現役モデルが説く、「選ばれる26%」になるためのメソッド/中村康介

人間は24時間で74%もの物事を忘れてしまうといわれています。つまり、相手の記憶に残る26%の中に入り込むことが、ビジネスや人生を成功させる重要なカギ。1000回以上のオーディション経験から培われた、現役モデルの「選ばれる技術」とは?

現代は、選ばれることが難しい時代

大手企業のSEからモデルの世界へ

僕は現役でモデルを務めながら、モデル事務所をメインとした人材サービスの会社を経営しています。もともとはIT企業でSEとして働いていたのですが、芸能活動をしてテレビに出たい! と思い立って事務所に所属し、SEをやりながら有給を使ってオーディションを受けまくりました。

当時は毎日のようにオーディションを受けては落ち、そもそも顔すら覚えてもらえない状況。マネージャーがなんとかとってきてくれた仕事も、ファッション誌の片隅に小さく載るだけ……というありさまでした。

それをなんとか打破すべく、約3分という短い時間でいかに選ばれる人間になるかを徹底的に分析し、実践しました。すると戦隊シリーズへの出演が決まり、ドラマのレギュラーまでいただけるように。今では多くのCMに出演させていただいています。

モデルを始めて4年後に独立し、現在経営しているモデル事務所は所属20名、登録90〜100名ほど。年間100回、累計1000回以上ものオーディションを受けてきた僕自身の経験をもとに、選ばれるモデルに育てるための人材教育に力を入れています。
また、就活・婚活・芸能などの分野でも、「選ばれる技術」をお伝えするセミナーを年100回ほど開催。セミナーコンテスト準優勝やベストセミナー講師賞などもいただきました。

人間の記憶力はどのくらい?

今の時代は一言でいうと、選ばれることが難しい時代です。なぜなら、インターネットの発達により情報が洪水化しているから。総務省のデータによると、世の中に出回っている情報量はここ10年で9.3倍に増えているそうです。簡単にいえば、ものを買うときに以前は3つの中から選んでいたのが、今では30もの選択肢から選んでいるということ。つまりそれだけ「選ばれにくい」時代なのです。

選ばれるためには、まず相手の記憶に残らなければいけません。では、人間の記憶力とはどの程度なのでしょうか?

人間は、今日覚えたことの74%を、明日には忘れてしまうといわれています。「エビングハウスの忘却曲線」によれば、20分で42%、24時間で74%の情報を忘れてしまうそう。たとえば今日のセミナーで10人と挨拶を交わしたとしても、明日はっきりと覚えているのは3人だけ。あとの7人は、顔はぼんやり覚えているけれど、何をしている人なのかまでは忘れてしまうのです。

26%に残った記憶を定着させるためには、2日後、1週間後といったタイミングで「復習」をすること。「あの人は保険会社勤務だったよな。今ちょうど保険を検討しているから、ちょっと連絡してみよう」というようにリマインドすると、記憶は90%定着するといわれています。

ただ、相手にそこまで覚えてもらうには、最初の段階で26%に入り込む必要があります。そのための2ステップをこれからお伝えしていきます。

選ばれる自分づくりの2ステップ

<STEP.1> 初期値を上げる外見力の3大要素 〜C3理論〜

STEP.1は、初期値を上げる外見力の高め方。テキサス大学教授の調査によれば、人は見た目で生涯年収が3000万円も変わるといわれています。ハイブランドを身につけてください、という話ではありません。僕が確立した「C3理論」をもとに、ポイントを押さえることが大事になります。

前提として、会った瞬間に減点されてしまうのは不潔な方。スーツにフケが溜まっている、シャツに年季の入ったシミがついている……など。清潔感を心がければプラマイゼロくらいには持っていけるので、そのうえでC3理論を実践してみましょう。

C3理論①:Color(色彩)

色彩にはそれぞれ異なる効果があり、身につける色によって相手に与える印象を変えることができます。

<赤>
効果:情熱的、積極性、リーダー
赤は「モチベーションカラー」と呼ばれ、赤い服や小物を身につけるとモチベーションが高まったり、情熱的な印象を与えることができます。また、買いたいという意欲を掻き立てる「購買色」とも呼ばれており、コーポレートカラーに使っている企業も多いです。

<青>
効果:誠実、信頼、洗練、冷静
気持ちを落ち着かせる色。人種や宗教を問わず「青=苦手でない色」という回答が多いとの調査結果もあり、万人から嫌われにくい色ともいえます。

<黄>
効果:楽天的、高揚感、ポジティブ、注目
宝くじ売り場に黄色が多用されているのは、「もしかしたら当たるかも!?」という高揚感を与えるため。また、注意を喚起する看板にもよく使われている色です。

<ピンク>
効果:安心、愛情、女性性、献身的
見ているだけで女性ホルモンが分泌されるといわれるピンク。男性であれば物腰が柔らかく見え、女性であれば女性らしさがより高まる色です。安心感が大切なエステサロンなどでもよく使われています。

<緑>
効果:バランス、安らぎ、自然体、リラックス
色には、黒などの収縮色と白などの膨張色がありますが、緑はちょうど中間の色。そのためバランスがとれた印象を与えます。

<オレンジ>
効果:元気、楽しい、親しみ、自由
「ビタミンカラー」とも呼ばれ、人を元気にする色として知られています。

<黒>
効果:貫禄、緊張感、プロ、高級
高価な商材によく使われます。「値段は高いけど相応の価値を提供します! プロですから!」という自信も垣間見えますよね。冠婚葬祭など、場を引き締める必要があるシーンにも適しています。

<グレイ>
効果:慎重、穏やか、控えめ、中立
謝罪会見やお詫びの場に有効な色。黒だと相手に緊張感を与えてしまいますが、グレイだと「こっちの気持ちもわかってくれそうだな」という印象になります。

<白>
効果:清潔、清楚、純粋
シャツなど、服に取り入れるだけで清潔感がぐっと高まる色です。

選ばれたい相手や扱う商材によって身につける色を変えるのが効果的ですが、「初期値を上げる」ことに的を絞って考えたときに、おすすめの配色を紹介します。

男性であれば、嫌われにくく信頼感のある「青」と、清潔感のある「白」。ネイビーのスーツに白を基調としたシャツなど。ネイビーと白だけだとのっぺりしやすいので、茶色のネクタイや黄色のチーフなどをアクセントに取り入れてもいいと思います。

女性は男性に比べて配色の選択肢が多いのですが、絞るとすれば「パステルピンク」と「白」。女性らしい包容力で、相手に安心感を与えることができます。

C3理論②:Coordinate(組み合わせ)

2つ目のCはCoordinate、つまり服の組み合わせ。服をコーディネートするときに最も大切なことは、「シルエット」です。

女性の場合、目指すべきシルエットは「三角形」。頭を頂点にして、膝に向かって伸びる二等辺三角形を意識すると、最も女性らしいシルエットになります。年齢を重ねるとお尻が垂れて大きくなる傾向にありますが、この三角形シルエットであればかなり隠せます。

トップスはタイトにまとめ、ボトムスは膝丈のフレアスカート。ハイウエストのデザインのスカートやワンピースを選んだり、高い位置でベルトをしたり、ウエストマークをするとより脚長効果があります。膝下や肘下など細い部分を積極的に出すことで、隠れている部分まで細く見せるのもポイント。

体型に自信がある方は、細い長方形のシルエットでも素敵だと思います。ただ、洗練されすぎていると万人には受け入れられにくいので、初期値を上げるという意味では三角形がおすすめです。

男性の場合は、「逆三角形」。たとえば水泳選手は、肩幅が広くて上半身に筋肉がついているので、Tシャツ1枚でもカッコよく決まりますよね。でもその体型をつくるのはなかなか難しいので、服の組み合わせで逆三角形のシルエットをつくり出します。

まずはジャケットを羽織って肩のシルエットをきちんとつくり、三角形の底辺の形を固めます。パンツはジャストフィットで。ぴったりしすぎず、太すぎず、ももの部分の生地をつかんだときにひとつかみできるくらいの緩さがベストです。

最近は女性の間でビッグシルエットが流行っていたりもしますが、ビジネスなどフォーマルな場でよしとされる服装は流行にあまり左右されません。最初に選ばれる見た目をつくるなら、トレンドを追うよりも、いつの時代も素敵に見える服装を心がけることが大事です。

C3理論③:Character(人柄・キャラクター)

最後に、①Colorと②Coordinateをチューニングして、内面との整合性をとることが大切になります。ここでいう内面とは、「年代」「キャラクター」「TPO」などのこと。

たとえば、30歳会社員の男性が、ずっと体型が変わっていないからといって学生時代の服を着続けていたら、内面に合わない外見になってしまいますよね。そこで、ネイビーのジャケットに白のパンツなど、「青×白」配色と「逆三角形」シルエットを意識しながら服装をアップデートしていくと、年代やキャラクターに見合った外見に変わります。

選ばれる自分づくりの2ステップ

<STEP.2> 出会いの点を継続という線へと変える 〜○○理論〜

STEP.1で外見力を高めても、中身がなければ選ばれる自分にはなれません。人との付き合いにおいて、外見の重要度はだんだん下がっていきますが、中身の重要度は反対に上がっていきます。

出会いの場で生まれた点を線へ変えるには、「○○といえば私」というブランドを確立する必要があるのです。

ブランドとは「約束」。たとえばスターバックスコーヒーは、自宅でもオフィスでもない第3の場所、「サードプレイス」を提供すると約束しています。僕の妻も、子どもが寝ると近所のスタバに行って、家庭でも仕事でもない第3のひとときを楽しんでいます。

お店だけでなく、人もブランドになれます。「キング・オブ・ポップ」といえばマイケル・ジャクソン、「永遠のアイドル」といえば松田聖子さんのように。
それと同様に、たとえば「法律関係で困ったことがあったから△△さんに連絡してみよう」と相手に思い浮かべてもらえるように、自分が何者なのかを洗い出すことが大切。それが「○○理論」です。

○○理論に基づいた自己紹介とは?

エレベータートークという言葉をご存じですか? これはシリコンバレーの逸話から生まれた言葉。起業家が自分のビジネスプランを売り込むために、投資家の乗ったエレベーターにパッと乗り込んでわずか60秒ほどでプレゼンをし、見事投資を受けることに成功したというエピソードからきています。これを初対面での自己紹介に応用すると、出会いの点を点で終わらせず、継続という線へと変えることができます。

悪い自己紹介の例でありがちなのは、経歴をただ羅列するだけ。これでは「○○といえば私」というブランドが相手に伝わりません。ポイントは、過去→現在→未来のストーリーを伝えること。

まずは、ブランドの土台となる過去について。「○年間、○○をやってきました」と、数値や固有名詞を入れて具体的に伝えます。ここで大事なのは、一度凹むこと。僕でいうなら「オーディションをほぼ毎日受けたが落ち続けたので、選ばれる技術を研究した」という失敗談を挟みます。
ヒーローがワンパンで敵を全員倒してしまったらおもしろくないですよね。絶体絶命のピンチを経て勝利するからこそ、みんなの共感や応援が得られる。それと同じで、うまくいかなかった経験もあえて盛り込むことで、相手に共感していただきます。

次に、過去の実績や強みが開花した現在について。「その経験をいかして今○○をやっています」と、これも具体的に表現することが大事。過去のくだりで一度凹んでいるので、ここでは「どや!」と自信たっぷりに言ってしまいましょう。嫌味には聞こえません。

最後に、未来について。「○○ならお任せください!」「○○をお約束します!」と、いかに相手の役に立てるかをアピールします。未来のことは特にふわっとした表現になりがちですが、なるべく相手が映像化できるように具体的にお伝えしましょう。

これらを最初から60秒に落とし込むのはなかなか難しいもの。文章に起こしながらでも、実際に話しながらでも、やりやすい方法でブラッシュアップしてみてください。僕は後者のタイプだったので、フランクな言葉で話していくうちによりよい表現が思いついたり、自分の新たな強みに気づいたりすることが多かったです。

選び、選ばれる自分のつくり方

自分の価値観を明確化しよう

選ばれる技術についてお伝えしてきましたが、最後に「選ぶことも大事」というお話をさせてください。選ばれる必要のない人から選ばれても、結局は意味がないからです。

選んでもらいたい人から選ばれる自分になるには、自分の価値観を明確化しておくことが重要。たくさんの価値観キーワードの中から、大切だと思うキーワードすべてに○をし、そのうえで最も大切な価値観を4つだけ選んでください。その4つを僕は「価値観の車」と呼んでいます。

僕の価値観の車は「家族」「健康」「夢」「お金」の4つ。SE時代は、お金にはそんなに困っていませんでしたが、この仕事でいいのだろうかと毎日モチベーションが上がらずストレスを抱えていました。
ところが夢を追求するためにモデルになると、収入も貯金も激減して違うストレスを抱えることに。僕にとっては夢もお金も大切な価値観だったのです。家族ができてからは家族最優先で、家族に迷惑をかけないためにも、夢を追うためにも、健康は大事にしています。

人生でいちばん無駄な時間は、ものを探している時間だと思うんです。時間も労力もかけて探した挙句、最終的に得られる報酬は「あった」という事実だけ。
それなら、最初からなくさないように置き場所を決めておいたほうがいいし、人生の中で余計な迷いが生じないように、大切にしたい価値観をあらかじめ明確にしておいたほうがいい。それが、選ばれたい人に選ばれるための最短の近道だと思います。

 

(画像提供:iStock.com/g-stockstudio)

中村康介(なかむらこうすけ)


モデル事務所「アクエリアス モデルズ」、パーソナルスタイリングサービス「トータルコーディネートラボ」などを展開する株式会社アクエリアス代表取締役社長。
一般社団法人日本パーソナルブランド協会 パーソナルブランドコンサルタント。
元SEの現役モデルという異色の経歴から、ファッションやコミュニケーションをロジカルに分析。パーソナルブランディングを根底に、芸能・婚活・就活・転職の現場にて「選ばれる人材」を育成するセミナーを年間60回程度、全国各地にて講演している。
主な出演作品は、CM『SONY銀行』『スカパー!』『英会話のGABA』等がある。

【受賞歴】
「セミナーコンテスト東京2014」東京大会優勝
「セミナーコンテストグランプリ全国大会2014」全国準優勝
「ベストセミナー講師賞2015」受賞

 

 


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