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「要領が悪い」は思い込みだった?効率よく仕事をこなすように改善できる仕事術を紹介

要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑
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仕事が終わらなくて残業の毎日だったり、目標が達成できなかったりすると、「自分は要領が悪いから仕事ができない」と落ち込んでしまう人も少なくありません。スマートに涼しい顔で仕事をこなし、さらに成果もあげている同僚をみると、自分には到底真似できないことだとあきらめていませんか?

しかし、要領が悪いというのは単なる思い込みです。要領の良し悪しは天性の才能ではありません。やり方を変えるだけで、誰でも要領よく、そして段取りよく仕事をこなすことができるようになります

この記事では、要領の悪さを改善する方法を、F太氏・小鳥遊氏の共著である『要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』からご紹介します。

要領が悪いと思い込んで仕事がうまくいかないと悩んでいる人に、ぜひ知ってもらいたい仕事術の数々。これを読めばストレスを減らして安心して会社に通えるようになるはずです。

この記事は書籍『 要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑 』の関連コラムです。

「要領が悪い」とは仕事がなかなか進まない状況にあること

仕事において「要領が悪い」とは、やり方や手際が悪く、仕事がなかなか進まない状況を表します。「要領」とは、物事の要点や、うまく処理する方法を表す言葉。毎日遅くまで働かないと仕事が終わらなかったり、無駄な作業に追われて自分の仕事がはかどらなかったりすると、自分は要領が悪いのではと感じる人もいるでしょう。

要領が悪いというイメージを周りの人から持たれてしまうと、仕事を任せてもらえなくなってしまう可能性もあります。これにより自分の居場所がないような感覚に襲われることがあるかもしれません。

一方で、要領よくスマートに仕事をこなしてしまう人がいるのも事実。元から優秀なのだから自分とは違うのだと、あきらめの気持ちになってしまいがちです。

しかし、要領の良さとは、もともと持っている才能ではありません。仕事のやり方、ノウハウを習得すれば、要領よく仕事をこなすことができるようになります。

仕事で要領が悪い人の原因とは?

要領が悪い人には、そう思い込んでしまう原因があります。その原因を取り除けば状況は変わっていくでしょう。ここでは、その原因について説明していきます。自分が当てはまるのはどれなのか、原因を取り除くにはどうすればいいのかをみていきましょう。

その仕事にまだ慣れていない

要領よく仕事を進められないのは、その仕事に慣れていないことが原因かもしれません。それまでは要領の悪さを感じたことはなかったのに、仕事になるとうまくいかないと悩んでいるなら、その仕事に慣れていないだけであることがほとんど。誰しも最初から完璧にできるはずがありません。

仕事にはもうずいぶん慣れていると感じていても、まだ成長途中であることも。個人差・仕事の難易度・環境にも影響されるので、どのくらいの期間かなどは一概には言えませんが、職種によっては数年かかる場合もあります。

経験やスキルを身につけている段階だと思って目の前の仕事に向かい合いましょう

また、要領の良し悪しは、周りの人の評価でも変わります。まだ慣れていないだけなのに、「要領が悪い」という評価を受けてしまったら、自分は要領が悪いのだと思い込んでしまうこともあります。繰り返しますが、要領の良し悪しは才能ではありません。

環境に不安を感じるようなら、いつ辞めてもいいのだという開き直りの気持ちも持っておくとよいでしょう。

要領の悪さの原因が「慣れ」にあるなら、目の前の仕事を確実にこなし、経験を積んでいくことで要領よく仕事ができる人になっていくはずです。

業務量が多すぎる

なかなか仕事が終わらず残業続きなのは、業務量が多すぎるからだという場合もあります。適度な業務量なら要領よくこなしているはず。つまり要領が悪いわけではないのです。

業務量が多いかどうかは、自分では把握しにくいかもしれません。まずは自分が抱えている仕事のボリュームを正確に把握することが大切。そうすれば無理だと思われる仕事を断ることができます。

多すぎる業務を抱えているのに、もっと要領をよくする努力をしても限界があります。
どんなに要領よく仕事をこなしても、それを上回る仕事量を抱えていては、業務時間内に仕事をすべて終わらせるのは無理でしょう。

その状態で「自分は要領が悪い」と思い込んでしまっては悪循環に陥ってしまいます。体力的にも精神的にも疲れていると、集中できずミスを招いてしまいがち。ミスをするとその対応に追われ、業務量が増えます。

するとさらに残業が増え、ストレスが溜まり、心身ともに疲弊してしまいます。

この場合、まずは上司に相談してみましょう。現状を報告し、解決策を考えてもらうことです。チームでの仕事なら、同僚や先輩に協力を求めるのも1つの方法です。

また、とくに優しい人に多いのが、「自分がやったほうがいいのでは」「手伝ってあげたほうがいいのでは」という、自分以外の仕事を優先してしまうこと。

やるべきタスクが多いのにも関わらず、頼まれた仕事を受けてしまったり、困っている人をつい助けてしまったり……。

しかし、自分の仕事に専念しなければならないときは、我慢して「やらない」という選択をしましょう。手伝うのは、自分の最優先タスクが完了してからでも遅くはないはずです。意志を強く持って、「やらない勇気」を持ってみましょう。

段取りが上手くできない

やるべき仕事がたくさんあるのに、どれから手をつけたらいいのかわからなくて仕事をスムーズに進められないことが原因の場合です。

仕事の全体像がつかめず、頭の中がごちゃごちゃ。次は何をすればいいのかを、いちいち考えながら仕事を進めるので時間がかかってしまいます。優先順位がなく段取りが悪いことで、仕事の進め方が行きあたりばったりになってしまうのです。

これは、やり方しだいで改善することができます。仕事の全体像を見て優先順位をつけ、今やるべきことを可視化することでスムーズに仕事を進められるようになるでしょう。

原因を細かく見ると、段取りがうまくできない、優先順位のつけ方がわからない、先送りするクセがある、集中力不足など、さまざまな要因が影響していることがわかります。要領が悪いと悩んでいる人には、コミュニケーションへの苦手意識やメンタルの状態も関係している場合も多いもの。自分は何が苦手なのかを把握できれば改善につながり、要領よく仕事をこなす自分になれる日も近いでしょう。

要領が悪いのはただの思い込み?やり方を変えることで改善できる

要領が悪いと思っているのは、ただの思い込み。前述のように、要領が悪い原因が経験不足や業務量の多さにある場合はもちろん、段取りの悪さも、やり方を変えるだけで改善できます。要領の良し悪しはもともと備わっている能力ではありません。やり方を知っているか、知らないかだけなのです。

ここからは、要領よく仕事をこなしていくための仕事術を基本からみていきます。

仕事術といっても、「実践すればすぐに営業成績が上がる」「大活躍して出世コースにのれる」とはいえません。要領が悪くて悩んでいる、会社に居場所がないような気がして行くのがつらいと感じている人が、ストレスを減らして安心して仕事が続けられるようになることを叶えられるくらいの仕事術です。

たくさんの仕事を前にして、どうしたらいいのか悩んでいるうちに時間だけ過ぎていく。わかってはいるのに、仕事を先送りしてしまう。無駄な作業ばかりに追われてしまう。そんな人が、自分もできるという自信を取り戻せるようになっていくでしょう。

要領の悪さを改善するための「手順書」基本の5ステップ

要領が悪いと思い込んでいる人にまず実践してもらいたいのが「手順書」をつくることです。これは、どんな仕事でも共通する基本の仕事術。ここでは、手順書の作り方を5つのステップに分けて説明していきます。

難しいことではありませんし、特別なスキルも必要ありません。そんなこと当たり前じゃないかと思う人もいるでしょう。しかし、いったん基本に戻って丁寧に仕事に向き合ってみると、新しい発見があるかもしれません。

1.タスクを書き出す

やらなければならないことに名前をつけて書き出してみましょう。頭の中に浮かんだ作業をそのままにしておくと、不安やストレスの原因となります。たくさんの「やるべきこと」が頭の中をぐるぐるしている状態では、どれから手をつけたらいいのかがわからなくて当然。それぞれの作業に名前をつけて書き出すだけでも安心感が生まれます。

たとえば、見積もりを送らなければならないのなら「〇〇商店へ見積書送付」、週末までに週報を提出しなければならないなら「部長へ週報提出」など、頭の中にやるべきことが浮かんだら、忘れないうちにすべて書き出します

自分が抱えているタスクを把握することで冷静に今の状況を判断できるようになるでしょう。

2.タスクの手順を書く

タスクを書き出したら、次はそのタスクを終わらせる手順を書き出します。手順は完璧でなくても良いので、完了させる流れをまずは自分なりに書いてみましょう。仕事の全体像が見えてくるはずです。

たとえば「プレゼン資料の作成・提出」というタスクなら以下のようになります。

  • 下書きを作成
  • 上司へチェック依頼
  • 上司からチェック結果返答
  • 同僚へデザインチェック依頼
  • 同僚からチェック結果返答
  • 上司へ提出

書き出した手順が正しいかどうかは、わからなくてもかまいません。違っていたら、そのときに書き直せばよいのです。

また、できるだけ細かく書き出すと段取りもよくなっていきます。作業を中断することになっても現状を把握しやすくなり、再開に時間がかからなくなるからです。

たとえば「会議資料を作成する」であれば、「会議資料を印刷する→印刷した資料をクリップで留める→部数を確認する→配布する」のように、細かすぎるかなと思うくらいにしてみましょう。

3.誰がやるのかを明確にする

次は、書き出した手順を誰がやるのかを明確にします。手順書を色分けしてみるとわかりやすいでしょう。

2で作成した「プレゼン資料の作成・提出」を例にすると、自分持ちの仕事は以下の4つ。

  • 下書きを作成
  • 上司へチェック依頼
  • 同僚へデザインチェック依頼
  • 上司へ提出

そして、他人持ちの仕事は以下の2つになります。

  • 上司からチェック結果返答
  • 同僚からチェック結果返答

仕事はひとりでこなすのではなく、いろいろな人にパスしながら進めていくものです。抱えきれないほどのタスクがあると思っていたけれど、書き出してみたら他人が進める段階のものがほとんどだったということも。誰がやるのかを区別してみると、自分のやるべきことがはっきりしてきます

4.仮の締め切りを設定する

やるべきことが明確になってきたら、締切を入れていきましょう。タスク全体の締切だけではなく、手順一つ一つにも締切を入れます。面倒かもしれませんが、これを丁寧にやることで、締切を守れる自分に近づけるのです。手順書に締切を記入する欄を設けておくと、空白を埋めたくなる人間の心理が働くので締切日を設定しやすくなるかもしれません。

締切の日付や時間は自分なりの感覚で入れておき、仕事を進めながら修正していくとよいでしょう。3でできるだけ細かく分解した手順に締切を設定し、その締切が可能かどうかを確認。これを繰り返していくとスケジュール感も身についていきます。

そのタスクを完了するのにどのくらいかかるのかということも見極められるようになります。スケジュールの見積もりが甘いと感じている人は、この練習を繰り返していきましょう。

5.最初の手順だけを見る

すべての手順を書き出したら、それぞれのタスクの最初の手順だけが見える状態にします。すると、たくさんあった手順から、「今、まずやるべきこと」がはっきりと浮かび上がってきます。

仕事に取りかかるとき、全部の手順が見えてしまうと、混乱したりやるべきことの多さがプレッシャーになってしまったりすることも。最初の手順だけを見ることが重要なので、メモや付箋に書き出したり、パソコンに表示させたりするとよいでしょう。

これで手順書が完成しました。さっそく仕事に取り掛かりましょう。

仕事がうまく進まないと感じたら、手順書を書くことを思い出してください。全ての基本は手順書です。修正を加えていけば、さらに完璧な手順書に近づいていくでしょう。

「要領が悪い」を改善するための仕事術10選

ここからは、悩み別の対処法を説明していきます。自分に当てはまるものがあるなら、そこを改善することで要領のよい自分に近づいていけます。

効率よく段取りを組んでいくために手順書を整える

作成した手順書で仕事を進めていっても、思うように進まないとときはあります。そんなときは、自分の能力が不足しているのではなく、手順書が未完成だからだと考えましょう。手順書があれば、どこがいけなかったのかを冷静に考えられます

手順書は自分を動かすプログラムのようなもの。自分は手順書通りに淡々と作業を進めていくだけです。仕事が思うように進まないなら、手順に問題があるはず。その問題を見つけて修正していきましょう

何度もやったことのあるはずの仕事でも段取りよくできないときは、手順書を見ながら「繰り返し」を意識して作業を進めてみるとよいでしょう。
繰り返し行うことで脳が仕事に慣れていきます。場当たり的に動くと、脳が同じ行動を繰り返していることに気づかず、なかなか慣れてくれません。手順書通りに作業を進めていると、同じ行動を繰り返していると脳が気づき、抜け漏れのないスムーズな作業ができるようになります。

また、手順書が整ってくると、上司などに「あの件どうなった?」と進捗を聞かれたとしても手順書を見るだけで即答できます。過去メールの検索や山積みになった書類を引っかき回す必要はありません。

余裕のあるスケジューリングなら「割り込みタスク」に対応できる

仕事では、急な「割り込みタスク」にも対応する必要がでてきます。このとき、スケジュールに余裕を持たせておくとパニックにならずにすみます。生真面目な人ほど予定を詰め込んでしまいがち。しかし、予定はスカスカにしておくことが落ち着いて仕事に取り組メールようになるポイントです。

仕事にかかる時間は、思い浮かんだ時間の2倍くらいに設定しておいてもよいでしょう。ちょっとヒマかな?と思うくらいがちょうどいいのです。

予定していた仕事をこなすことができないと、人より要領が悪いのではないかと自分をせめてしまいがちです。しかし、それは時間の想定が現実と違っていただけ。要領が悪いのではありません。

会議や来客対応など、誰かとの約束で時間が決まっているものを最初にスケジュールに組み込むと思います。そうしたら、それ以外の残り時間をよく見てみましょう。思っているほど時間が少ないことに気づくのではないでしょうか。
スケージュールの延長や割り込みタスクなども考えると、自分の仕事に取り組める時間はさらに少なくなります。本当に自分が使える時間を把握することが大切です。

自分のものさしを決めて優先順位を正しくつける

優先順位を考えて仕事をするのは大切なことだとわかってはいても、そもそも優先順位のつけ方がわからない人もいるのではないでしょうか。

実は優先順値をつける能力は誰にでも備わっています。ただ、無意識で選んでいるので、自分がどのようなものさしで優先順位を決めているのかを理解していないことがほとんどです。

たとえば、「怒られないように」というものさしで優先順位をつけていると、本当はやるべきことがあるのに、怒られることを回避するために上司から言われた仕事に先に取り組んでしまいます。取引先からクレームが来たら、取引先の人に怒られるのを回避するためにクレーム対応を優先。

自分では意識していないので優先順位をつけているとは感じませんが、仕事の優先順位はコロコロ変わっているように見えます。

優先順位をつけるものさしで一番シンプルなのは「偉い人順」にすること。せっかちな人や苦手な怖い人から頼まれると衝動的にそちらを優先してしまいがちですが、そこで惑わされないようにすることが大切です。

偉い人順という明確な順番がわかっていれば、誰かに仕事をお願いされても「社長の仕事が終わったら取りかかります」と伝えることができるのです。これだと相手にも納得してもらいやすいでしょう。

大切なのは、どんなものさしで判断しているのかではなく、自分のものさしを理解すること。自分の中で優先順位を決めるルールを持ち、それに従って仕事の順番を決めていくことが重要です。これを繰り返すことで優先順位を正しくつけられるようになります。そして、手順書を見ながら今やるべきことを決めていきましょう。

仕事を早くするにはマルチタスクではなく1つの作業に専念する

仕事が早い人は多くの仕事を一度にこなしているように見えるのではないでしょうか。しかし、実際は1つの作業に専念しています。

いくつかの仕事を同時にやろうとすると、脳がいろいろなことを一度に考えなければならなくなるため、集中できずに効率が落ちます。脳は一度に1つのタスクにしか集中できません。マルチタスクができているように見えるのは、すばやくタスクを切り替えているだけ。この切り替えの際、どこまで進んだのかを思い出すという無駄な時間が発生。すると効率が悪くなっていくのです。

仕事をしているとタスクが同時進行してしまう場合もありますが、そのときも優先順位をつけて1つずつ取り組みましょう。仕事の早い人はマルチタスクを諦めた人。1つの作業に集中したほうが脳が効率よく働き、仕事の質も上がります。

仕事が早く終わらせられる人になりたいからといって、マルチタスクを目指さないようにしましょう。

イメージできない資料作成は頼まれたその場でインタビューする

「資料を作っておいて」と頼まれたものの、イメージがまったくできないまま時間だけが過ぎてしまったことはないでしょうか。後から質問をしようと思っても、「今忙しそうだから」「この仕事が終わってから」「今さら質問して怒られないかな」などと、つい先送りしてしまいがちです。

これを避けるには、頼まれたらその場でインタビューをして自分の中にイメージを作っておくことです。

タイトル・テーマ・内容をおおまかに相手の目の前で書き、インタビューをしながら資料の大枠を決めてしまいます。こうしておけば後から悩まずに済み、検討はずれの資料を作成することもなくなるでしょう。

こんなことを聞いたら、そんなこともわからないのかと怒られるのではと心配になるかもしれません。しかし、大切なのは「怒られないように」「嫌われないように」と相手の顔色を伺うのではなく、仕事を終わらせることに集中すること
仕事を終わらせれば結果がついてきます。結果が積み重なると自信になります。すると、誰かの顔色を伺うこともなくなっていくでしょう。

資料作成といっても簡単な作業ではありません。わからなくて悩んでしまうのも当然です。また、依頼主も考えがまとまってない場合すらあります。1人で抱え込まないことです。

慣れた作業にすることで仕事の先送りをなくす

取りかかってしまえば数分で終わるようなタスク。やらなければならないとわかっていても、つい先送りしてしまって取りかかれない。そんな経験はないでしょうか。

これを回避するためには、仕事を身体に覚えさせて慣れさせるとよいでしょう。人は、「身体がやり方を覚えていること」から先にやりたくなる性質があるからです。慣れた作業をする方が楽で簡単だと思うのです。

たとえば、領収書の整理を先送りしてしまい、ためこんでしまったとします。やらなくてはならないと思いながらも、別の慣れた仕事を先にこなしてしまいます。領収書の整理という慣れない作業に体が拒否反応を起こしている状態です。

そこで、領収書の整理を慣れた仕事にするために、毎日5分だけ領収書を整理していきます。すると、その作業を体が覚えるので、毎日取り組むことが楽になっていきます。毎日取り組めているので、「やらなくちゃ」というモヤモヤからも解放されるのです。

ここで重要なのは、すべて終わらせる必要はないということ。取り組み時間は5分なので、ためこんだ領収書をすべて整理し終えたわけではありません。しかし、確実に整理が進んでいるという実感を得られます。終わらせることよりも、始めることが大切。少しでも進んだらそれでよしとしましょう。

領収書の清算とは違う、1回きりの小さなタスクも侮れません。つい先送りしてしまい、いつの間にか忘れてしまったなんてことも。たとえば、交通費の精算など少額だとつい後回しにしてしまいがち。このような小さな仕事は、大きな仕事の手順に付け足しておくと忘れずに取り組むことができるでしょう。飲食店にあるようなセットメニューのイメージです。

交通費の精算なら、行き先のセミナー参加というタスクに追加する。会議室の予約なら会議のタスクとセットにする。手順書をみれば、まだやることが残っていると一目でわかります。

さらに小さな、書き出すまでもない仕事は2分以内に瞬殺してしまうのが鉄則。たとえば「電話の伝言メモを上司の机の上に置いてくる」など、すぐに終わる仕事はすぐに終わらせてしまいましょう。仕事の早い人は数秒でやっつけているでしょう。いつかやろう、の「いつか」は永遠にやってきません。

ミスを回避する仕掛けを用意しておく

ミスをしようと思ってしている人はいないと思いますが、しないように気をつけていてもしてしまうのがミス。忘れ物やちょっとしたミスなど、同じ失敗を繰り返してしまうと落ち込んでしまいます。気をつけているはずなのに、なぜミスしてしまうのか。それは、「ミスをしないように気をつけているから」です。

ミスをしないように気をつけている間はミスは減ります。しかし、ずっと気をつけているのは精神的に疲れますし、ミスしないように意識しすぎてビクビクしてしまうこともあるでしょう。

それならば、ミスを回避できるように環境を整えていけばよいのです。

ミスをしてしまったら、落ち込む前に手順書にそのミスを防ぐ手順を追加することを習慣にしましょう。すると、ミスが起きない精度の高い手順書が出来上がっていきます

物忘れが多いなら、デメモ帳やデジタル機器も活用しましょう。視力の弱い人がメガネで視力を補強するのと同じ発想です。頭で記憶しないと割り切ってしまいましょう。タイプミスが多いなら、パソコンの辞書登録機能を利用するのも有効です。このとき、登録は少しずつするのが無理なくできておすすめです。

忘れ物をなくすにはモノを決まった場所に置く習慣をつける

忘れ物をしてしまうと、取りに戻って余分な時間がかかるため遅刻にもつながりがち。無駄な時間を使わないためにも忘れ物はなくしておきたいですね。

しかし、気をつけているつもりなのに、うっかり忘れ物をしてしまうという人は、決まった場所に決まったモノを置く習慣をつけるようにしましょう。出かけるときに必要なアイテムは同じ場所に置いておくと忘れることが少なくなります。いつもどこにあるか探してしまうようなものも同様に同じ場所に置くようにするとよいでしょう。

「次は気をつけよう」と思うだけでは、なかなかうまくいかないもの。「出かける前の手順書」をつくっておくことも有効です。忘れ物をするたびに項目を増やしていけば完璧な手順書ができあがるでしょう。忘れ物をしないようにと頑張らなくても大丈夫になります。

また、忘れ物をしてしまった自分を否定しないことも大切。対策をすればいいだけのことですから、無駄に自己肯定感を下げないように笑い飛ばしてしまいましょう。

仕事の全体像を把握すれば集中できる

仕事に集中したいなら、仕事の全体像を把握し、その仕事にあったシチュエーションを整えることが大切。

まず、仕事の全体像を把握して仕事をコントロールできるようにすることがポイント。人は知らないことや、わからないことに対して不安を抱くので、それが集中できない原因になってしまうこともあります。手順書をつくり、以下の3つを明確にしてみましょう。

  1. どんな仕事がどれだけあるか
  2. 今、具体的に何をすべきか
  3. 自分が止めている仕事はどれか

これにより仕事が自分の支配下に収まっていると感じられるので、集中できるようになります。ただ、仕事に取り組むときは、今取り組むべき手順のみに集中しましょう。全体像を意識しすぎて先の手順を気にしてしまうと集中しにくくなってしまいます。

そして、場所と時間も選びましょう。じっくり考える仕事は朝や午前中に静かな場所、単純作業は午後で環境はにぎやかなところ、などその仕事にあったシチュエーションを選んでみます。

シチュエーションについては人によって異なります。一般的には朝が集中しやすいといわれていますが、朝はぼーっとしてしまう人や、夕方になると頭が冴えてくる人もいるのではないでしょうか。

自分が集中できている時間を知るには、記録をつけてみるとよいでしょう。集中できていると感じたら、時間帯・場所・やっていた作業・気分を記録しておきます。集中力のバイオリズムを知り、それにあわせて仕事の種類や順番を変えると集中して仕事に取り組めるようになるでしょう。

一方で「過集中」という状態になってしまう人もいます。集中するあまり、寝食さえ忘れてしまうほど集中してしまうのです。集中できずに悩んでいる人から見たらうらやましい状態かもしれませんが、過集中になると大きな疲労を感じ、体調を崩すことにもなりかねません。

過集中を自分でコントロールするのは難しいので、過集中の傾向がある人は強制的に集中を断ち切る仕組みが必要になります。対策としては、以下の3つがあります。

  • 第三者に断ち切ってもらう
  • ポモドーロテクニックを使う
  • 手順書を細かく分ける

・第三者に断ち切ってもらう
断ち切ってくれる人が近くにいる場合は、お願いして手を止めるタイミングを作ってもらいましょう。

・ポモドーロテクニックを使う
ポモドーロテクニックとは、25分集中・5分休憩を繰り返す手法のこと。タイマーやアラームをセットして、強制的に集中を中断させます。生産性アップも期待できる方法です。

・手順書を細かく分ける
手順書の手順を、15分で終わるくらいの細かい手順に分けておきます。手順が終わると区切りができて手を止めるので、過集中を防ぐのに効果があります。

過集中の傾向がある人は、まだいけると思っても一度休憩を取ることをおすすめします。身体は思っているより疲弊しているかもしれません。

デスク周りを片付けるためにまず頭の中の整理をしてみる

勤務中の探し物に費やす時間は年間で150時間だといわれています。デスク周りが綺麗に片付いていると探し物が少なくなり、探すという無駄な時間を省くことができます。つまり、作業効率が上がることにもつながるのです。

デスク周りは頭の中の状態を表しているともいわれます。手順書を作り始めて頭の中が整理できると、自然と片付き始めることがあるかもしれません。必要なものと不要なものがわかるので、どこに何を置けばいいか、しまえばいいのかがわかってくるからです。

デスク周りがごちゃごちゃしてきたら、頭の中もごちゃごちゃしてきている可能性があります。手順書を整えて頭の中をスッキリさせていきましょう。

とはいえ整理整頓が苦手な人もいると思います。片付けようと思ってはいるものの、つい後回しにしてしまいがち。しまう場所はあとで考えようと資料をそのまま置いておくと、いつの間にか積み重なって大変なことに。

思い切って一気に片付けたとしても、必ずと言っていいほどリバウンドして、もとの散らかった状態に戻ってしまうことがほとんどでしょう。頑張って片付けたのだから、しばらく片付けをしなくてもいいと考えてしまうからです。これは心理学的用語でモラル・ライセンシングといいます。

そこで、あえて1日に1つだけ片付ける、5分だけ片付けるようにします。もう少し片付けられると思っても、その日はそれで終わり。すると翌日、もう少しやりたくなってしまうのです。
また、少しでも片付けをしていれば、片付けなくてはという焦りも少なくなります。片付けていないのではなく、片付けの途中だということになるからです。

片付けが苦手な人は、捨てるのも苦手な人が多い傾向があります。捨てることができないなら、捨てるかどうかの判断基準を作るとよいでしょう。

たとえば、以下のような順で判断します。

  1. 現在進行中の仕事に関連しなければ捨てる
  2. 同じものが社内にあれば捨てる
  3. データならフォルダなどに保管、紙はデータ化した後シュレッダー
  4. 可能なものは社内用用キャビネット等に保管

基本姿勢は、どこにしまうかではなく、どうやったら捨てられるかを考えること。判断基準があれば、悩んだり、罪悪感を感じたりすることなく機械的に捨てられるようになります。

また「いつか使うかも」と思うものは捨てても大丈夫であることがほとんど。その「いつか」は、ほぼやってきません。

仕事でのコミュニケーションを円滑にする工夫3選

コミュニケーションを苦手に感じる人も少なくないようですが、仕事ではたくさんの人と関わらなければならないので、コミュニケーションを避けては通れません。ここでは、円滑に仕事を進めるためのコミュニケーションの方法を説明していきます。

あいまいな言葉を使わない

あいまいな言葉はトラブルのもとになります。自分が使わないように気を付けるのはもちろんのこと、相手からあいまいな言葉を言われたら、具体的にどういうことなのかをその場で確認しましょう。

親子でも夫婦でも、言葉にして言わなければ伝わりません。「言わなくてもわかる」ことはないのです。まして仕事では具体化することが重要。

  • 「なるべく早く」とはいつまで?
  • 「ざっくり」とはどの程度?
  • 「多めに」とは数値で言うと?
  • 「いい感じにまとめる」とは?

面倒だと思われたとしても、具体的な表現に置き換えて確認することが円滑なコミュニケーションにつながります。

こそあど言葉といわれる「これ」「それ」「あれ」「どれ」などの指示語も注意が必要です。自分と相手の指す「あれ」が同じものだとは限らないからです。具体的な言葉で相手に確認するようにしましょう。

  • 「これ、よろしくね」→「資料の確認ですね。わかりました」
  • 「それ、なくなったよ」→「明日の会議はなしですね」

このように、さりげなく確認することで話の行き違いが防げます。手順書をつくっていると、あいまいな表現では手順が作成できないので、これらのミスは防ぎやすいかもしれませんね。

電話対応では相手の言いたいことを正確に聞き取ることに集中する

メールやチャットなど文字でのコミュニケーションが増えている今、電話が苦手に感じる人も多いのではないでしょうか。
いつ、どんな人から、どんな要件でかかってくるかわからない電話は、心の準備ができないまま会話をしなければならないので不安を感じやすいのかもしれません。仕事に慣れていないうちは、何のことを言われているのかさっぱりわからず、どう答えていいのか見当もつかないと感じるのも当然です。

電話対応をするときに使える台本をあらかじめ用意しておくと、聞き忘れや言葉遣いの間違いも防げます。敬語の使い方を指摘されることがあるかもしれませんが、次第に慣れていくものなので、それほど気にしすぎる必要はありません。

慣れないうちは、まず聞き取ることに集中するとよいでしょう。正確に聞きとることができれば9割は完了です。相手の要求に無理に答えようとしなくても大丈夫。それよりも相手の言いたいことが把握することが大切です。そして、相手の名前や折り返しの電話番号を必ず聞いておきましょう。何かモレがあっても掛け直すことができるからです。

電話の内容がクレームだったとしても、相手が落ち着くまでひたすら話を聞きましょう。相手の言い分が間違っていると感じても、それを指摘してはいけません。相手が落ち着くのを待ちましょう。このとき、反論と責任逃れだけはしないように注意します。

クレーム対応は誰でもメンタルが削られてしまいます。対応が終わったら、頑張った自分をいたわってあげましょう。

職場でのコミュニケーションは仕事をこなしたうえで考える

職場でもコミュニケーションは大切です。しかし、仕事では気の合う人ばかりがいるわけではないですし、苦手な人ともうまくやっていかなければなりません。友人などとは違い適度な距離感も必要なので難しいと感じている人もいるでしょう。

ビジネスにおいては、まず仕事を確実にこなすことが大切。仕事ができているなら多少のコミュニケーション不足はカバーできることもあるでしょう。もし苦手だと感じるなら、無理に仲良くしようとしなくても、笑顔で「ありがとう」が言えているなら十分ではないでしょうか。

ただ、職場の同僚ともう少し距離を縮めたいと思うなら、仕事の進捗状況を共有するとよいでしょう。コミュニケーション能力に不安があっても、仕事のことなら話しやすいはず。お互いに相手の仕事の状況を知っているだけで一体感が生まれます。特別な面白い話をしなくとも、これだけで関係性は違ってくるはずです。

仕事をしているとちょっとした時間に「雑談」をする場面があるかもしれません。気楽にとりとめのない話をするのが雑談ですが、コミュニケーションが苦手な人にとっては、目的もなく会話を続けることが難しすぎて緊張してしまうのではないでしょうか。

基本的に、仕事をきちんとこなしている、笑顔で挨拶ができているのなら、無理に雑談に参加する必要はないかもしれません。どうしても雑談しなくてはならない場面に遭遇したら、「教えてもらう」ことを目的としてみましょう。

「おすすめの〇〇はなんですか?」と切り出します。〇〇には、本でもランチでもラーメン屋でも何でもかまいません。すると、相手が話したいことをしゃべってくれるので、何を話せばいいのかと悩むことがなくなります。

最後は、教えてもらったことに「ありがとう」と感謝を伝えるのも忘れずに。雑談が苦手な人は、聞き役に徹することをおすすめします。

メンタルに辛さを感じやすい人に知ってほしい仕事術3選

メンタルが傷つきやすいのは優しい人である証拠です。ここでは、気持ちが落ち込んでしまったとき、回復するために効果的な方法をご紹介します。

思うような結果が出なくても自分を褒めてあげよう

どんなに仕事を頑張っていたとしても、目標に到達できないと落ち込んでしまうもの。そんなときは、会社の評価からいったん離れ、自分で自分を評価してあげましょう。

このとき、他人との比較ではなく、昨日の自分と比較することがポイント。どんな小さなことでもいいので、自分をほめてみましょう。

「いつもより笑顔で挨拶ができた」「電話対応がスムーズにできた」「苦手な人と笑顔で話せた」など、どんな小さなことでもかまいません。口に出して言ったり、紙に書き出したりしてみましょう。

書き出したものは「ほめ記録」として取っておくと自信につながります。等身大の自分を認めてあげることで、気持ちの落ち込みを抑えることができるようになるでしょう。

サードプレイスを持つことで気にならなくなる

会社と自宅以外のサードプレイス(第三の居場所)を持っていますか? 会社でうまく馴染めなくて落ち込むことがあっても、サードプレイス(第三の場所)という別の居場所があれば乗り切れます。

サードプレイスは、趣味のサークル・習い事・SNSのつながりなど、自分が居心地がいいと感じる場所ならなんでもかまいません。義務ではなく、自分の心が行きたいと思える場所であればよいのです。

ファーストプレイス(第一の居場所)は自宅。睡眠・食事・入浴などを行うプライベートな空間です。セカンドプレイス(第二の場所)は会社や学校。疲れやストレスが溜まりやすい空間だとされています。ファーストプレイスとセカンドプレイスがあれば、生活をしていくことは可能です。しかし、サードプレイスがあれば、心からリラックスできたり、新たな価値観に触れてリフレッシュしたりすることができるのです。

職場で馴染めなくて、なんとなく話の輪に入れていないような気がして、自分だけが蚊帳の外なのではないかと感じてしまったとしても、サードプレイスという居場所があれば、蚊帳の中のことが気にならなくなっていきます

周りの人の目が気になってしまうタイプの人は、気苦労が多くなりがちです。ちょっとしたことで「怒らせたのではないか」「嫌われてしまったのではないか」と気になってしまいます。

そういうときは仕事に集中することを心がけましょう。相手にどう思われているかではなく、仕事を終わらせることにフォーカスします。仕事を終わらせるという結果を積み重ねていけば自信もつきます。すると、他人の目が気にならなくなっていくのです。

ただ、明らかにハラスメントのようなひどい状況の場合は、我慢せずに信頼できる人に相談したり、会社に対応を求めたりしましょう。

不調のサインを知って体の声を聞き逃さないようにする

仕事で失敗して落ち込んでしまったり、上司や同僚の何気ない一言に傷ついてしまったりすることもあるのではないでしょうか。どうしてこんなことで落ち込んでしまうのだろうと思ってしまい、さらに落ち込む結果に。

しかし、悩みに大小はありません。他の誰かにとっては「小さなこと」であっても、自分が落ち込んでしまうのなら、その悩みはじっくりと時間をかけて取り組むべき価値のある悩みなのです。

心であれ体であれ、傷を治すためには時間が必要です。心身の調子が良くないなと感じたら、たっぷり眠ることが最も大切

しかし、心身ともに傷ついて疲れているのにそれを自覚できないこともあります。身体から不調のサインがでているはずなのに気づいてあげられないと、取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。

とくに忙しいときなどは、なかなか自分の身体の不調に気づきにくいもの。自分の身体が発する不調のサインを知り、日頃からそのサインをキャッチできるようにしておきましょう。甘いものが欲しくなったり、目の充血やかゆみ・痛みなど身体に異常が発生していたり、眠れなくなったりなど、サインの現れ方は人それぞれ。不調のサインをリストにまとめておいてもよいですね。

きちんと気づいてあげることで、心身の不調の回復につながっていきます。

まとめ

要領が悪いのは単なる思い込みに過ぎません。やり方を変えるだけで改善につなげられます。考えてみれば、仕事の取り組み方を教えてもらう機会はあまりないのではないでしょうか。ここで紹介した手順書は手間がかかりますが、代わりに全体像をとらえて仕事を効率よく進められる自分にしてくれるでしょう。

F太氏・小鳥遊氏の共著『要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』では、要領が悪くて悩んでいる人が、安心して仕事に取り組めるようになる方法を具体例とともに紹介しています。1つの項目はどれも1〜2ページで完結しており、イラストや図解も豊富で理解しやすくなっています。1つずつ実践していくのはもちろんのこと、本書を手元に置いて、悩んだときや気が向いたときにページを開いてみるのもおすすめです。


要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑 F太、小鳥遊(共著)

要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑

F太、小鳥遊(共著)
定価:1,400円(税込1,540円)
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当たり前に仕事をして毎日を平穏に過ごせる。
「自分はここにいていいんだ」と安心できる。
こんな「普通」ができるようになる方法を紹介する本です。