、あなたにもっと本気で取り組んでほしいという熱い想い、ポジティブな気持ちがあります。叱られた瞬間は大きく落ち込むかもしれませんが、その後、「自分も本気でやりたい!」とスイッチが入るはず。これが、「叱る」ことの大きな効能です。

ところが、現在はハラスメントに怯えて、部下のことを叱れない上司が増えています。理由としては、上司と部下との間に、そもそもの信頼関係が成り立っていないことが挙げられます。

「叱る/叱られる」を円滑に行うには、信頼関係が不可欠です。上司から部下に対しては「育てたい、成長してほしい」という愛情や思いやり。部下から上司に対しては、「聞く耳」を持ちたくなるようなある種のリスペクトがないと、「叱る/叱られる」の関係は成り立たないのです。信頼関係がないと、叱ったところで反発心を招くだけで、むしろ逆効果になりかねません。

修正してほしい具体的な行動を指摘

信頼関係を構築したうえで、上手に「叱る」にはどうしたらよいのでしょうか。
それは、修正してほしい具体的な行動を指摘すること。「1億円もの損失を出してどうしてくれるんだ!」はただの怒り。「先方との連絡不足があったんじゃないのか?」と具体的に指摘し、失敗した原因、理由、対策を本人に考えさせるのです。本人が気付かなければ一緒に考え、ヒントを出しましょう。

そして、リモート勤務が増えるなど、働き方が大きく変わったこの時代だからこそ、叱るときには直接目を見て伝えたいもの。メールやLINEではなく、最低でも電話がベター。文字だけではなく、自分の声を通じて訴えかけることで、「叱る」側の真剣な気持ちがまっすぐに伝わるはずです。

「怒る」は、怒りの感情を相手にぶつけること。つまり、怒る人自身の「自分がスッキリする」ことが目的であり、相手の成長を第一に考えているとはいえません。また、「行動」ではなく、「性格」「人格」「人間性」などを攻撃するのは、自己成長につながらないだけでなく、それこそパワハラで訴えられかねません。

「叱る」アウトプットで、部下の成長を促進

「叱る」のは、「話す」「書く」「行動する」「伝える」などと並ぶアウトプットの一種です。『学びを結果に変えるアウトプット大全』(2018)では、こうしたアウトプットの重要性と、その具体的な方法を紹介しています。そして、同書を完全オリジナルストーリーで漫画化したのが『もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら』です。普段ビジネス書を読まない人でも、短時間でわかりやすくそのエッセンスを吸収できます。

感情的に怒るだけでは、部下は育ちません。あなたが上司の立場なら「怒るのは自分のため、叱るのは相手のため」。叱られることのある部下の立場なら「叱ってくれるのは自分のため」と肝に銘じましょう。そうすることで、「叱る」というアウトプットで「気付き」が誘発され、自己成長へのステップとすることができるのです。

 

この記事は、”もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら” 樺沢紫苑(著)・齋藤邦雄(漫画) の新刊コラムです。


もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら 樺沢紫苑(著)・齋藤邦雄(漫画)

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