トークセッション「コミュニティで生きるということ」/Wasei Salon

コミュニティに関わり、生きるとはどういうことなのか。コミュニティ・プラットホーム「OSIRO」を提供している杉山博一氏、Wasei Salonを運営する鳥井弘文氏と長田涼氏の3名による参加型トークセッションの内容をご紹介します。

コミュニティについて語ろう

Wasei Salonについて

長田涼氏(以下、長田):
今日のテーマは「コミュニティで生きるということ」です。今日は全員がそれぞれの形でコミュニティに関わっているので、違った視点で語り合うのは面白いんじゃないか? と話し、開催の運びとなりました。少人数なので、ぜひみなさんにも積極的にトークセッションに参加していただければと思っています。

まずは、Wasei Salonについてご説明します。「これからの働くを考えよう」というテーマのオンラインサロンです。こちらにいる鳥井さんが発起人のサロンで、僕はここでコミュニティマネージャーを務めています。もともとは、鳥井さんが直接声をかけた20人しか入れなかったクローズドなサロンでした。はじまった当時はテーマも特に決まっていなくて、イベントを通して交流したりnoteを使って発信したり、ライブ配信をしたりしてきました。そんな中で「働く」というテーマの会が何度かあり、反響が多かったことから、「働く」について考える空間を作りました。それから新メンバーを募集し、現在は90人ぐらいのオンラインサロンとなっています。

Wasei Salonで大事にしている価値観は5つあります。誠実であること、簡素であること、健康であること、自然であること、尊重すること。ここにWasei Salonらしさが詰まっています。5つの価値観に共感してくれた方は、Wasei Salonを楽しめるのではないかと思います。

次に、杉山さんよりOSIROについてご紹介いただきましょう。

OSIROについて

杉山博一氏(以下、杉山):
まずは、なぜOSIROができたのかを話していきたいと思います。僕はこのサービスを作り始める前に、ニュージーランドと日本を行ったり来たりする暮らしをしていました。特に志もなく、お金を稼ぐことより人間らしく暮らせたらいいと思っていました。しかし、日本から1万キロ離れたところで暮らしながら日本をみて、この先日本はどうなってしまうんだろうと思うようになりました。

日本はもう一度経済大国になろうとしていますが、それは無理だと思います。アジアなどの新興国の人々の勢いはすごいので、その人たちと戦うのは、難しいなと。一方でヨーロッパは芸術文化大国に舵を切っていて、アーティストも生きやすい。そして、これはギャグみたいな話なのですが、僕に「日本を芸術文化大国にしなさい」という啓示がおりてきました。天命をもって日本に帰ってやりなさいと神様に言われたので、断れないのです(笑)。すごく大変なことですが辞めることはできない、というわけで今日まで辞めずに続けています。

どうやったら作家やアーティストが活動を続けていけるのかと考えたときに、毎月のお金に加え、応援団をコミュニティ化していく必要があると思いました。自分も20代の頃アーティスト活動をしていましたが、食べていけなくて30歳の時に辞めています。毎月のお金がないと活動はもちろんできません。そして、応援団不在でも活動を続けられない経験があったからです。

そんなサービスが海外にあるなら、日本に持ってきたらいいかなと思い検索をしたら、アーティストを毎月支援するサービスがありました。ただ、これにはコミュニティがない。一方で、コミュニティを盛り上げるサービスもありました。この2つが一緒になっていたらどれだけいいだろうということで、OSIROを始めました。

長田:
Wasei SalonでもOSIROのサービスを使っているんです。

鳥井 弘文氏(以下、鳥井):
僕はまず、なぜ「コミュニティ」と「芸術文化大国にする」が結びついたのかを杉山さんにお伺いしたいです。

杉山:
OSIROをはじめたときは、コミュニティをやりたいというより日本を芸術文化大国にしたいというのが先行してありました。アーティストが食べていける世界をビジョンとして思い描いています。そのためにどうしたら良いだろうと考えたときに、コミュニティってものすごい力を持っているしポテンシャルがあると気づきました。人を応援したい人たちが集まったパワーって半端ないですよね。今までの時代背景と、これまで自分がやってきたことと、システムでできること全てを融合して考えた結果「コミュニティ・ファースト」という考えに至りました。

鳥井:
コミュニティがあれば、作家なりアーティストが生き残っていけるだろうということでしょうか?

杉山:
そうです。一番最初にコミュニティを作ってそれを優先した方が、全てにおいて良い影響が出る。お金と応援エネルギーを使って、コミュニティで活動を続けるために作家、クリエイターとファンの人たちが共生する場所を作る。そこで価値共創できれば、作家は活動を続けられるし、さらに良いものを作っていける。それらを融合すると、まず必要なものはコミュニティかなという結論になりました。

鳥井:
作家さんやアーティストは、とにかくクオリティで勝負! みたいなところがありますが、結局コンテンツより「ファンになってもらう仕組み」の方がしっかりとできていれば、そこにアーティストが生まれてビジネスになる。実際、古くは能や狂言とか歌舞伎もそうだし、最近だと宝塚歌劇団とかジャニーズ、AKB48とかEXILEもそうですね。この連鎖や支えられる仕組みを作っていきたいということですよね。

杉山:
そうですね。ジャニーズといえば、このことはみなさんがよく知っているかもしれませんが、ジャニーさんはコミュニティ化することに天才的だったんです。

鳥井:
どういう点が天才的だったんですか?

杉山:
コンサートのチケットって適当にファンに配られて適当に配置されているわけではないそうです。応募した人の住所、それが同じ地域やエリアになるように配置してあるそうです。

一同:
へー!

杉山:
なぜかというと、コンサートが終わって帰るときに、同じ格好や応援グッズを持っている人たちと同じ時間帯の電車に乗ると帰り道に話しながら帰ることができる。そうしてコミュニティ化していくことをジャニーさんはやっていたそうです。そういう細かいティップスというのが全てに張り巡らされていたそうです。

鳥井:
確かに、電車で同じ野球のユニフォームを着ている人たちを見かけると楽しそうだなと思って、何なら自分もジョインしたくなりますよね。そのようなコミュニティ化することにジャニーさんは天才的だったということですね。

トークセッション

コミュニティ運営のポイント

参加者A:
コミュニティを続けていくという観点で、コミュニティ運営のポイントについて伺いたいです。私は今年有名なオンラインサロンにいくつか入りましたが、その中でも、長く続いているオンラインサロンもあれば、短期間で終わってしまうところもありました。

鳥井:
コミュニティを運営するポイントというと、中に入った人をいかにコミュニケーションさせるかという様な、メンバーさんが「参加した後」の話が多いのですが、僕は「参加する前」が大切だと思っています。入って来たその人たちの中のハレーションをどうするかというのは、戦争した後どうするかという話と同じなので、そもそもどうすれば戦争しないで済むかみたいなことを考えています。先程紹介があった5つの価値観もそのための1つで、あえて掲げて長い説明文を読んでもらっています。なるべく中にいる人たちが似たような価値観を持つことで不一致を少なくできれば、運営の中で起きる問題も減るだろうと思い、そこは大事にしています。

長田:
Wasei Salonは入り口設定を非常に厳しくしてありますよね。2ちゃんねるみたいに誰でも投稿できる空間を作ってしまうと、そこでどんどん戦争が起こって、運営する側が疲弊してしまう。そうならないように、一度会わないと入会できないなど入り口設定を厳しくするというのが、こだわっているポイントです。

鳥井:
2ちゃんねるや、Twitter、インスタグラムもそうだと思うのですが、不特定多数の人が自由に投稿できて交流できる場所は既にありますよね。それも人と人が交流するのに必要な場だと思うけれど、既にあると考えると、今オンラインに無いものはなにか。その不特定多数とのコミュニケーションで疲弊している人たちが欲しい場とはなにかと考えたうえでWasei Salonをやっています。

杉山:
二人がおっしゃったとおりですね。OSIRO的にもそういう要素は大事にしています。まずは、熱量の高い人を集めること。宇宙のはじまりに起きたビッグバンと同じように、高密度なものが集まって爆発が起きるというのをコミュニティにあてはめています。まず熱量が高い人たちがいないとコミュニケーションが盛り上がらないので、熱量が高い人をどれだけ集められるのかが鍵だと思います。

コミュニティの価値とは

参加者B:
みなさんにとってコミュニティの価値はどこにありますか。わたしは助け合いの場としての価値がコミュニティにあると思っていますがいかがでしょうか?

杉山:
僕は、単にコミュニティが会員化した状態というのはあまり価値が無いと思っています。メンバーとメンバーが集まってそこが活性化した状態、つまり、コミュニティが一歩先にいって、価値共創の場になったときに初めて価値が生まれると思っています。価値観を共有している元々のメンバーが、新しい人に何かを届けるときに力を注げるチームを作る。作家やアーティストの作品を届けるという意味でも、その活性化した状態が必要だと思っています。

鳥井:
今、マスメディアでは雑誌や本などを沢山刷って売れないと全部捨てています。しかし、500人のコミュニティがあるとしたら、その500人の分だけ作って配ることができます。コンテンツをフィットさせることができる。ここには無駄を無くすという意味での価値もあります。コミュニティECも、今後力を入れていくカテゴリになっていくと思います。

杉山:
価値って難しい言葉ですよね。僕もコミュニティはあくまでも手段と捉えていて、目的でやっているわけではないというところはあります。

長田:
僕は、大きく言うと人の幸福にひもづくものだと思っています。ハーバード大学による幸福論の研究でも、人の幸せは良いコミュニティ、人間関係があることで得られるとされています。自分がここにいてもいいんだという居場所を感じられる空間が、人生の豊かさになっていく。僕もWasei Salonに関わるようになって、すごくそれを感じているし、価値をお返しして貢献していきたいですね。

杉山:
アメリカの哲学の文脈も、コミュニティに落ち着いてきています。今までは個人主義でしたが、個人が活躍できる場所としてコミュニティが見直されてきています。一人ではできないことが、メンバーと一体になるとできる。そういったことが、個人主義からコミュニティ主義に向かう小さな一歩だと思います。

長田:
コミュニティ主義、いい言葉ですね。フリーランスは一人で続けるのがキツいことがあります。コミュニティがあると、信頼できる仲間たちがいることで安心できるという利点があると思います。価値観の近い仲間と価値を作っていくという仕事のあり方が、これからはどんどん増えていくのではないでしょうか。

コミュニティで生きるということ

参加者C:
みなさんにとって、コミュニティで生きるということはどういうことでしょうか。

鳥井:
難しい問いですよね。

杉山:
僕は一回も就職したことがないので、組織やコミュニティで生きることができないと思っていました。毎日同じ場所に行くことができないと思っていたから、一度も就職をしていないのです。けれど、作家とかフリーランスというのはすごく孤独です。それも僕は味わっていて、よく分かります。

コミュニティで生きるということは、人間のDNAに刻まれているらしいです。人間は孤独では生きられない。孤独は一日に15本ぐらいタバコを吸うのと同じくらいの害があると言われているそうです。狩猟民族たちも一人では獲物を捕れないから、仲間と一緒にいないと生きていけないという危機感を感じるようにDNAに刻まれている。それを理解すれば、コミュニティで生きることは「自分ができないことを助け合って生きていく」と考えるとよいのではないかなと思います。

鳥井:
コミュニティを作る人って、コミュニティの中での振る舞いが上手な人と認識されがちです。けれど、僕は起業家に似ていると思っています。起業するぐらいだから会社人間と思われるけれど、起業家ほどそれ以外の会社で働けない人はいないんですよね。他の会社で働けないから、もう自分で作るしかない。自分もそうだから分かるのですが、僕も他のコミュニティに入っていくのはすごく苦手で、だけど生きていくのに欠かせないものという感覚のもとで作っているところがあります。コミュニティに生きるって、そうせざるを得ないという感覚に近いというか、そうやってやっと生きられるということなのかなと思います。

長田:
人間の根本的なことですね。もともと僕は人に心を開きにくくて、他のコミュニティ内に自分の居場所を作りにくい人間なんですが、何故かWasei Salonには心を開けたんです。メンバーのことを素直に信じたいと思えたのは自分にとってすごい価値。だから、コミュニティと共に生きることは素晴らしいと思っています。

自分がコミュニティに目を向けて、そこに足を踏み入れる、それだけで僕の人生は豊かになっている。僕みたいな人が救われるコミュニティが1つでもあればいいし、そういう人がいいコミュニティに属して幸せになることができれば嬉しいなと思って仕事をしています。

(画像提供:iStock.com/pixelfit)

杉山博一
オシロ株式会社 代表取締役社長
1973年赤坂生まれ。1998年世界一周後、アーティストとデザイナーとして活動開始。30才を機にアーティスト活動に終止符を打つ。2006年日本初の金融サービスを共同で創業。その後、ニュージーランドと東京の二拠点居住を開始。外資系IT企業の代表に就任。「日本を芸術文化大国にする」というミッションを持ち、実現するべくサービス「OSIRO」を開発。2017年オシロ株式会社設立。作家やアーティストから、コンテンツ・メディア・ブランド企業まで、独自のコミュニティプラットフォームを提供している。


鳥井 弘文
株式会社Wasei 代表取締役社長
北海道・函館市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。大学卒業後、中国・北京へ渡り日系ITベンチャー企業に勤務し、中国版Twitterと呼ばれる微博(ウェイボー)を中心とした日本企業の中国国内PRに携わる。帰国後は、新しい時代の生き方やライフスタイルを提案するブログ「隠居系男子」を運営開始。半年で月間25万PVを達成し、現在はBLOGOSとhttp://Fashionsnap.comにも転載中。2014年9月に起業し株式会社Waseiを設立。主要事業として2015年1月1日、これからの暮らしを考えるウェブメディア「灯台もと暮らし」を運営開始。「SUSONO」や「Wasei Salon」といったオンラインコミュニティの運営や、企業やメーカーのオウンドメディア運営も手がけている。


長田 涼
コミュニティフリーランス
スポーツ大学を卒業後、ユニクロ→スポーツイベント会社→IT企業を経て、2018年にコミュニティフリーランスとして独立。これからの働くを考えるオンラインサロン「Wasei Salon」、卓球複合型施設「T4 TOKYO」、コミュニティ型まちづくり「渋谷をつなげる30人」のコミュニティマネージャーを務める。また、コミュニティポイント「mint」、NPO法人グリーンズ のコミュニティ事業にも関わっている。その他、コミュニティメディアの運営、コミュニティコンサル、コミュニティイベントなど、コミュニティを生業として活動中。また、フレスコボール日本代表選手としても活動している。

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