ライフスタイル

お金は万能ではない?新たな問題をどう解決するか

東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!
#ライフスタイル

お金も国も人が作り上げたもの。完璧ではありません。ルールの穴はどうしてもできてしまいます。また時代の変化に合わせたアップデートも必要です。

この記事では、ルールの穴と国家システムのアップデートの必要性を、経済の仕組みが超シンプルに理解できる「東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった! 」よりご紹介します。ぜひ最後まで読んで、新しい問題を解決しようとする政府の政策を理解していきましょう。

お金の3つの弱点とは

ここでは、対策が必要だと考えられるお金の3つの弱点をみていきましょう。

対策が必要な3つの弱点

ルールがあれば、必要なところにお金が流れて安心して暮らせるような気がしますね。しかし、そううまくはいきません。

時間が経つにつれて対応できない新しい問題が起きます。また、お金には以下の3つの弱点もあり、常に対策が必要です。

  1. 人の役に立っていなくても、ルールの穴をつけば稼げる
  2. 国が決めるルール次第で、特定の住民の給料が変わる
  3. 放っておいたら、重要な仕事のなり手が減る

次から詳しくみていきましょう。

1.人の役に立っていなくても、ルールの穴をつけば稼げる

一定数の人数が集まると、ルールの穴をついて儲けようとする人が必ず現れます。人の役に立つ仕事はしていないのに、ルールの穴をついて儲ける人のことを本書では「グリッチマン」といいます。

グリッチマンはルールを破ろうとしてはいないので、悪い人ではありません。しかし発展するのに貢献もしません

100人の島で100人分の食料・モノ・サービスを作っているとします。このうち10人がチケットの転売で暮らすと、90人で食料・モノ・サービスを作らなければなりません。90人より100人で頑張る方が文明の発展が進みます。ですから国はグリッチマンが出るたびに、ルールの穴をふさぐ必要があるのです。

2.国が決めるルール次第で、特定の住民の給料が変わる

最低賃金のルールを変えれば労働者の生活レベルが変わります。タバコ税を変えればタバコの売り上げが変わり、タバコ会社の社員の給料が変わることに。公務員の年収を決めれば、どれだけ頑張ってもサボっても年収は同じです。

3.放っておいたら、重要な仕事のなり手が減る

「研究」「防災」「整備」などはお金を稼ぎにくいけれど、重要な仕事です。将来役に立つかもしれないからです。しかし、自然なお金の流れに任せていたら誰もやらなくなってしまいます。そこで国が積極的に仕事を作って給料を払い、サポートしなければなりません。

お金は万能アイテムではない

100人の島に年収200万エンのウサギと、年収2,000万エンのブタがいます。島の文明発展と平和に貢献しているのはどちらなのか、この年収だけではわかりません。

ウサギは貢献度の高い仕事をしているのに誰かに搾取されているかもしれませんし、ブタはルールの不具合を利用して高い給料を得ているだけだという可能性もあります。

お金はモノやサービスの価値を表現できるアイテムではありますが、その価値を「正確に」判断できる万能アイテムではありません。このような弱点を放置しておくと新たな問題が起こることに。政府はこのような問題を解決するためにあるといえます。

利益のために最適な行動をとるということ

ここでは、システムの穴を利用しようとするグリッチマンについてみていきましょう。

グリッチマンとは

お金も国も人が作り出したもの。そのシステムは完璧ではありません。そしてヒトは誰でも得しようと考えて行動するため、システムに穴があれば、必ずその穴を利用しようとする人が現れます。グリッチマンです。

グリッチマンには大きく2タイプがあります。

  • ほぼ誰の役にも立っていないタイプ
  • なにかしら貢献してはいるものの、貢献度のわりに稼ぎすぎているタイプ

ほぼ誰の役にも立っていないタイプでは、転売ヤーと呼ばれる悪質な転売が典型的。流通を邪魔してお金をかすめ取っているだけだからです。

なにかしら貢献はしているものの、貢献度のわりに稼ぎすぎているタイプで典型的なのは、産業革命期のイギリスの資本家です。最低賃金に関する法律がなかった当時は、労働者を非常に低い賃金で働かせたので、資本家は利益のほとんどを自分のものにしていました。

現代でも、入社時の枠が違うので同じ仕事をしても給与に差があるなど、似たようなことが起こっています。

また、日本の携帯電話料金においても、大手3社がグリッチマンだったといえます。独占禁止法があるものの、会社同士が談合しているのではなく「偶然同じくらいの値段になってしまった」という手段をとれば独占状態にできます。大手3社は互いに顔色を伺いながら、料金を高く設定していました。そのため海外に比べて日本の携帯料金は割高に。

日本政府はこの穴を問題視し、3社への携帯電話料金値下げの強い要求・販売店の強引な営業を禁止するルール作り・格安事業者に対する回線利用料の引き下げを行ったのです。

悪いのはグリッチマンではなく、穴があったシステム

人間の役割分担と分配の最適化のためには、多すぎる分配を得るグリッチマンは好ましくありません。しかしグリッチマン本人は利益のために最適な行動をとっているだけであり、人間性を責めても問題は解決しないでしょう。

悪いのは穴があったシステム。問題を解決するのに必要なことは、その穴を修正することなのです。

見方を変えれば、グリッチマンは国のシステムのデバッガー(システムの穴を見つける仕事)のような役割を果たしているといえるかもしれません。

まとめ

細かくルールを決めても、必ず穴はあり、グリッチマンが現れます。しかし必要なのはグリッチマンを責めることではなく、穴を修正すること。グリッチマンが見つけた穴を修正し、時代の変化に合わせてシステムのアップデートをすることが、国の役割であり、政府の仕事なのです。

ムギタロー氏の著書「東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった! 」では、日本を「100人が住む島」と想定して経済のしくみをシンプルにわかりやすく解説しています。経済ニュースが「わかる!」レベルになるだけでなく、経済に対する自分の意見が持てるまでにもなる本書を、ぜひ手に取ってみてください。


東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった! ムギタロー(著)、井上智洋、望月慎(監修)

東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!

ムギタロー(著)、井上智洋、望月慎(監修)
定価:1,400円(税込1,540円)
詳しくはこちら
金利? 国債? 為替? インフレ? 今まで経済ニュースを見てもチンプンカンプンだった人も、この一冊を読めば「わかる!」というレベルに達し、しかも「私はこう思う」という意見まで持てるようになることをお約束します。