自信がない。ネガティブな感情ばかり湧いてくる――。それはあなたの自己肯定感が一時的に低くなっているだけなんです。この講座では、元々誰もがもっているはずの「自己肯定力」を取り戻す方法について、人気カウンセラーがお伝えしていきます。
目次
自己肯定感は「取り戻す」もの
自分を肯定できると素直になれる
自分を肯定するというのは、自分のいいところだけ見て「自分ってスゴイ」ということではありません。いいところだけではなく、自分の悪いところもしっかり見て、それについて「しょうがない」と認めてあげることです。
それは、あきらめや開き直りではなく、自分がもし誰かに迷惑をかけてしまったとき、素直に「すみません」と謝れる心理状態のことです。
自分を肯定していないと、「言い訳をする」「自己嫌悪を感じる」、もしくは「誰かのせいにする」といった方法で対処してしまうことになります。できないことやうまくいかないこと自体を認められないと、失敗をした自分をなかったことにしようとしてしまいます。
自己肯定というのは、自分を素直に、自由にすることでもあります。気持ちがとても軽くなって、解き放たれるような感覚です。
自己否定という「心のクセ」
人はなぜ「自己否定」をしてしまうのでしょうか?
自己否定というのは、「心のクセ」です。子ども時代からの習慣が大きく影響すると言われています。
例えば、親からあんまり褒められずに育ったり、誰かと比較されてきた――兄弟姉妹や周りの友達と比べられたり、否定されてきた経験が多いと、いつしかそれを自分で自分にやるようになっていきます。
これはかなり重いクセで、無意識のうちにやってしまうようになるのです。話す言葉に例えられるのですが、これから誰かと話そうとするとき、「よし、これから日本語をしゃべるぞ!」と気合いを入れてから話す人は、日本語が母国語の人ではいません。
それと同じで「よし、これから自分を否定するぞ」とわざわざ思わずとも、自分を自然と否定してしまうことになります。そういった積み重ねが、自己肯定感をとても低くしていきます。
汚れたコップの水をきれいにするには?
自己肯定感の低い人がきちんと自分を肯定するためには、まずはそのクセを断ち切るところから始めなくてはいけません。
元々、人間は自分を否定するようにはできていません。赤ちゃんが、「こんなに母乳ばっか飲んでてごめんなさい」とはならないですね(笑)。飲みたければ飲む、飲みたくないときは飲まない。それだけです。
実は元々「100」あった自己肯定力が、その後の人生によって低くなっていくのです。家庭環境や、学校、友達、恋愛、仕事などの影響でだんだんと落ちていきます。さらに、すごくつらいことがあるとがくんと落ちます。
何度もこうやって揺らぎながら、例えば試験に合格したあとは自己肯定感が一気に上がったり、仕事で失敗したときは一気に落ちたり。「恋人ができた!」でドンと上がって、「振られた」でドンと落ちたり。そうして昇り降りを繰り返していくわけです。
ですから自己肯定力というのは、0から積み上げて100を目指すものではありません。自己肯定力の低い人は、100から落ちてきて今の低い状態になってしまっているんだということを理解してください。
コップに入った水が、何かの拍子に汚れてしまったとします。この水をきれいな状態に戻すためには、きれいな水を注いでいくという作業が必要になります。
そのためにいくつかのワークを用意しています。素直な気持ちになって、ワークを実践しながら自分を肯定する意識づくりをしていきましょう。
自己肯定感を取り戻すためのワーク
「自己肯定したらどう変わるか?」をイメージする
さて、それでは早速、こちらのワークに取り組んでみてください。
「そろそろ結婚しなきゃ」とか「営業成績を高めたい」とか、あるいは人間関係とかお金の問題を思い浮かべてください。
特に今問題がないという方は「もっとこうなったらいいな」という願いでもかまいません。
思い浮かべたら、次の質問に答えてみてください。
あなたが「恋人がほしい」と悩んでいたとします。恋人ができない状況は変わらないとして、自己肯定力が高ければその状況をどうとらえるようになると思いますか?
仕事でもいいです。「ノルマ未達が続いていてつらい」とき、もし自己肯定力がアップした状態だったらどう考えるでしょうか?
ルールは「自分を責めないこと」。自分を否定しないで、どのように自分自身との向き合い方が変わるでしょうか?
それではもうひとつ、次のことを考えてみてください。
例えば今日1日、あるいは1週間を振り返ってみたときに、あなたの自己肯定力がアップしたならば、毎日がどのように変わるでしょうか?
「楽しい時間が増える」「いきいきしてくる」……どんな答えも正解です。
この質問、どうしてあなたは正解できたと思いますか? なぜ「楽しい時間が増える」「いきいきしてくる」と答えられたのでしょうか。
つまり、私たちは「自己肯定力が高い状態」というのを、すでに知っているから答えられるのです。
ゆえに、この2つの質問に対する答えをイメージし続けると、自己肯定力を上げることができます。
例えば明日、職場でちょっとイラッとすることが起こったり、取引先や上司から嫌なこと言われるとします。そのときに、自己肯定感の高い人だったらどう思うかな、どう対応するかな、と想像するのです。
「笑ってやり過ごす」「軽快に言い返す」など、自己肯定力の高い人はどうするかイマジネーションが働くようになります。
これは、みなさんのなかにある、「自己肯定感の高い自分」を発見している作業です。その自分が、答えを教えてくれます。自己肯定感の高い自分と繋がり続けていれば、いつしかその自分になることができます。
ポジティブな変化に意識を向ける
自分を認めることの第一歩として、「変化を見つける」ことが大事です。
次のワークは、初めてこの質問を答える方にとっては難しいかもしれません。今まであまり考えたことがないかもしれませんが、想像してやってみてください。
普段カウンセリングをしていて感じるのは、この質問は難易度が高いということです。「ないです」と即答する方も多くいます。自分がいい方向に変化したこと、成長したことに、人は目を向けにくいのです。
そもそも、私たちの心は、自己防衛本能が働くようにできています。自分で自分を守ろうとするうえで、必ず不快なほう、ネガティブな感情のほうに敏感になります。逆に言えば、ポジティブな変化に目を向けようと思ったら、そこにはある程度意志の力が必要になってきます。
「ポジティブに変化したところはどこ?」「成長したところはどこ?」という目線で意識的に自分を見つめない限り、それを見過ごすようにできているのです。
ポジティブな側面に目がいくようになることは、そのまま自己肯定感を高めることになります。もちろん、ネガティブな出来事や感情がそっくり消えるわけではありません。
ですが、出てきたとしても、自分を肯定するという選択肢があれば、「まあまあそういうこともあるよね」と引きずらなくなったり、ネガティブな事柄にいつまでも振り回されなくなったりする。自分への評価が、否定だけじゃなくて肯定もあるんだと、具体的に身をもって知るということが大事なのです。
それでは、次のワークにいってみましょう。今度は応用編です。
このワークを通じて掴んでいただきたいのは、過去の自分を肯定するということです。人生にはさまざまな後悔があると思いますが、後悔だけではなく、「あのときの自分、頑張ったな」と思えることを探してください。
「自転車に乗る」とか「言葉を覚える」とか、そういうところから「受験勉強を頑張った」とか「仕事を覚えるために一生懸命だった」とかまで。なんでもいいです。
これもさっきと同じで、後悔していることはよく覚えていても、頑張ったことはあんまり覚えていません。
ですが、今の自分があるのは過去に頑張ったことがあるから。もちろん「あのときもっとああしてれば……」ということもあります。それでも、そのときの状況のなかでベストは尽していたはずです。そこは「しょうがない」精神で切り替えて、「でも、なんだかんだやったじゃん」と、自分の頑張った過去を認めてあげてください。
自己否定していないときって、どんなとき?
それでは次のワークにいってみましょう。
いくつか挙げることができたでしょうか。
現実的な制約は置いておいて、お金や時間の問題も考えず、とにかく並べてみるとどうなるでしょうか。
「許可」とは、自分を許す感覚で、「やっていいよ」と自分に言ってあげてください。
好きなことには、没頭できます。好きなことやってるときに、自己嫌悪はできないという法則があります。
チョコレートが好きな人がチョコレートを食べて「ああ、おいしい」と思っている最中は、自己嫌悪を感じません。あとで、「ダイエットしているのに、また食べちゃった」と思うことはあります。
好きなことをしている瞬間は、自分を責めることは難しいので、自己肯定感が100%の状況です。
そういう時間を、しっかり意識しながら、「私を許している時間があるじゃん」と思ってください。そうやって自分を認める時間を増やすことが、冒頭にお伝えしたコップを元に戻すための「きれいな水」を注ぐことなのです。
もっと自分を好きになるために、今日からできること
それでは最後に、まとめに変えて、次のワークをやってみてください。
「変化する」というのに注目して、どう変化するかを考えてください。もっと自分が自由になったら、もっと自分が解放されるならば、みなさんの毎日が、人生がどう変わるでしょうか。ここまでやってきたセッションの流れも含めて、ちょっと考えてみてください。
実は、この最後のワークが、今日の成果物になります。今日からのあなたの行動指針だと思ってください。
これを、日々目にするところに張っておいたり、持ち歩いてチェックしたりしてみてください。「行動指針」というのを持って、こうやって意識的に生活をしていくということですね。
自己肯定感の上がった自分を具体的にイメージして、その自分の声を常に聞きながら毎日を過ごすのです。そこには本来の自分――つまり元々持っている自己肯定力を駆使したとき、「自己肯定している自分」の行動様式が書かれているはずです。それをガイドにしながら、自分を変えていきましょう。
もうひとつ、1カ月後に、この行動指針を振り返る時間をつくってほしいのです。そのときは、成長したところを見つけるような感覚で。仮にできてなくてもいいのです。振り返って自分を認める時間をつくる、ということが大切です。
そうこうしているうちに、少しずつ変化が出てきます。もちろんこれもまた、意識してみないとわからないのですけど、「最近、自己嫌悪を感じなくなってきた」「気分が軽くなってきた」と気づきます。
「前より笑っている時間が多い」「今の自分のこと好きかも」とか、その程度の変化です。
でも、これが本当に大きい変化なのです。
ぜひとも、人生のステップアップの参考になればうれしいです。
(画像提供:iStock.com/1001Love)
根本裕幸 ねもとひろゆき 1972年静岡県生まれ。大学より大阪府在住。 2000年よりプロカウンセラーとしての活動を開始。 1対1のカウンセリングはもとより、心理学講師、ヒーリング系セミナーのトレーナー、カウンセラースクール講師等に力を入れる。 2015年より独立し、フリーのカウンセラー/講師/作家として活動。 大阪をベースに、札幌、仙台、東京、名古屋、広島、福岡、那覇等で心理学的な考え方やアプローチで問題を解決したり、幸せになれる方法を伝える講座/ワークショップを開催している。 分かりやすい説明と関西風のユーモア、癒される声のトーンで飽きさせない話しっぷりで好評を博している。 著書は『頑張らなくても愛されて幸せな女性になる方法』『こじれたココロのほぐし方』をはじめ多数。 『anan』『CLASSY』『LEE』『美ST』『OZ plus』等、雑誌への出演も多数。 オフィシャルサイト http://nemotohiroyuki.jp/
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