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交渉術で人生の問題が解決できる?交渉の基本と心理学を用いた交渉テクニック

頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術
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人生の問題は対人関係から生じているといわれています。そこで交渉術を使いこなすことができれば、ビジネスから日常生活まで、人生のさまざまな問題を解決することが可能です。

この記事では、使える交渉術の知識やテクニックを、犬塚壮志著書の『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』よりご紹介します。

交渉術のコツやポイントを知り、交渉上手になるためにぜひ最後までご覧ください。

交渉で人間関係の悩みが消える?ビジネスから日常生活まで使える交渉術

交渉術を身につけるメリットを見ていきましょう。

交渉術を身につければ人生の問題が解決できる

心理学者であるアルフレッド・アドラーは「人生の悩みはすべて対人関係でできている」と述べています。では、対人関係の悩みはどうしたら解決できるのでしょうか。

それは、交渉術です。交渉術を身につけていれば、人と揉めずに良好な関係を作ることができます。ぶつかることがあっても、しこりを残さず、自分は損をせず相手にナメられない関係性を構築できます。

重要なのは論破ではなく相手をファンにすること

交渉で大切なのは、相手を自分のファンにしてしまうこと。論破して打ち負かすことではありません。

交渉術の本質は、あなたの望む最高の未来と、相手の納得感を得ること。有利な合意を得ながら交渉相手との人間関係を良くしていくことです。一度の勝ちではなく、交渉相手を長く付き合える味方にしてしまいましょう。

交渉が上手い人の5つの特徴

交渉上手な人の5つの特徴を見ていきましょう。

1.交渉の開始と終了を相手に気づかせない

交渉が上手い人は、相手に悟られないように、自然に交渉を始めます。相手が身構えることで失敗に繋がるのを避けるためです。

相手は「交渉をした」という自覚さえもたないほど。常に自然体で交渉していきます

2.相手と衝突しない

交渉というと、論破するというイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、交渉が上手い人は衝突したり揉めたりしないように交渉を進めます

衝突すると多大なエネルギーがかかり、さらに勝ったとしても遺恨が残ってしまうからです。交渉上手は決して好戦的ではないのです。

3.自分の身を守ることが最優先

交渉上手な人は、自分の身を守ることを最優先にして交渉を行います。最終的な目的は、あなた自身を自由にすることです。相手の都合のいいようにさせてはいけません。

武道で言う護身術のように、交渉術をコミュニケーション上の盾として使います

4.All-Winを目指している

交渉が上手な人はその交渉に関わる人全員がハッピーになることを目指します。中長期期的な視点で良好な関係を築くことを優先しているのです。

短期的な価値や目先の利益を優先すると、交渉に関わった人たちとの間に軋轢が生じることも考えられるからです。All-Winを目指すのがポイントです。

5.目的にフォーカスしている

交渉術を使い分けているのも交渉が上手い人の特徴です。たくさんのテクニックの中から、交渉の目的に合わせて使い分けます。

あるテクニックを使っていて、上手くいきそうにないと感じたら、即座に別のテクニックに切り替えるという柔軟性も持っています

交渉は心構えから始まる!5つのマインドセットをしよう

交渉術を実践する前に必要なマインドセットについてみていきましょう。

1.自分が譲れないものを明確にしておく

交渉前に、自分の価値観や条件をはっきりさせておきましょう。軸がしっかりして交渉中もブレることがなくなります。

仕事の依頼なら、プライベートを重視するのか、評価や金銭的な対価を重視するのかなど、譲れない部分をはっきりさせておきます。強い意志を持った精神状態で交渉ができるでしょう。

2.その交渉で得られるものの重要性を明確にしておく

交渉前に、その交渉で得られるものとその価値を明確にしておきましょう。特にオークションのような競売では、勝つこと自体が目的になってしまうことがあります。

交渉によって手に入るものが、自分にとってどれだけ意味のあるものなのかを、はっきりさせておくことが大切です。

3.敵は「生じている問題」であり、交渉相手ではない

交渉相手はその問題や悩みを一緒に解決するパートナーです。交渉は問題や悩みを解決するために行うものだからです。

相手を敵視すると、どうしても感情が先立ち、勝敗にこだわってしまいます。最良のゴールに到達するには、その問題や悩みの解決だけに照準を絞りましょう

4.交渉の余地は必ずある

交渉の余地がなさそうに見えても、必ず糸口は見つかります。それに気づけない人が多く、相手の都合のいい形で交渉が落ち着いてしまうことも。

交渉の余地は必ずあり、相手の出してくる案や選択肢がすべてではないことを覚えておきましょう。

5.自分は交渉の達人であると思い込む

自分を交渉の達人と思い込むことで、交渉の達人のような振る舞いや思考ができるようになります。

交渉の達人だと思いこむことが効果的だと実証された実験が、「スタンフォード監獄実験」です。これは一般の学生である数名の参加者に「看守」と「囚人」の役割を与え、経過を観察するという試みです。

しばらく経過すると、看守役は艦首らしく、囚人役は囚人らしく、その役割にあわせた行動をとるようになりました。

この結果から、役割を演じ切ることで人は変わるということがわかっています。交渉上手になるためには、マインドセットから始めていきましょう。

知らないともったいない!?交渉の成功率を上げるコツ

交渉の成功率を上げるコツを説明していきます。

交渉する前に相手の情報を集めておこう

交渉相手の情報をどれだけ把握しているかで、交渉の結果は大きく変わります。

取引先との商談で、相手が重視しているのが価格よりも納期だという情報を知っていれば、時間や期日をアプローチすれば上手くいく確率が上がるでしょう。交渉が始まる前に相手を熟知しておくことが大切です。

交渉においてはお互いの利害をいち早く見出すことが成功させるポイント

交渉がうまくいかない原因の一つは利害の不一致です。お互いの利害に気づき、それが重なる共通の利害を見つければ、交渉のペースを握ることが可能です。

ある商品を売りたい人と、まだ買いたくない人がいたとします。この「売りたい」「買いたくない」というのは交渉に臨む人それぞれの「立場」。立場のまま交渉しても話はまとまりません

「利便性を納得したうえで買ってもらいたい」「価格や保障期間も含めて納得して買いたい」という願望や関心が「利害」。

ここで「納得してから決めたい」という共通の利害に気づけば、お互いが満足できる合意につながるかもしれません。このように利害は交渉のカギを握っているのです。

交渉術を使いこなすための5つのセオリー

交渉術を上手く使いこなすために覚えておきたいセオリーをご紹介します。

1.人はコストをかけたものを選ぶ

過去に費やしてきた時間やお金などにこだわって意思決定をしてしまうことをサンクコスト理論といいます。

「これだけお金と時間をかけてきたから今さら中止にできない」というように、これまで費やしてきたコストを基準にしてしまい、合理的な判断ができなくなってしまうのです。

交渉では、自分はサンクコストに陥らないようにしつつ、相手にサンクコスト理論を仕掛けて話し合いを優位に持っていきましょう。

2.人はあたえてくれる人を選ぶ

先に相手に与えことで、相手から選ばれやすくなることを返報性の原理といいます。

スーパーの試食コーナーで試食をすると、何か買わなくてはと思い、つい買ってしまったことはないでしょうか。

他人から恩恵を受けたら、似たような形でそのお返しをしなくてはという心理が働きます。これを利用すれば、その後の交渉がうまくいく可能性が高まるでしょう。

3.人はリスクをコントロールしてくれる人を選ぶ

私たちは、利益よりも損失を回避することを選択しがちです。これはプロスペクト理論によるもの。交渉相手に条件を提示するなら、メリットよりもデメリットが避けられることをアピールするとよいでしょう。

4.人はモヤモヤを解消してくれる人を選ぶ

私たちは自分の中の矛盾に気づくとモヤモヤして落ち着かなくなります。

たとえば、仕事で自分は雑用ばかり押し付けられて残業ばかりなのに、同期の友人は注目度の高い仕事を任されているとします。この矛盾した状況に納得いかず、モヤモヤした状態に。

すると、「雑用が完璧にできて一人前なのだから、本当に期待されているのは自分の方だ」と無理やり自分を納得させてモヤモヤを解消します。これを認知的不協和理論と言います。

これを交渉で活かすには、意図的に相手に認知的不協和理論を起こして、その解消に役立つ情報を提供するのです。すると、相手はモヤモヤを解消してくれた人(あなた)を信頼するようになります。

5.人はやる気を出してくれる人を選ぶ

人は、自分のやる気を刺激してくれる相手に好意を持ちます。私たちは行動を起こすときに何らかのモチベーションを感じて動かされています。

何によって動機づけられるのかを研究したのが「モチベーション理論」。モチベーション理論にはさまざまな種類がありますが、適切なものを用いて交渉に対する相手のモチベーションを高めるとよいでしょう。

交渉を成功させる心理学的テクニック5選

ここからは、交渉のテクニックを5つご紹介します。

ハロー効果で自分の印象をよいものにする

私たちは、初対面の印象から相手の人物像を判断しがち。メガネをかけて高級スーツにネクタイをしていたら「まじめそう」「頭良さそう」と思うのではないでしょうか。

これをハロー効果といい、外見だけでなく、肩書きや部分的な実績など、その人に関わるわずかな情報でも働きます。自己紹介に、相手の求める人物像に近い経歴を盛り込めば、仕事でメリットがあると思わせることができるでしょう。

自分が相手に与えたい印象をコントロールすることが可能になるのです。

「はい」とこたえさせるイエスセット

交渉では、その場の空気作りが非常に重要です。交渉結果を左右することもあります。自分に有利な場の空気を作るのにはイエスセット話法というテクニックがよいでしょう。

本題に入る前に、相手が絶対に「イエス」と言ってしまいそうな気軽な質問を数回行うと、「イエス」と言いやすい肯定的な空気が生まれます。すると相手の緊張がほぐれ、本音を引き出しやすくなるでしょう。

好意の返報性で要求を通しやすくする

交渉相手が自分に対して好意や親近感を持ってくれていたら、こちらの提案が通りやすくなります

ただ、相手から好意や親近感を持ってもらうことが難しいと感じる人もいるかもしれません。その場合、自分から先に「好きだ」と相手に伝えるとよいでしょう。

人は、自分に対して好意や親近感を持ってくれている相手に好意を寄せやすくなるからです。これを「好意の返報性」といいます。

「また会いたい」と思わせるピーク・エンドの法則

人は去り際が肝心。交渉でも、り際を相手の喜ぶ話をして締めると、次回の交渉を有利に進められます。

人は最後に感じたことをよく記憶します。この仕組みをピーク・エンドの法則といい、「よかった」「悪かった」という記憶は絶頂(ピーク)の時の感情と終わり方で決まるというもの。自分の話題のピークも終盤に持ってくるようにしておくとよいでしょう。

類似性の法則で相手との距離を縮める

交渉相手に自分との共通点や類似性を認識してもらうと親近感が増し、交渉をスムーズに進められます。自分と似ているところがあると知ると、警戒心が弱まり、安心感を得るからです。

共通点がなかなか見つからないときは、目の前にいる相手の真似をしてみるとよいでしょう。相手が笑えば自分も笑い、相手が飲みのものを飲んだら自分も飲み物を飲むなどします。すると無意識のうちに類似性を感じてくれるでしょう。

まとめ

交渉上手になるためには、コツ・セオリー・マインドセットなど、理屈以外の部分も大切な要素になってきます。しっかりと身につければ、悩み事が減り、自分に自信がついていくでしょう。

東大の「交渉学」から学んだ対人関係の全技術を1冊に凝縮した、犬塚壮志著書の『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』は、55の交渉テクニックを収録。実践で使えるものだけを厳選しているので、日常のあらゆる場面で役立ちます。イラストや使いが豊富でわかりやすく、習得のコツや身の守り方も指南。交渉力が身につくこと間違いなしの本書をぜひ手に取ってみてください。


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