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ルールが必要!金融危機を起こさないために

東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!
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ルールをきちんと決めないと、大不況が起こる可能性があります。証券化ビジネスが暴走して大不況をもたらしたのがリーマンショックです。

この記事では、金融市場のルールの重要性を、経済の仕組みが超シンプルに理解できる「東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった! 」よりご紹介します。ぜひ最後まで読んで、金融ビジネスを知っておきましょう。

信用貨幣として簡単に取引できる「証券化」

ここでは、証券化について説明していきます。

証券化って?

太郎が花子から100万円を借りたとします。普通は「債務:太郎が花子に100万円を返す義務」と「債権:花子が100万円をもらう権利」が発生するだけです。

花子の債権を証明書という形にして「債券:太郎から100万円をもらえる券」を発行すると債券が生まれます。これが「証券化」ということ。

これをうまく売買して儲けを得るのが証券化ビジネスです。

法律が追いついていない証券化ビジネス

証券化(債券化)は「信用貨幣」を生み出すビジネス。しかし、ほとんど国から制限を受けていません

証券化ビジネスは1970年頃から急速に発達したため、法律が追いついていないからです。その結果、証券化ビジネスが暴走して世界中に大不況をもたらしたのがリーマンショックです。

リーマンショックは、返済不能になると分かりきった人たちにお金を貸し、それを債権化して売りさばくことができたことにより起きました。被害者は貧困層や中流層ばかり。たくさんの失業者が生まれ、600万人が家を失いました。

リーマンショックとは?

日本でリーマンショックと呼ばれる大不況を、本書では、とおい海の向こうの「あめりか島」に例えて説明します。

あめりか島に貧しい貧困層のヤマネコがいました。ヤマネコは自分の家が欲しいと思っていましたが、「どる」が借りられず家を建てられません

その様子を見ていた証券屋のカワウソは「いいこと」を思いつき、ヤマネコたちにこう言います。「30万どるを貸しますから、30万どるの家が買えますよ。ただし、1年に1万どるずつ、35年かけて35万どるを返してください。」

ヤマネコたちは喜んで借用書にサインをし、30万どるを受け取ります。借用書(住民の債券)には、「35年間、ヤマネコから毎年1万どるずつ受け取れる券。ヤマネコは払えなくなったら、自分の家を売ってお金を返します」と書かれていました。

カワウソは手に入れたヤマネコの借用書を持って保険屋のカエルのところへ行きます。カエルにヤマネコの借用書の価値を聞くと、カエルは「いざとなったら家を売って返してくれるから、安心安全なSランク」と答えました。あめりか島では家の値段が上がり続けており、多分大丈夫だとカエルは思っていたからです。でもじつは、カワウソから仕事をもらうためにちょっと大げさにもしていました。

Sランクに自信をつけた証券やのカワウソは、ヤマネコの借用書を31万どるで売るという商売を始めます。この商売はまたたく間に広がり、カワウソは30万どるで買った借用書を31万どるで売り、1万どるずつ儲けることに成功します。

しかし、手に入れられるヤマネコの借用書には数に限りがありました。そこで、ちゃんと返済できそうにない、めちゃくちゃ貧しいヤマネコにも「どる」を貸すことにします。ただ、めちゃくちゃ貧しいヤマネコの借用書は安全とは言えなかったので、「安定した海外の通貨」「いろんな会社の社債」「いろんな会社のカブ権」などと一緒に混ぜて「初心者向け投資セット」として売り始めました。

「初心者むけ投資セット」の内容はややこしすぎて販売員すら理解できていません。それでも「難解な説明書」を読み上げてはいたので、ルール上は問題ありません

カワウソの商売は大人気になります。みんなん儲かり続け、島の景気はとても良くなり、他の証券屋もカワウソのマネをしはじめました

しかし本当は、ヤマネコの借用書は安全な資産ではありません。あめりか島の家の値段が投機バブル的に上がっていたので、しばらくの間大丈夫だっただけ。家の値段が下がると、借金を返しきれないヤマネコたちは家を売っても「どる」が足りません。住民の間では、ヤマネコの借用書が安全なのか疑問が広がりはじめます。

この状況を見て、「ヤマネコの借用書の価値が暴落するかも」とあわてたカワウソをはじめとする証券屋。売れ残っている「初心者向け投資セット」を、まだ気づいていない住民たちに大急ぎで売りはじめます

その直後、ヤマネコは「どる」を払えないと住民たちは気づき、ヤマネコの借用書はあっという間にただの紙切れになりました

ヤマネコの借用書をぎりぎり売り切った証券屋は助かりましたが、売り切れずにつぶれた「りーまんぶらざーず」という大きな証券屋もありました。

 

倒産した一番大きな証券会社の名前は「リーマン・ブラザーズ」。このことから、一連の大不況を日本ではリーマンショックと呼んでいます。

モラルを求めない?国のシステムを整備する重要性

金融ビジネスの現状とこれからの課題をみていきましょう。

原因は誤った規制緩和

リーマンショックの後は、製造業などの実体経済を支えている多くの企業が大損害を受けました。たくさんの失業者を生み、消費が滞ることに。人類全体でみれば大きなマイナスです。アメリカでは政府が負担した損失総額は1兆ドルとも言われます。

しかし、儲けるだけ儲けて、一切損をすることなく逃げ切った証券会社の社員も大勢います。アメリカ政府は通貨発行によって債務超過に陥った人たちを助けましたが、言い換えればその分だけ資産を得た証券マンがいるということなのです。

このとき証券会社は、ほぼ確実に損をするとわかっている商品を、金融知識のない人に売っていました。良くないことだとわかっていても、目先の利益のために売ったのです。

しかし、こういったグリッチマン(ルールの穴をついて儲ける人)は、法の範囲内で利益が最大化できる方法を取っていただけ。結局は、政府による誤った規制緩和によってグリッチマンの存在を許していたことが原因です。

モラルを求めることなくシステムを整える

一人ひとりにモラルを求めず、そもそもモラルの無い行為をしようと思ってもできないように国のシステムを整えていくことが大切

インターネットの発達によって急拡大したこともあり、金融市場はまだまだ規制が行き届かないところが多いのが現状です。技術の発展とともに、暗号資産のような新しい形の金融商品が次々に生まれます。「ルールの修正vsグリッチマン」のイタチごっこは続いていくでしょう。

それでも「仕事量(貢献度)に対して適正なお金を受け取れるシステム」をあきらめてはいけません。これからも金融ビジネスに関するルールの穴をふさぎ続けていくのです。

まとめ

証券化ビジネスは法律が追いついていません。これにより、大不況を引き起こしてしまいました。一人ひとりのモラルを求めるのではなく、国のシステムを整備していくことが大切です。

ムギタロー氏の著書「東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった! 」では、日本を「100人が住む島」と想定して経済のしくみを解説。本書を読めば、経済ニュースが「わかる!」レベルになるだけでなく、経済に対する自分の意見が持てるまでになれますよ。


東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった! ムギタロー(著)、井上智洋、望月慎(監修)

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