お金

お金にはなぜ価値があるの?

#お金

―もしも、日本が100人の島だったら?―
そんな設定で経済をわかりやすく解説した本、『東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!』から、内容を一部抜粋してご紹介します。
今回のテーマは「お金にはなぜ価値があるの?」です。ただの紙切れが、「お金」としての価値を持つようになった考え方について、ポイントに沿って分かりやすく解説します。

①みんなが「それ自体」に価値を感じるから


「お金」とは、モノやサービスの価値を表現できるものとして使われています。では、どんなものが「お金」にできるのでしょうか。
たとえば、「金(きん)」という金属は、誰が見てもキラキラと輝き、魅力的に見えます。アクセサリーや工業製品など、様々な用途に使えるため、島の住民たちみんなに「欲しい」と思わせる力があるモノです。
島の住民たちは、この「金」を使うことで、その量に応じたリンゴやスマホを譲ってもらうといった価値が生まれるでしょう。それ自体に価値を感じるのであれば、「金」に限らず、布や塩などでも「お金」として使えるということです。
このように、「金」のように商品として価値あるものが転用されてお金になったものを「商品貨幣」と呼びます。

②「それ自体」の価値がすぐに消えないから


金や布、塩などの商品貨幣は、それ自体に価値があると言っても使いにくさがあります。島の住民たちはリンゴやスマホを買うときに、商品貨幣を持ち運んだり重さを測ったりしなければならず不便な思いをしていました。
そこで作られたのが、「エン」という紙のお金です。(「エン」とは、島で用いられるお金のこと)紙で作られた「エン」は、保存がきく上に持ち運びも簡単です。島の政府は、紙に「エン」というハンコを押して、住民たちに配ります。
このように、「お金」とは、腐ったり消えたりせずにその価値を保存できるものとして使われることになりました。

③「それ自体」が小さく分けたり交換できたりするから

商品貨幣によっては、それ自体を小さく分けられないモノがあります。たとえば、巨大ロボのような分解できないようなモノやサービスです。つまり、「お金」とは、持ち運びができて、モノやサービスの交換にも使用できるものと考えています。
100人の島では、あるとき漁師のシロクマが農家のパンダに、「魚2匹を渡すから、リンゴ1個と交換したい」とお願いしました。この約束を忘れないように、シロクマは紙に書いた借用書を用意しました。このシロクマが書いた借用書は、「シロクマが、パンダ(借用書の持ち主)から、魚2匹を借りている券」と言えます。

この借用書を持っている誰かがシロクマのところに持っていき、魚2匹と交換するまで、「魚2匹分の価値を持つお金」として使えるという解釈ができるでしょう。

この借用書のようなタイプのお金を「信用貨幣」あるいは「債券」と呼びます。このように、島の「エン」は、小さく分けて持ち運べる上にモノやサービスと交換する価値があるものとして利用されるようになりました。

④“税”というルールがあるから

ある時、島の住民のひとりが「こんな紙切れ、なんの価値もないよ。わたしが作ったモノとは交換してあげられない」と言いました。
たしかに、「エン」というのはただの紙切れです。「エン」に価値を感じるためには、どうすればよいのでしょうか。
そこで、島の政府は「毎年、政府に“税”として1万エンを払わないと、公務員が逮捕して、財産を奪って刑務所に入れます」というルールを作りました。
すると、島の住民たちは「逮捕されたくない」と思い、「1万エンを支払うためには、エンを手に入れなければいけない」と考えるようになったのです。

“税”として、1万エンを支払わないと逮捕されるとして、「エン=自由(逮捕されない)と交換できる券」と捉えるようになりました。
税金によって、「お金」が価値を持つことを、「租税貨幣論」と呼びます。このように、島には「税」という概念を誕生させたことで、「エン」を欲しいと思い、価値があるものとして認識づけられました。

まとめ

島の住民たちは、ただの紙切れだった「エン」に対して、モノやサービスと交換したり自由な生活を手に入れたりできる「価値のあるもの」へと認識が変わっていきました。
島で使われている「エン」が、私たちの生活において「お金」として置き換えて考えてみると良いでしょう。

このように、日本を「100人が住む島」に例えると、難しい経済の話がグッと身近なものになりませんか?
今回ご紹介した内容の他に、「経済というシステムが生まれる前の話」「お金の増え方」「国や政府の役割」「景気と物価」など、シンプルに分かりやすく解説しています。

興味がある方は、ぜひ本書をご覧ください。

文/石山 亜由美

(画像提供:iStock.com/Grassetto)


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