結局ハチを捕まえられず、養蜂を諦めかけていたところ、文京区社会福祉協議会という団体から「一緒に養蜂をやりませんか?」という電話が。突然のパブリックな展開に、うろたえる孤独の飼育員。協議会では、一体どんな話し合いになるのだろうか。
前回までのあらすじ。 1、サンクチュアリ出版は、お世話になっている人たちに「自分たちの手で育てたハチの蜜」を贈りたいと考えた。 喜び勇んで社長に報告をしたところ、 飼育員 大丈夫、とはどういうことでしょうか? 社長 社会福祉協議会といえば、俺なんかはよく知っているが、大変な歴史があり、権威のある組織だ。 飼育員 それは困ります。どうすれば良いのでしょう? 社長 短パンはやめろ。 飼育員 わかりました。短パンではいきません。 社長 Tシャツもやめろ。 飼育員 短パンもダメ。Tシャツもダメ。それでは一体なにを着ていけば良いのでしょうか。 社長 最低でもスーツ。いや、相手が社会福祉協議会とくるなら、できれば最高をめざしてほしい。 飼育員 最高…ですか。社長にそこまで言わしめる、社会福祉協議会って、一体どんなところなんでしょうか。 社長 それは、とてもひと言では説明できん。 飼育員 ふた言では? 社長 ああ、もうそういう問題じゃない! … … 社会福祉協議会というところは、 文京区シビックセンター 私はふだんスーツを着ない。 どうしよう。 雨がしとしと降っている。 でもここで、逃げてはいけない。 以下は、会話を録音もしていないし、もう記憶も消えかかっているので、 どもー☆ 出迎えてくれたのは、 Hさん WEBの養蜂の記事見てますよ〜。ていうか飼育員さん、まだハチを飼育したことないんですよねwww (想像していたよりも、だいぶポップだ) 飼育員 あ、ありがとうございます。そうなんです、まだハチ見たことないです(*>_<*)ノ Hさん ドンマイです!(・ω<) ところで、社会福祉協議会って知ってました? 飼育員 い、いえ、よく知らなかったです(*>_<*)ノ Hさん ですよね〜(・ω<) 飼育員 は、はいなんとなく(*>_<*)ノ Hさん オッケーです!(・ω<) 飼育員 えーと、で、なぜ、文社協さんは、養蜂をやろうと思ったのでしょうか。 Hさん なんとなく。 飼育員 え? Hさん 冗談ですよー(・ω<) 飼育員 なるほど。それは立派なお考えですね。 Hさん どこか屋上を使わせていただけそうな場所を、インターネットで探していたんです。 飼育員 弊社が。 Hさん そう! まさに屋上で養蜂をしようとしている会社が、まさか文京区にあったなんて。めちゃラッキーでした☆ 飼育員 それは…ラッキーでしたか☆(*>_<*)ノ Hさん しかもなんと、まだハチがいない。育てようとしてるけど、まだ育てたことがない。完全なゼロ状態だというのも、わたしたちにとってはラッキーでした(・ω<) 飼育員 ラッキーでしたか(*>_<*)ノ Hさん ラッキー(・ω<) ハチの捕獲に失敗し、未だ「なんにもない状態」だからこそ、 世の中なにが、功を奏するかわからないものだ。 しかしHさん、ノリだけで言ってくれてる…? なんとなく、本決まり、でもないけど、 文京区社会福祉協議会✕サンクチュアリ出版 による養蜂プロジェクトを実現できるかも? 地域の参加メンバーと、養蜂の正しい知識を学びながら、 いんや。 不安点はまだいくつかある。 ・弊社のあの狭くて、とても美しいとは言えない屋上を見せたら、文社協の方々を失望させてしまわないだろうか。視察の結果、「他をあたってみます」ということにならないだろうか。 ・弊社の階段は「急」である。スタッフも数人、転げ落ちている。地域のご高齢の方が、万一転げ落ちてしまったら、どう責任をとれるだろうか。 ・飼育員が最終的にめざしているのは「ニホンミツバチ」の飼育である。 ちなみに 平日ゴールデンの全国放送である。 日本全国の屋上という屋上が、 飼育員 橋本圭右
2、考えるよりまずは行動だ。なんにもわからないけれど、とりあえず4月から巣箱を仕掛けてみた。
3、“捕まえられるタイミング”は1ヵ月ほどしかないと知った。
4、あっさり“捕まえられるタイミング”が過ぎた。
5、おしまい
6、かと思ったら、文京区の社会福祉協議会というところから連絡があって、「いっしょに養蜂をやらない?」というお申し出をいただいた。
社長は
「大丈夫か?」
と眉をひそめた。
そこへお前みたいな“昼間っからブラブラなにしてんだ?”感のある人間がたずねたところで、まったく相手にされないだろう。そもそも建物の中に入れてすらもらえないかもしれない。
怖いのは、お前のそういうところだよ! とにかく失礼がないようにな。
それほどまで畏れ多く、説明困難な組織なのだろうか。
※注 ここに社会福祉協議会はありません。
所有する唯一のスーツも、すっかりクリーニングに出し忘れており、ZOZOスーツの隣でしわっしわになっている。
最高ということは、礼服ということだろうか。礼服をビジネススーツということで押し通せるだろうか。
いや、さすがにやりすぎだろう。それくらい、私にだってわかる。
でもざんねんながら、衣類棚の中には、Tシャツとスーツの中間のものがない。
約束の当日までもじょもじょ考えた末、
しわしわのジャケットに、
いっしょうけんめいアイロンとファブリーズをかけて、
それでなんとかごまかすことにした。
いざ「社会福祉協議会」を前にしてみると、
社長の「最低でもスーツ」という言葉が、
やけに心に重くのしかかかってくる。
「社会福祉協議会」とはなんだろう。
“協議会”というからには、きっとなにかを話し合って決めるんだろう。
私は人との話し合いが苦手である。
できれば話し合いは避けたい。屋上にミツバチがきてくれたら、ミツバチを話し相手にしたいと思っていたくらいだ。
この入り口の先に屋上ミツバチの未来があるかもしれないのだから。
あくまでもこんなことを話したという「印象」にすぎない。
寝不足だったし、低気圧による頭痛もあった。
たぶん二日酔いの三日目でもあった。
これは不確かな記録だと、宣言しておく。
真夏のひまわりだろうか。
チアー感全開の女性Hさんだった。
文京区社会福祉協議会って、(省略すると)文社協っていって、(超訳すると)誰かに困ったことがあったときに、地域で助け合うことができる地域にしていくために、地域のつながりづくりをお手伝いしています。
わかりますか?
(超訳すると)地域のご高齢の方やお子さんたちいっしょに、「ミツバチを育てる」という課題に取り組むことによって、地域のつながりが密接になったり、心やカラダの健康につながると考えたからです。
しかし、そもそもなぜ、サンクチュアリ出版に連絡をくださったのでしょうか?
そしたら御社が。
地域の方たちとゼロからはじめられるメリットがある。
という疑いもなきにしもあらずだったのですが、
このあと、聖母のような微笑みをたたえた
上司のUさんも会話に加わり、
8割方、も言いすぎかもだけど、
確率としては半分以上くらい、
という話をしてくださいました。
きちんとした道具と設備をそろえ、
ハチを育て、ハチミツを採取し、
そのハチミツをいずれは文京区のブランドにしていきたいと、
…その目的はまさに飼育員と完全一致。
まさにねがったり、かなったり?
私は子どもの頃から、とらぬたぬきのなんとやらで、
まだ捕まえてもいないハチを売ることを考え、
手に入るかわからないものを当てにして計画を立てやすいと、
しょっちゅう注意を受けてきた歴史がある。
もし「セイヨウミツバチを飼おう」ということになったら、「ニホンミツバチ」の夢は絶たれてしまうのだろうか。
まあ、
もろもろ、
おいおい、
解決していけばいいか。
先日、<マツコの知らない世界>で、
「屋上ハチミツの世界」を紹介していた。
ミツバチたちの楽園になる日は近いだろう。