深刻化する格差問題。格差是正制度を機能させるには、どうしたらいいのでしょうか。
この記事では、格差を広げない持続的な経済システムについて、経済の仕組みが超シンプルに理解できる「東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった! 」よりご紹介します。ぜひ最後まで読んで、格差のない社会を目指すための仕組みを知っておきましょう。
目次
経済格差はシステムによるもの
深刻化していく格差について説明していきます。
広がる格差
格差問題はどんどん深刻化しています。しかし、富を有することは「国家に許されている」レベルのもの。格差が広がり続けるのは、現状のシステムではそうなってしまっているだけのことです。
大富豪一族がずっとお金持ちでい続けられるのは、格差是正制度が機能していないから。穴だらけなのです。
たとえば、1兆円を銀行に預ければ、年利が0.01%でも年収は1億円ですし、遺産相続の格差是正制度もゆるいままです。
格差が拡大していくという状況は持続不可能。不平等が広がり続ければ、社会を壊さなければならなくなるでしょう。
そうならないためにも、持続可能な状態を達成できる仕組みを考えることが大切です。
資本主義と社会主義のどちらを選ぶか
資本主義と社会主義のどちらがいいのかという選択は、テレビの音量は0と100のどちらがいいかというような極端すぎるものです。二元論では対立構造になってしまい、正しい議論ができません。
冷戦時代は「社会主義国vs資本主義国」という対立構造でした。私たちは資本主義側だったため、「社会主義はやばい思想」というイメージを持つ人が少なくないようです。しかし、社会主義自体は、ただの考え方のひとつ。そんなに恐ろしいものではありません。
とはいえ、社会主義に偏りすぎると文明が発展しなくなり、資本主義に偏りすぎると格差が拡大します。「ではどちらがいいのか」となりがちですが、どちらかを選択する必要はなく、ちょうど良いところを探せばいいだけです。そのちょうど良いところが「持続可能な経済システム」ということ。
資本主義と社会主義という枠組みからはずれた、新しい国家のしくみが誕生する可能性もあります。それが持続可能で、人類が幸せにいきていけるのなら、なんでもいいのです。
持続可能な経済システムとは
ここでは、持続可能な経済システムについてみていきましょう。
持続可能な経済システムとは?
持続可能な経済システムとは、どんな条件がそろえば達成できるのでしょうか。
簡単にまとめたものが、以下の4つです。
- 復元力のある貨幣システム
- 復元力のある政治システム
- 復元力のある国家システム
- 復元力のある国際システム
「復元力」とは、元の場所に戻ろうとする力のこと。そして、この4つは①さえ達成できていればいいのですが、①を達成するためには②が必要で、②を維持するためには③が必要で、③を維持するには④が必要です。
次から詳しくみていきましょう。
1.復元力のある貨幣システム
持続可能なお金のルールのことです。法律・税制度・政策などをさします。必要なのは、「平均からずれたら、中流層に戻る力が働くルール」。富裕層になっても平均以上の貢献をし続けなければ中流層に戻り、貧困層になっても平均的な貢献さえしていれば中流層に戻る力が働くものです。
方法としては、累進課税・最低賃金の引き上げ・大学無償化・給付金・ベーシックインカムなどがあります。
2.復元力のある政治システム
政治システムも重要です。良い価格是正政策も、実行されなければ意味がないからです。
政治への関心が低い今の日本では、良い政治家を選定する選挙の機能が働いていない部分があります。
身勝手な政治家が自然と排除され、市民に優しい政治家が増えていくような復元力のある政治システムを作る必要があるでしょう。
3.復元力のある国家システム
政治制度よりも上の概念である国家も持続可能であることが重要です。国家システム(憲法などの仕組み)がもろいと、悪い状況になってしまうからです。
第二次世界大戦前の日本で起きた「統帥権干犯問題」は、憲法が不十分だったことが原因で起こりました。統帥権に関するルールが曖昧だったため、軍の強硬派が政府を無視して暴走し、政党政治が弱体化したのです。
当時の憲法がちゃんとしていたら、太平洋戦争は起きなかったかもしれません。
また、ロシアがウクライナに侵攻しましたが、プーチン大統領を止めたくても、ロシアの現行の国家の仕組みでは止められませんでした。
国を持続可能にするには、ヤバイ人が現れても簡単に仕組みを変えられないようになっていて、内閣不信任決議などヤバイ人を周囲が排除できるような制度が整っていることが必要。しかし、必要な時には政治制度や税制度などの抜本的な改革ができるように、バランスが大切です。
4.復元力のある国際システム
国家間のルールも重要です。日本が持続可能な国家になっても、他国の影響で持続不可能になっては意味がないからです。
いま現在、国際法には「罰則」が存在しません。ロシアがウクライナに戦争を仕掛けても、各国は遺憾の意の表明や経済制裁をするだけです。
また、パナマ文書で有名な「タックスヘイブン」という事件がありました。国際的なルールの穴をつき、海外に資産を隠していた人たちがいたのです。
これは、国家間の人の移動が自由になったにもかかわらず、国際ルールが決められていないことによるバグです。
各国の法律ではこういったバグを制限しきれません。そこで持続可能な国際ルールである国家間のシステムが必要になってくるのです。
まとめ
格差が拡大していくという状況は持続不可能。わたしたちは、持続可能な状態を達成できる仕組みを考えることが大切です。
ムギタロー氏の著書「東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった! 」では、日本を「100人が住む島」と想定して経済のしくみを解説。経済ニュースが「わかる!」レベルになるだけでなく、経済に対する自分の意見が持てるまでにもなります。ぜひ本書を手に取って経済の知識を身につけてみましょう。