イベントレポート

誤解されがちな医療大麻のリアルと、大麻ビジネスの可能性/Kiki @legalizejapan

サンフランシスコで大麻ビジネス起業家として活躍する日本人女性、Kikiさん。大麻オイルを使った治療でがんを克服した経験も持ちます。指定難病をわずらう医療大麻患者、成田賢壱さんをゲストに迎え、医療大麻や大麻ビジネスについて生対談!

大麻合法の地、サンフランシスコでの大麻ビジネス

嗜好大麻の合法化による変化

成田
このイベントを開くにあたって、厚生労働省の監視指導・麻薬対策課と、厚生局の麻薬取締部の方に電話で確認をとったのですが、煽りやそそのかしではなく海外の実情をお話しするぶんには大丈夫とのことでした。ですから皆さん、安心して聞いてくださいね。
Kikiさんは僕がアメリカにいた頃からの知り合いで、エディブル、つまり大麻入り食品を製造・販売するビジネスをしています。

Kiki
カリフォルニア州では1996年に医療大麻が合法になり、私が大麻ビジネスを始めたのは2009年。最初はアメリカの定番お菓子であるチョコレートとブラウニーを作りました。大麻の成分は油に溶けやすいので、作りやすかったという理由もあります。
当時は、シュガーリーフ(バッズ[花穂]についている小さな葉)を1ポンド(=約454g)100ドルくらいで安く買って、実験を繰り返しながらサンプルをたくさん作ってディスペンサリー(大麻販売店)に配っていました。

2018年にカリフォルニア州で嗜好大麻が合法化されてからは価格が高騰し、現在は1gで18ドルくらい。その上に更に州と市を合わせて35%にもなります。今まで買っていた人や、病気の治療などで本当に必要な人が買いにくい状況です。

成田
以前から大麻ビジネスをやっていた人の多くは、嗜好大麻の合法化には賛成していなかったんだよね。企業が参入しやすくなったぶん、レギュレーション(規制)も増えた。

Kiki
そのレギュレーションがとても大変。今までビジネスをしていた栽培者や製造者が続けられなくなり、94%の会社が潰れてしまいました。

たとえば、製品にTHC(テトラヒドロカンナビノール/大麻に含まれる、精神作用のある成分)がどれくらい入っているかなどの表示義務が生じ、カリフォルニア州ではカビや農薬が少しでも入っているとすべて処分しなければならないという法律もできました。要は、使う人の安全を守るために、薬と同じような扱いになったんです。
成分を調べるためのラボテストは、合法化前は1回80ドルでしたが、今は1回800ドルです。

成田
800ドルというと、現在のレートで8万6896円ですね。海外相手にビジネスをするなら、為替レートはアプリなどで把握しておいたほうがいいです。

ちなみに、もともと大麻に含まれているのはTHCA(テトラヒドロカンナビノール酸)という成分で、それを加熱するとTHCに変わります。THCAのままだとハイになる作用はほとんどなく、むしろ薬理作用があるとされているので、生の大麻をジュースにして飲むことを推奨する医師も昔からいます。

Kiki
あと、州をまたいで大麻を売買してはいけないという規制があるのですが、ブラックマーケットでは横行していますね。とくにカリフォルニアの大麻は質がかなりいいとされていて、現地で買えば1ポンド1600ドルのものでも、ニューヨークでは3600ドルに跳ね上がることもあるので、危険を冒してでも買いつけにくる人がいるのが現状です。

成田
そもそも1996年の医療大麻合法化は、医療大麻の父と呼ばれるデニス・ペロンという人が中心となって進めた運動がきっかけ。彼はパートナーをエイズでなくし、その治療に使った大麻を合法化するため、サンフランシスコの中心地に住んでたびたび逮捕されながらも合法化を訴え続けました。2018年に亡くなりましたが、サンフランシスコの名誉市民のような扱いで、表彰もされている人物です。

僕がアメリカを出るときに彼はこう言いました。「取り残される人が誰もいなくなるまで、活動は終わらない」。彼と最後に交わしたその言葉を僕は一生忘れません。

 

新聞社のベストエディブル賞を受賞

Kiki
最近のエディブル市場では、洗練されたパッケージでブランディングを図ることが主流になってきています。種類としてはグミが多いですね。作りやすく、成分の量が測りやすいからです。
※「エディブル」とは「食べられる」という意味。例)エディブルフラワー=食用花

私が作ったエディブルを紹介しますね。まず「BAGEL CHIPS」は、ベーグルにキーフ(大麻を砕いた際に出る粉)などをかけて固く焼いたもの。1パック約20ドルで、1か月に2000袋くらい売れました。

「KUSH NUTS」は、大麻の香りや味がわかりにくいようにガーリックパウダーやローズマリーと一緒にナッツを焼いたものです。あるディスペンサリー(大麻の販売薬局)にチョコレートを売りに行ったとき、「がんや糖尿病をわずらっている人のために、甘くなくて体にいいエディブルを作ってほしい」と言われ、私がナッツ好きだったことから思いついた商品です。
これは2018年に、サンフランシスコ・クロニクル紙の大麻特集でベストエディブル賞をいただきました。

今回、日本で厳しく取り締まられているTHCは抜いて、CBD(カンナビジオール/大麻に含まれる、健康や美容への効果が期待されている成分)を100mg入れて作った「KUSH NUTS」を持ってこようと思ったのですが、ラボテストに出したらほんの少しだけTHCAが検出されて、お持ちできませんでした。

成田
CBDには精神作用がなく、THCが多く含まれる「花穂」「葉」ではなく「茎」「種の表皮」から抽出したものであれば、日本でも健康食品やオイルとして流通が認められています。
でも、ラボテストも100%正確ではありません。たとえば、アメリカのラボでOKが出た製品を日本に輸入しようとしたら税関に引っかかって、日本の検査機関で調べたところ違法成分が検出されてしまう…という可能性も。「茎からとったCBD」と言われて仕入れたものが実は違った、なんてこともあり得ます。最近、アメリカのCBDオイルブランドが日本で問題になったニュースもありました。

僕は大麻ビジネスをしたいわけではなく、法律を変えたいという思いで活動しています。その立場からいえば、まずは法律を変えてから安心してビジネスをしたほうがいいのではという思いもあるのですが、もし大麻ビジネスを始めるなら、信頼できる相手を見極めて取引するようにしましょう。

 

大麻でどんなビジネスができる?

大麻ビジネスが成功するまでの道のり

Kiki
なぜこの業界に参入したのかとよく聞かれます。いちばんの理由は大麻が好きだったから、そして食べものを作ることが好きだったから。
2009年にビジネスを始めた当初は、友達から大麻をもらってエディブルを作っていました。でもそれがなくなったとき、当時はクオリティの高い大麻がまだあまり出まわっていなかったので、「自分で作るしかない!」と思い立ちました。ちょうどその頃に出会ったパートナーが栽培を手がけていたため、翌年からサンタクルーズで栽培をスタートしました。

最初はフラワーだけを売っていて、1ポンド3000ドルくらいで売れていました。一方、栽培をすればするほどパーフェクトなものを育てるのが難しいことを痛感。種を発芽させて育てるには時間もかかるし、雄株が育ってしまうこともあります(雄株に含まれるTHCは極めて少ない)。

そこで着目したのが、雌株の苗を育てて販売するクローンビジネス。1トレイに50本、それを300ドルで販売していました。

成田
手間をかけて育てても、雄株だと引っこ抜いて捨てなきゃいけないんだよね。だからクローンビジネスはけっこう需要があります。

Kiki
並行してエディブルの製造・販売もしていて、現在はCBDを使ったフェイスセラム(顔用美容液)やマッサージオイルなどのスキンケアブランドも立ち上げています。

 

日本から始められる大麻ビジネス

Kiki
大麻に直接タッチしなくても参加できるビジネスはたくさんあります。たとえば、マリファナを巻くときに便利なトレイを作る陶芸家がいたり、アメリカのラボで使われている分析計測機器は日本の島津製作所のものだったりします。

私が手がけているようなCBDを使ったプロダクトもいいと思います。海外では大麻でリラックスしながらヨガをするガンジャ・ヨガというものがありますが、CBDヨガであれば日本でも可能ですね。

大麻についての正しい情報発信も大切です。ただ、大麻合法国から日本へ情報発信していた人が、警察に煽りと捉えられて帰国後に逮捕された例があります。私はサンフランシスコの市民権があるからまだいいですが、そうでない人の違法国での情報発信は慎重になる必要があるでしょう。

成田
厳密なラインはなくケースバイケースのようですが、違法行為をモチベートするような言動はNGです。

現在、アメリカでは州ごとに合法・違法が定められていますが、アメリカ全体の連邦法で合法化する動きが出てきています。日本の参議院・衆議院のように上院・下院があるうち、下院は通過しました。アメリカの合法化にともない日本がどう変わるかはわかりませんが、未来のビジネスチャンスに向けて先にコネクションを作っておくのはありかもしれません。

 

アメリカに住む大麻愛好家のインタビュー

医療大麻・嗜好大麻のリアル

Kiki
アメリカで普段から大麻を使っている人の生の声を届けたくて、インタビューを撮ってきました。ご覧ください。

<大麻で大腸がんを克服した60代女性>
私は8年前にステージ3の大腸がんと診断され、リンパにも少し転移していました。抗がん剤治療をしなければならなかったのですが、吐き気や食欲不振がいやで、そのときに息子にすすめられたのが大麻でした。

当時はKikiさんのナッツを食べたり、抗がん剤治療の最中はRSO(リック・シンプソン・オイル)を米粒くらいの量だけオブラートに包んで飲んだりしていました。おかげで、体重は多少減りましたが吐くことはなかったです。抗がん剤治療は隔週で、月曜から水曜まで治療をしたら木曜・金曜はなにもできないのですが、その翌週には1週間びっしり仕事ができるくらい体調は良好。その後、がんは完治しました。

実は同じ頃、日本の友達も大腸がんになり、メールでよく励まし合っていました。彼女は当時28歳。大麻治療のために渡米する計画もありましたが、そのときすでに骨に転移してしまっていて断念せざるを得ませんでした。手術の方法も抗がん剤の種類も私と同じだったにもかかわらず、彼女は亡くなってしまいました。

現在はレクリエーションとして大麻を使っています。寝る前に3〜4服吸って、ときどきエディブルも食べます。昔から眠りが浅く、更年期でさらに不眠に悩まされていましたが、吸うとよく眠れます。消化がよくなったり、風邪も引きにくくなったり、昔より健康になった気がしています。

<大麻を50年愛用している70代鍼灸師>
バークレーでクリニックを経営しています。鍼灸師歴は35年。漢方調合師でもあり、独自の漢方商品をアメリカ国内で販売。ネットで出店もしています。

私はあと数か月で77歳になりますが、大麻を毎日使用して50年になります。嗜好品として使っていて、リラックスしたり、多幸感を感じたり、ストレスを軽減させたりするのに役立っています。

私が使うのはバッズ(花穂)。ベイプ(加熱して吸引)すると味がまろやかになり、お財布にも少し優しくなるので、数年前からヴェポライザー(加熱式の喫煙器具)を使っています。加熱機能のある部分に砕いたバッズを入れてフタを閉じ、ボタンを押して吸うだけ。妻も使っています。

大麻で生き残る企業、生き残れない企業

Kiki
ベイプはフラワーならいいですが、オイルやワックスが入ったカートリッジタイプやオイルを直接注入して使うのは体によくないとされています。ビタミンEオイルの吸引が原因のようで、肺疾患で入院する人や死亡する人が続出してしまいました。

成田
オイルに溶かしたものを吸引するのは一時期流行っていましたよね。僕がアメリカに行った2010年頃は、薬局で売られているプロパノール(アルコールの一種)で抽出するのがメジャーでしたが、その後ブタン(LPガスの主成分のひとつ)での抽出がメジャーになり、ワックスやシャッターなどの濃縮物が生まれました。
でも健康被害が問題になってからは、やっぱり減りましたか?

Kiki
ブラックマーケットではまだたくさんあるみたいですが、かなり減りましたね。この事件以降、カートリッジに頼っていた会社はどんどん潰れていきました。

大麻ビジネスに参入する企業は数多くありますが、生き残れない企業もたくさんあります。私が感じている「生き残れない企業」の共通点は、お金儲けだけが目的であることや、女性を性商品として扱うような広告を打つなど、お金の使い道が間違っていること。
大麻を本当に愛している人が、大麻の魅力を正しく伝えられるようなプロダクトやサービスでビジネスを展開していってほしいなと思っています。

(画像提供:iStock.com/LPETTET)
・Kiki

2009年Wish Edibles創立 大麻入りのチョコレートやナッツを製作してディスペンサリーで販売、2010年より良い原料を求めて大麻の栽培を始める。
2013年大麻の苗(クローン)が求められている市場を察知。苗を大量に育成し販売するクローンビジネスを始める。
2018年エディブル商品の「クッシュナッツ」がサンフランシスコ・クロニクル紙の大麻特集でベストエディブル賞を受賞。
2019年CBDブランドEuphoraを立ち上げる。
Twitter: https://twitter.com/legalizejapan
ブログ:https://legalizejapan.com


・成田賢壱

2019年の統一地方選挙では新宿区議選にも出馬した、日本で最も知名度のある医療大麻患者。
元祖VapeであるボルケーノのStorz&Bickel社からもサポートされたUstreamでの配信の再生回数は100万回を超える。
アートディレクター・俳優としても活躍する傍ら「一般社団法人医療大麻dotオルグ」の代表理事も務める。
Twitter:https://twitter.com/kenichinalita