新刊のコラム

「相手に狂気を感じさせたら勝ち」GACKTを口説いた北里洋平に聞く”我がまま”を100%通すコミュニケーション術

中学生ながら海外のプロ選手とサッカーをするためにスタジアムの控室に押し入ったり、プロボクサーに手紙を出して対戦したり、一般人なのに出版社に直談判して自伝を出版したり…

幼いころから今に至るまで”我がまま”を貫き通してきたという北里洋平さん。

でも、我がままを貫くには、周囲からの協力が不可欠ですよね。つまり、北里さんってめちゃくちゃ”人を動かす”コミュニケーションが上手なのでは…!?

というわけで今回は、北里さんの”我がまま”を貫くコミュニケーションの秘密を探ってみました。

【北里洋平(きたざと・ようへい)】1980年埼玉生まれ、南米チリ育ち。株式会社NORTH VILLAGE代表取締役社長。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、株式会社日立製作所に入社。会社員時代、仲間とラウンジをオープンし、そこを拠点に処女作『若きサムライ、その声を聞け』を出版。その後、自伝中心の出版社・NORTH VILLAGEを設立。現在は世界中に26店舗の飲食店を経営するほか、リサイクル事業、不動産事業、オンラインサロンなど活躍の場を拡大中。GACKT最新刊『GACKT超思考術』、20万部のベストセラーを記録した『GACKTの勝ち方』のほか、窪塚洋介、家入一真の著書の出版も手がける

 

スパァ…

 

ー(初っ端から近寄りづらいオーラが…)本日はよろしくお願いいたします。その口に咥えているものは…?

北里さん:
これはシーシャ(水タバコ)です。イスラム圏発祥の喫煙具で、ミントやフルーツなど、さまざまな味のフレーバー(シロップなど)につけた煙草の葉を加熱し、その煙を水に通したものを吸うものです。シーシャって吸っているあいだ、何もお互い喋らなくても時間として成立するのが良くて。インタビュー中にやるとおわりますけどね。ははは(笑)。

ー(…ちゃんと喋ってください…)

気になる方は北里さん率いるシーシャカフェ「ノースヴィレッジ(NORTH VILLAGE)」へ!

 

「我がままを貫くスキル」さえあれば何にでもなれる

ー改めて、北里さんはこれまでの人生で、「我がままを貫く」をテーマにしてきたそうですが、そもそもなぜ”我がまま”に生きようと思ったんですか?

北里さん:
小学生のときの学芸会がきっかけですね。当時『裸の王様』の配役を決めるとき、主人公がやりたかったんですけど、自分で立候補するのは恥ずかしかったんですよ。

でも、これは社会に出るときにまったく同じことが起こるんじゃないかと。いずれみんな職に就くけど、それはどう決まるんだろうと考えたときに、「なりたいものは自分で決めればいい。言ったもん勝ちなんじゃないか」と思ったんです。

北里さん:
だから、ここでやりたい役をやらないと、今後の人生でも諦めなきゃいけない可能性が出てくる。そう思い、「主人公以外はやりません!」と言って主人公を勝ち取りました。

どうせ同じような教育を経て社会に出るまではどんぐりの背比べだし、自分でなりたいものを決めてしまい、飛び込んでいけば、必要なスキルや知識は勝手に身についていくじゃないですか。

…となれば、まずは「我がままを貫くスキル」さえ身につければ、いろんなものがクリアできると思ったんです。

自分の物語を描くイメージで生きると”我がまま”になれる

ー小学校でそれに気づくって…! ただ、世の中にはいろんな人がいると思うんですけど、たとえば、引っ込み思案な人が自分の”我がまま”に気づくにはどうしたら良いんですかね?

北里さん:
自分の人生のなかでは、自分って「自分の人生という物語の主人公」じゃないですか。そこで何かを諦めたり誰かに譲ったりすると「自分のストーリーのなかでこんなことが起こればいいな」ってエピソードがなくなっちゃいますよね。それでいいんですか!?

編集者目線で自分の物語を考えてみると、主人公が諦めそうなときに、「そこは行けよ!」ってプッシュするじゃないですか。その視点は必要なんじゃないかな。

ーその考え方はすごく面白いです。自分の人生を俯瞰して見て、必要なエピソードを集めながら生きるという。

北里さん:
その瞬間の欲求が明確に出れば良いけど、一番怖いのは、無意識のうちに夢をスルーしてしまうことですよ。

僕はちっちゃいときに戦うヒーローに憧れていたんですけど、24歳のときに初めてボクシングの試合を観にいったとき、リングで同世代の人たちが命がけで戦ってそれを仕事にしているのを見てショックを受けたんです。

気がつけば自分は、戦うという選択肢を選ばず、そのためにボクシングジムに通うこともない、そんな物語を生きてきてしまったなって。

北里さん:
夢を全部叶えろって言われるとしんどいかもしれないけど、少なくともオトシマエをつける必要があると思うんですよ。挑んだうえで破れたのであれば成立するけども、挑みませんでした、って何も物語進んでねぇ! みたいな。

もういてもたってもいられなくなって、当時ボクシングの世界戦8度防衛(その後記録を9に伸ばす)の世界チャンピオンである徳山昌守さんに「僕と戦ってください!」って手紙を書いて、後日対戦が実現するもボッコボコにされて…。でもそれで自分の夢にオトシマエをつけましたね。

挑みもせずにスルーして、気がついたら何年も経ってるほうが怖いですよ。

我がままを通すコツ①「こいつ、腹を切るぞ!」レベルで相手に狂気を感じさせる

ー”我がまま”を貫くためには、まわりの協力が不可欠だと思うんですけど、何か工夫していることはありますか?

北里さん:
そもそも自分が諦めることを諦めてしまっていたら、諦めるという手札をもっている相手は折れるしかない。「諦めるのを諦める」って卑怯な魔法として使えるんですよ。

北里さん:
僕は25歳のときに初めて本を出したんですけど、当時とある大手出版社の社長さんにアポを取って、5分間だけ時間をもらったんです。でも、それは断るための5分間で、「このご時世、無名の新人の本なんて売れるわけがない」といった内容でクロージングされたんですよ。

ただ、僕は諦めることを諦めちゃってるわけじゃないですか!

なので、そこから熱く語り始め、結果3時間居座りました。決定権は向こうにあるから、僕は不利な立場です。でも、こっちが一歩も引く気がないのが伝わると、対等の位置に立てるんですよ。

要は「本を出せないぐらいだったら、僕は生きる意味もないし腹をこの場で切ります」ぐらいの覚悟が相手に見えた瞬間、「うちの応接間を血まみれにされると困る!」となって、腹を切られたくない社長さんVS本を出すまで死んでも引く気がない人間になる。

すると、じゃあどうすれば実現できるかを一緒に考えましょう、となるんですよね。

ーちなみにその3時間、北里さんは何を熱弁したんですか?

北里さん:
「なんで僕は本を出さなきゃいけないか」を3時間語りました。

世の中には本を出したいと思って出せる側の人間と、出したいと思っても出せない人間がいる。おそらく、出せる側の人間は、それ以外のこともできるけど、出せない側の人間は、それ以外の夢もいろいろ諦めるんだろうなと。

そして、自分は絶対出せる側にいたいんです! なぜならこんな夢が! と語りつづけ、最終的にその社長さんから「君の眼は私が出会ったときの尾崎豊と同じだ。狂気を感じる」と言われました(笑)。

「やらない」という選択肢をなくすと目に狂気が出て、人はそれに巻き込まれるんだと思います。

我がままを通すコツ②「ほっといてもコイツ、勝手にやる!」と思わせる

ーとはいえ、「やりたいんです!」だけでは通らないこともあるんじゃないですかね…世の中そんなに甘くないというか…

北里さん:
たしかに、我がままの貫き方が進化した瞬間はありますね。

僕は中学生のとき、南米に住んでいたんですけど、「チロエ島」といういろんな伝説のある島があって、そこに友だちと2人で2ヶ月ぐらい旅をしたいと思ったんですね。

ただ、うちの親がクソ厳しかったんですよ。

時、我がままを貫くって、「駄々をこねる」だったんですよね。駄々をこねりゃ、最後は叶えてもらえる。でも旅となると、親からしたら子どもの命が大事だから絶対ダメ!ってなるわけで…。だからまずは、勝負をかけやすい環境を整えようと思ったんです。

両方の親を誘ってキャンプをして、星空の下、焚き火をしながら、めっちゃいい空気感のときに自分たち息子2人が夢を語る…みたいなことをしたらワンチャンいけるんじゃないかと。

それで、資料を作ってプレゼンしたんですけど、けちょんけちょんにされました。

ー雰囲気だけでは押し通せなかったと…。

北里さん:
でも、気付いたんです。駄々をこねつづけて親が許可してくれれば、叶うって勘違いしていたけど、最悪親がOKしなくても行く覚悟をしなきゃダメだ、とお金を稼ぎはじめました。

当時中学生向けのアルバイトがなかったので、自分が通っていたインターナショナルスクールで教わった覚えたての英語を「産地直送」と銘打って(笑)、日本人学校の小学生に教える英会話スクールをオープンして、それがヒットしてお金がどんどん貯まっていったんです。

そうなると、親たちの会議が始まりました。「コイツらお金も自分で稼いじゃったから、ほっとくと勝手に旅に出ちゃう!」って。だったら許可を出したうえで、危険なことをしないと約束させたうえで出そう、と最終的にはOKをもらって、旅に出ることができたんです。

駄々をこねつづけるだけじゃダメ。「ほっといてもやる」と思わせるのがポイントなんだと、このときに学びましたね。

我がままを通すコツ③著者を口説くために”オールイン”で行く

ー北里さんは、GACKTさんや窪塚洋介さんをはじめ、さまざまな大物著者を口説き落としてきていますが、コミュニケーションで大切にしていることはありますか?

北里さん:
出版社は著者とどういう関係を築けるかなんで、この人を口説きたいな、と思う人にはめっぽう強いですよ。なぜなら、他の編集者さんたちが口説くのとは次元が違うぐらい、”オールイン”でいくから。

出会いの演出もするし、普通の出版社だったら企画書を出すとか、一生懸命説得するところを、うちらの場合はもう、本を作っちゃうんすよ。

はい?

 

北里さん:
YouTubeやインタビューを片っ端から書き起こして、本人ならこう言うんじゃないか、という内容の本を1冊作って渡すんですよ。

企画書だったら、はじかれちゃうかもしれない。でも、存在するはずのない、デザインも製本もされた自分の本が目の前にあったら絶対に手に取るじゃないですか。このパターンで断られたことは1回もないですね。絶対に口説く。

そもそもうちのは日本最小の出版社なので、大物著者の方たちにとって、うちで本を出す理由がない。じゃあなんでうちから出すのかといえば、その人の本を出したい、という情熱でしかないし、それは圧倒的なものじゃないといけないんです。

ー気合がすごすぎますね…。先ほど「出会いの演出をする」って仰っていましたが、そこも詳しく聞きたいです。

北里さん:
出会いはロマンチックであったほうがいいと思うんですよ。出版社にとって「本を出しませんか」って告白なので、断られたとしてもその日のことを一生覚えていてほしいじゃないですか。

出版社を立ち上げて一発目に本を出したかった著者が、詩人の三代目魚武濱田成夫さんだったんですけど、ライブ会場に行って本を持ちながら、「何とか目が合わないかな…」とやっていたら捌けちゃったんで、そのまま会場に残って関係者の人に頼み込んで手紙を渡したんです。

結果、会ってもらえるようになったとき、いい感じのレストランの個室に薔薇をバーッと飾って、うちのおばあちゃんに「三代目魚武濱田成夫VS北里洋介〜出版に向けて交渉対決〜」と書いてもらった掛け軸を後ろに掛けました。

ーYouTubeの企画じゃないですか。

北里さん:
「なんやこれ」って言われましたが(笑)。自分なりの全力を尽くすっていうね。

高橋歩さんのときは、当時サイン会があったので、仲間を30人集めてみんなで本を買って並びました。

一人目の僕が「一度お時間もらえないでしょうか!」と言ってもスルーされるんですけど、その後30人も仲間が並んでいて、「北里洋平はいいやつなんで飲んでやってくださいよ!」というのがずっと続くわけです。

しかも、普通は本にサインするのに、うちらは思い思いのインパクトのあるものを持ってきてた。レンガとかサッカーボールとか石とか。すると、どこまで俺の仲間が続くのかがわかるじゃないですか。

そしたら7人目ぐらいで歩さんに呼ばれました。「わかった、時間作るから…」と。それが出会いです。ロマンチックかはわからないけど(笑)。

我がままを通すコツ④成功する保証がないことをやる

ー北里さんは「そこまでやる?」って思われることを、5個やって、「そんなところまでやる!?」って思われることを5個やる、っていうのを大事にしていると聞いたことがありますが、これはどういうことなんですか?

北里さん:
現場仕事で圧倒的な結果を出してしまえば、当然注目されるし、発言権を得ることができますよね。じゃあどうするかというと、まわりがやっていないことをルーティンのなかに入れてしまえば良いんです。

たとえば飲食店なら、お客様が帰るときに外まで出て、相手が消えるまでずっとお辞儀をしつづけるとか、オススメのお菓子を仕込んでおいて渡すとか。

僕は新卒で日立製作所に入ったときの新人研修で、パソコン売り場に数ヶ月配置されて、結果パソコンを日本で1番売っている売り子になったんですけど、そのときもまわりを見渡して、他の人がやってないことを見つけてやるようにするだけで、バーッと売上が伸びていきました。

ーみんなマニュアル以外のことってあんまりやらないですよね。

北里さん:
多分、「これをやったら絶対に報われますよ」って保証されないとやらないんじゃないですかね。

有名な話ですが、幻冬舎の見城社長は著者を口説くときに、その人の本を全部読んで、かつ他の人、著者本人さえ気づかないようなことに触れた手紙を心を込めて書くんですよ。はじめは返事がないけど、何通目から返事が来るようになって、会えたときにはそれまでの積み重ねがあるから出版までスムーズにいくんです。

北里さん:
ただ、「何通出せば日本を代表する作家さんの本が出せる」とわかっていれば、みんなやるんだろうけど、何も保証されてないから誰もやらない。ちゃんと動く人からしたらすごいイージーゲームだと個人的には思いますね。

ー本人からOKされるかもわからないのにやる、ってリスクのある行為のように思えますもん。

北里さん:
実はそれは労力であって、リスクじゃないんですよ。本を作りたいと思えば作ればいいわけで、それを見せてOKをもらったら出すほうが逆に早い気がする。

普通の人が「手紙を書いてみようかな」って思いつつ、書かないでもにょもにょしてるあいだに、うちらは仮本作っちゃいますから。ラクじゃないけどリスクじゃない。そもそも、やりたいことだからラクである必要はないしね。

やりたいことが見つからない人へ

ー最後に、「やりたいことがない」「自分の”我がまま”がわからない」人に向けてアドバイスをいただきたいのですが…

え? 絶対あるよね。たとえば「女の子のパンティーを100枚集めたい」ってまわりから引かれるようなことでも、その人にとっては立派な夢ですよ。ないって言ってるだけであるだろ、このスケベが〜!

聞こえますか全国のスケベな皆さん

 

北里さん:
夢って必ずしも立派である必要はないし、差別されるものでもない。みんなに賛同されるようなものである必要がそもそもなくね、って。

高橋歩さん流に言えば、「ドラゴンボールが7つ集まったらどうしますか」っていう。今日カレー食べたいでもいいし、ちょっと起きてるだけで睡眠欲湧いてくるから、とことん寝てやる! でもいいんです。

どんなものでもいいから、その欲求を追求してしまえば、だんだん描き方が変わってくるんだよね。

独立して出版社を作るまでは、「本を出したい」とか一言で言えるようなものだったんだけど、自分はどんな状況を確実に取りに行きたいのかなと思ったときに、俺が描いたのは、一枚の絵だったんだよね。

その絵のなかにいる自分は、自分の店のいい感じのソファに座って、本棚の自分の憧れの人たちのラインナップのなかに自分の本があって、それを見ながらニヤニヤしていて、そのときには遊びを仕事にできていて、行ったことのない国に行って、戻ってきたら仲間と飲んで…っていうのが仕事にもなってたら最高だなって…

ーえ…それって…今の北里さんじゃないですか。

北里さん:
そう! 何年かして、気がついたら、「あ、今この瞬間の俺描いてた!」って。

夢をビジュアルで思い描いて、そこに一つひとつ自分の設定を入れ込んでた。イメージが強ければ強いほど、明確であれば明確であるほど、やっぱり人間はそこに寄せられていくから、そこに向けて動いていくというか。

最終形はずっと叶わないのかもしれない。なぜならずっとそこに要素を付け足していくから(笑)。それはそれでいいような気もしますけどね。

なんとも説得性のあるエピソードと力強い言葉に励まされ、めちゃくちゃパワーのもらえる取材となりました…。

北里さんの自伝『ワルあがき』では、諦めることを諦めた主人公・北里洋平の”我がまま”に生きた半生が描かれています。

見た目は分厚いのですが、ストーリーにグイグイ引き込まれ、気づけば2時間で読み終わってしまったので、モヤモヤを抱える自分を鼓舞してもらいたい方はぜひ。

皆さまが諦めることを諦めて、”我がまま”への一歩が踏み出せますように!

取材・撮影=ゆぴ(@milkprincess17



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