美容室の店舗数は25万軒以上、美容師の数は約55万人にのぼります。リピーターを増やすには、技術力に加えてコミュニケーション力が欠かせません。リピート率の高い美容師になるための会話の極意を、書籍『2度目の会話が続きません』よりご紹介します。
お客様が必ず食いつく話題とは
最近は美容室での会話を不要と思う方もいて、「時代だな」と感じるばかりです。
でも全くコミュニケーションをとらないのでは、リピートにもなりにくく、お店を繁昌させることはできません。
そこでどんな人でも、あなたとのトークに引きこまれる秘訣をお話ししましょう。
まず話題ですが、「天気」や「芸能」ネタでは会話のための会話をしようとしていると、お客様に疑われ、余計に相手を無口にさせてしまう恐れがあります。
お客様は雑談が嫌なのではなく、美容師がしたいとも思っていない雑談を押し付けられるのが苦痛なのです。
そこで美容室ならではの自然な話題で、お客さまも進んで耳を傾けるようなお話を紹介しましょう。
「いい髪質ですね」「お手入れはしやすい方ですか? それともしにくい?」
「髪で困ることはありますか?」「梅雨の時期は髪がまとまりませんよね」
そうです! 自分の髪を話題にしてもらえたら誰だってお話をしたいでしょう。プロから直々に教えてもらえるのは、髪を切っている今しかありませんから。
これが歯医者なら歯の話、整体院なら体の話をすればいいということです。
そしてアドバイスはほどほどにして、お客さまが話す内容にていねいに相づちを打ちます。
「へーっ♪」「ほんとですか!」「それは素晴らしい」
さらに肯定的な言葉をつなげること。
「いいお習慣をお持ちですね」「なかなかできないことですよ」「よく頑張っていますね」
実は雑談の本当の目的は、相手に共感し、肯定して互いの距離を縮めることです。
すると、お客さまはあなたにどんどん心を開いて行きます。「美容室で話しかけられるのは苦手」と、コミュニケーションを拒んでいた人もあっという間にあなたとの会話に引きこまれて行きます。
こうなると「明日からお天気くずれるみたいですね」とか、「美味しい焼肉食べたいですね」といった雑談にも気軽に応じてくれるようになります。
お客さまとのトークは、まず髪の話からはじめてみましょう。
髪の話からお客様のプライベートに少し入らせてもらう
親しくない人のプライバシーに立ち入るのはタブーだと思う人も多いでしょう。でも、暮らしの中の小さなお話程度なら、話題にした方が距離も縮まります。
これも髪のお話からの延長なら、お客様も抵抗を感じません。
「朝、シャンプーするとなると早起きしないといけないでしょう。早起きはお得意?」
「髪がまとまらないと会社に行くのも嫌になりますよね。お仕事では人と会うことが多いのですか?」
「お酒の飲みすぎが続くと髪にもダメージ来るんですよ。お酒の席、多いですか?」
この程度なら嫌がる人はいないはず。実はほとんどの人はこういう話を聞いてくれる人を探しているものです。
ふだんはできない髪の毛からのトークなら、お客様も楽しんでくれるでしょう。
自分のプライベートも少し垣間見せる
接客の仕事ではなくても、自ら自分のプライベートを少し話してくれる人には誰でも親近感を持つものです。
自分でOKの部分はどんどんお話をしてみてください。
たとえば、「朝、シャンプーするとなると早起きしないといけないでしょう。早起きはお得意?」という話になったら、
「私のうちは子供が3才なので、子供が起きる前にシャンプーしないといけないから、朝5時ごろにお風呂に入るんですよ」とか、
「ダンナがお風呂入れてくれるので助かります」
などと、美容師さんも家族のことを少し話してみます。これだけで会話は広がって行きます。
オープンなお客様だと、そこから自分のことをどんどん話してくれて、いっぺんに仲良くなれることもあります。
ちなみに、話題を探ろうとしていきなり「お仕事は?」「趣味は?」と質問攻めにするのは、会話というより面接のようで逆効果になります。