―もしも、日本が100人の島だったら?―
そんな設定で経済をわかりやすく解説した本、『東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!』から、内容を一部抜粋してご紹介します。
今回のテーマは「値段の決まり方」です。モノ・サービスの値段が決まる考え方について、100人の島で置き換えて解説していきます。
目次
売り手と買い手がいること
モノの値段の決まり方を知るために、100人の島にあるリンゴを例に考えてみます。
100人の島には、「リンゴを欲しい」と思っている人が15人いるとします。この15人全員が、「リンゴを100エンで買いたい」と思っているわけではありません。人によっては、「200エンなら買いたい」「50エンなら買いたい」「そもそも、リンゴは買いたくない」と思うでしょう。同じようにリンゴが欲しいと思っていても、「リンゴ1個、〇〇エンなら買ってもいいかな」という買い手の価格感覚はそれぞれです。
一方で、リンゴを売りたいと思っている人も15人いるとします。この場合も、人によっては「50エンでも売りたい」と思う人もいれば、「250エンなら売りたい」と思う人もいるでしょう。このように、「リンゴ1個、〇〇エンなら売りたい」という売り手の価格感覚もそれぞれだということが分かります。
このように、値段に対する買い手の人数分布を「需要曲線」、売り手の人数分布を「供給曲線」と言い、この両者が存在することで値段が決まります。
売り手と買い手が同じ人数・同じ価格感覚であること
リンゴを買いたい人とリンゴを売りたい人が、それぞれ15人いるとします。この時、「1個250エンならいいと思う人は?」と聞きました。そこで手を挙げたのは、売り手15人であり、買い手は1人しかいませんでした。
つまり、高すぎるということです。リンゴ1個が250エンという値段に対して、売り手が全員賛成しても買い手が1人だけならば売買は成立しません。
次に、「1個100エンだったらどうですか?」と聞くと、10人の買い手は手を挙げますが、売り手は3人しか手を挙げませんでした。これは、安すぎるということです。
15人ずついる売り手と買い手に対して、いくらならリンゴ1個の値段として賛成できるのか調整していきます。100人が住む島では、最終的に「1個150エン」と聞いたときに売り手と買い手がどちらも6人ずつ手を挙げたため、「リンゴ1個、150エン」として売買が成立しました。
このように、需要曲線と供給曲線が一致したときの価格のことを、「均衡価格」と言います。売り手と買い手がちょうど同じ数、同じ価格感覚になった時にモノの値段が決まることになります。
条件によって価格感覚が変動すること
売り手の「これくらいなら売ってもいい」と、買い手の「これくらいなら買ってもいい」という“2つの感覚”は、常に一定の感覚ではありません。様々な条件により、時間の経過とともに変わってきます。
たとえば100人の島では、年に1度だけ「取引の日」があり、リンゴの売買が全部まとめて行われます。今年行われる取引の日では、リンゴの値段を決める“2つの感覚”に影響を与える5つの条件があります。
①法律・税制度や去年のリンゴの値段
②100人はそれぞれどのくらいリンゴを食べたいか
③裕福度合い
④リンゴ会社vs社員の賃金交渉
⑤リンゴの生産技術
このうち①~③からは、買い手の価格感覚が決まります。①③④⑤からは、「リンゴの総生産量やコスト」「儲けたい度」の後に、売り手の価格感覚が決まってきます。
このような条件が影響して“2つの感覚”が変動し、「今年の取引の日は、リンゴ1個150エンです」と設定されるのです。
まとめ
島のリンゴは、売り手と買い手が同人数いて、同じ価格感覚になることで「その年のリンゴ1個の値段」が決まります。この値段は、毎年同じではなく、法律や税制度、去年の物価、生産技術、裕福度合いなどの条件によって変動するものです。
需要量と供給量が一致したときの価格が、そのモノの値段として決定されると分かるでしょう。
このように、日本を「100人が住む島」に例えると、難しい経済の話がグッと身近なものになりませんか?
今回ご紹介した内容の他に、「経済というシステムが生まれる前の話」「お金の増え方」「国や政府の役割」「景気と物価」など、シンプルに分かりやすく解説しています。
興味がある方は、ぜひ本書をご覧ください。
文/石山 亜由美
(画像提供:iStock.com/maroke)