仕事

HSPは弱くない。恵まれた才能を活かして人生を楽しむ方法/はるか@nurse_hal

#仕事

ここ数年で浸透してきたHSP(繊細さん)という言葉。繊細ゆえに「弱い」イメージがあるかもしれませんが、HSPだからこその強みに気づき、それを最大限に活かす選択をすることで、人生は格段に楽しいものに。HSP歴36年のはるかさんが、自身の体験をもとにHSP攻略法をお話しします。

HSP歴36年の僕が伝えたいこと

HSPの持つ繊細さは大きな武器になる

HSPは人前で話すことが苦手な場合が多いです。僕もいま、とても緊張しながらお話ししています。Twitterでは「苦手なことはがんばらなくていい」「無理にやらなくていい」と発信している僕が、なぜ「怖い」という思いを抱えながらここにいるのか。それは、HSPで困っている人や毎日がつらいと思っている人に対して、こんな僕でもプラスの方向に向くような影響を与えられるかもしれないと思ったからです。

僕はHSP歴36年。これまでいろんなことを経験し、考えすぎて悩み、悔しい思いもたくさんしてきました。普段ならできるはずなのに、誰かに見られていることで緊張してうまくできず、「できない人」という評価を受けたり、馬鹿にされていると思い込んで躍起になってさらに失敗したり……。

でもいまは自分を信じることができています。一度失敗しても、2回目、3回目、10回目、20回目で自分の実力を発揮できればいい。人に見られている状況は苦手だけど、時間をかければ必ずできる。そう思えるようになりました。

僕は、「HSPは弱い」というネガティブなイメージがあるのが本当に悔しい。本来、HSPの持つ繊細さは大きな武器になります。僕は今日、HSPは欠点でも弱い存在でもない、本当はすごいということを証明しにきました。僕の経験が誰かの役に立ち、誰かを救うことができれば嬉しいです。

自分は気の小さい人間だと思って生きてきた

僕がHSPという言葉に出会ったのは3年前。それまでは「なんとなく生きづらい」「自分は人とズレている」「普通ではない」と漠然とした気持ちを抱えていました。

たとえば、友達と遊んでいると楽しいのにすぐ帰りたくなる。人から注目されると尋常じゃないくらい緊張する。相手の機嫌がなんとなくわかる。人混みが苦手。小さな物音ですぐ目が覚める……。

僕は内向的で、些細なことを気にしてあれこれ考えすぎる、気の小さい人間だと思って生きてきました。そんな自分をなんとかしようと思っていろんな本を読む中でHSPの本に出会い、あらゆることが腑に落ちたんです。原因がわかれば対処ができます。自分のことがわかれば、苦手なことを回避することもできるし、得意なことや好きなことに気づいてそれを活かすこともできます

僕がとくにトラウマを抱えているのは、本来の実力を正当に評価されてこなかったこと。人に見られていると緊張して実力が出せない場面がたくさんあり、いくら「これは僕の実力じゃない」と言っても言い訳にしか映らないのも悔しかったです。

HSPには、優しい人、誠実な人、実力のある人がたくさんいます。いいところがたくさんあるのに、そもそも人前で目立つことが得意ではないので評価されにくい。それどころか、HSPが苦手としていることにばかり着目され、悪い評価を受けてしまう。

その誤解を解いていきたい。同じHSPの人の役に立ちたい。そう考えて始めたのがTwitter。その後、YouTubeでも情報発信をするようになりました。そのうちいろんな人から相談をいただくようになり、そんななか今回のトークイベントのお話もいただきました。

HSPってどういうもの?

5人に1人がHSP

HSPはHighly Sensitive Personの略。直訳すると「とても繊細な人」。日本では「繊細さん」とも呼ばれています。

HSPは、生まれつき脳神経が他の人より刺激を受け取りやすいという特徴を持っています。生まれ育った環境やトラウマ、性格が原因ではありません。5人に1人の割合で存在していて、人間以外の動物にも同じ割合で存在しています。

HSPが生まれてくる理由として有力なのは、繊細な個体が生まれれば種の存続に有利だからという説。人間が狩をしていた時代でいうと、狩を主体でおこなう身体能力の高い個体だけでなく、裏で作戦を立てて指示を出す個体、事前に危険を察知する個体などが存在した方がバランスがよく、効率的に狩ができます。どちらが優れているというわけでなく、どちらも必要なのです。

HSPの特徴

HSPは、情熱性、思いやり、観察力、協調性、創造力、危険予知能力など、社会から求められる能力をたくさん持っています。

にもかかわらず、なぜ「人より劣っている」と感じる人が多いのか。それは、現代人はHSPの能力を発揮するために必要な環境にいないから。狩の時代は、周囲の状況を敏感に察知して危険を知る能力が必須でしたが、現代ではそうした危険はあまりありません。

また、現代はいろんなところからいろんな情報を得られる時代。1日で得られる情報量は、江戸時代の1年分とも言われています。そんな時代なので、脳を常に使っているHSPは人より疲れやすく、考えることが多いので脳がキャパオーバーになってしまうのです。

現代社会は非HSPの目線でつくられている

いまの社会は、非HSPの考えをもとにつくられていることが多いです。「こういうときはこうするべき」「こういう人が優秀」など、非HSP目線での風潮がたくさんあります。なぜなら、非HSPの割合のほうが圧倒的に多いから。

上司とは「飲みニケーション」するべき。仕事ではいろんな失敗をして成長するべき。勉強会はいちばん前の席に座って積極的に質問するべき。……確かにそのほうが成長につながるかもしれませんが、HSPにとってはそう言い切れません。

非HSPにとっては仕事後の飲み会がリフレッシュの時間になるかもしれませんが、HSPは「あの人のグラスが空いているな」とか「あの人はひとりでつまらなそうにしているな」とあれこれ気をつかって疲れてしまいます。同時にいろんなことを考えて脳のタスクを使ってしまうのがHSP。いくら高性能のパソコンでも、同時タスクが多いほど動作が重くなり、せっかくの性能を活かせないですよね。それと同じで、飲み会に参加することで翌日かえってパフォーマンスを発揮できなくなる可能性があるのです。

仕事後の飲み会には参加しないけど、普段の仕事で丁寧にコミュニケーションをとって、丁寧な仕事をする。そのほうが生産性が高まるし、結果も出せます。

「同調圧力」という言葉があります。日本人はとくに周囲に合わせる傾向が強いですが、HSPにとっては自分に合わないことが多いので、それが生きづらさにつながってしまいます。ただ、周囲に合わせようとすることは悪いことではないと思うので、「非HSPの人とは合わないことがある」ということを自覚するだけでも、生きづらさが少し解消されるのではないかと思います。

HSPの能力を活かす秘訣

HSPが得意なこと、苦手なこと

自分の能力を活かすには、使い方を学ぶことが大切。なにが得意で、なにが苦手か。どうすれば脳のタスクを減らして本来の力を発揮できるのか。それを考える必要があります。

みんなに当てはまるわけではなく、あくまでも傾向ですが、HSPが得意なことを挙げます。

一方、苦手なこととしては…

まずは自分がどれに当てはまるか、自分にはどんな傾向があるかを把握してみてください。そのうえで、本来やらなくていい苦手なことをしていないか、得意なことが活きる環境にいるか、考えてみてください。

得意なことをがんばる

僕の仕事は手術室看護師。いわゆる、医師の先生にメスを渡す人です。僕はいまの仕事がHSPに向いていると感じています。先生がストレスなく手術を終えられるよう援助するためには、先生の考えを察知する能力や観察力が必要ですが、僕は手術中に先生の考えていることがなんとなくわかります。

初めての手術はすごく緊張して、うまくできないことがたくさんありました。でも、HSPは初めてのことは苦手ですが、「次は怒られたくない」「失敗したくない」という思いが発動するので改善する力は強いんです。同じミスを繰り返すこともしません。僕も経験がすぐに身につき、早々に上達しました。

大切なのは、得意なことをがんばる意識を持つこと。僕は先生の考えを察知して必要な器具などを渡すことが得意なので、積極的にやっています。おかげで、他の人が5~6年目にやるような手術に2年目でつかせてもらい、うまくできたことで、まわりの評価が上がった気がします。自分自身も達成感があるし、先生から「助かるよ」と言われてすごく嬉しい気持ちになります。

苦手なことをなるべくしない

反対に、苦手なことはなるべくしない選択をとっています。

僕の職場では毎日朝礼があり、スタッフ30人くらいの前で患者さんの情報や連絡事項を伝え合う機会があります。いまの職場に来て3年経ちますが、いまだに嫌で嫌でたまりません。

だから僕は、本当に言う必要があることだけを伝えるようにしています。人前で話す時間をできるだけ短くできますし、簡潔なぶん伝わりやすくもなります。人前で話すことに抵抗がない人は、「それいま言う必要ある?」と思うことを延々としゃべっていたりしませんか。話す内容を事前にふるいにかけて簡単にまとめれば、すぐ終わるしわかりやすいはずです。

自分の特徴を知って、得意なことは伸ばせるように自分から働きかける。苦手なことはできるだけ減らす。それを意識することで本来の能力を活かせるようになり、生きづらさを減らせると思っています。

完璧主義を手放す

HSPの人は真面目で責任感が強く、そのため完璧さを求めてしまう傾向にあります。言い換えれば、粗探しをする、できないことに注目してしまう。98点をとっても残り2点に注目して落ち込んでしまいがちです。

僕はいま、筋トレをがんばっていて、毎日プロテインを飲んでいます。プロテインのパッケージに「水または牛乳300mlに本製品スプーン2杯(約30g)を入れて、よく振って溶かして飲んでください」と書いてあったのですが、これを読んでみなさんはどう思うでしょうか。

僕は、「水と牛乳どっちがいいんだろう?」と迷いました。牛乳は甘くておいしいけど、カロリーが高い。水だとなんだか物足りないけど、ヘルシー。僕は筋肉はつけたいけど太りたくないので、我慢して水で飲んでいました。

でも本来は、水と牛乳の二択である必要はないんですよね。半々でもいいし、別の飲みものに混ぜてもいいし、パンケーキに混ぜてもいい。僕は無意識に0か100かで物事を考えていたんです。このことがきっかけで、グラデーションで物事を考える大切さに気づきました。

完璧主義だと、自分を苦しめてしまいがちです。でも、もっと自由な発想で自分に合った道を選んでいいはず。仕事がつらかったら辞めてもいいし、長い休みをとったり、雇用形態を変えたり、選択肢は無限にある。HSPとしての生き方はたくさんあるんです

つらいときは、自分がいろんな選択肢を持っていることを思い出してほしいです。

HSPを知ることが、心を楽にする第一歩

人はわからないものに恐怖を抱きます。暗闇が怖いのは、そこになにがあるかわからないから。人見知りの人が初対面で不安に感じるのは、相手がどんな人かわからないから。危機意識の高い人ほど、最悪の事態を想定して恐怖を覚えます。

HSPは危険予知能力が高いだけに、わからないことに恐怖心を抱く人が多いです。裏を返せば、「知ること」「わかること」は安心感につながる。世界のこと、HSPのこと、自分自身のことをきちんと知れば、不安は和らぎます。

僕が「自分が人より気づきやすい」「そのせいで疲れやすい」と自覚したのは、HSPの本に出会うずっと前のことでした。27歳で看護学校に入り、そこで出会った先生に「あなたは気がつきすぎて大変そうね」と言われたんです。そう言われて妙に納得し、同時にすごくホッとしました。わかってくれる人がいたこと、それ以上に自分が自分のことを理解したこと。それでものすごく安心したことを憶えています。

自分がHSPだと自覚し、HSPについて知るだけでも、安心して心が楽になります。僕がお伝えしたことをぜひ今日から実践して、HSPを楽しんでください。世間一般がどう思うかではなく、自分がどう思うか、どうしたいかを大切に、毎日を楽しく生きてほしいと思います。

(画像提供:iStock.com/skynesher)


はるかさんのイベント動画が視聴できます。
https://note.com/sanctuary_event/n/n7d6a6b4c5b41



はるか
 
HSP歴36年の現役手術室看護師。考えすぎるほど考えてきた経験を役立てたいと2020年よりTwitterを開始。HSPに向け「心を楽にする」をテーマに毎日投稿を続け10万件を超える「いいね」を獲得する。

■ その他告知
Twitter:https://twitter.com/nurse_hal 
Youtube:https://youtube.com/channel/UCcQ3UcniDYRsiNmQlswMyyQ