―もしも、日本が100人の島だったら?―
そんな設定で経済をわかりやすく解説した本、『東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!』から、内容を一部抜粋してご紹介します。
今回のテーマは「物価を上げよう」です。みんなの暮らしを良くする、物価の上昇について解説していきます。
目次
買いたい人が増えて物価が上がる
100人が住む島では、100人分のクルマを10人が作っていました。
時間の経過とともにクルマの生産技術が向上し、5人でも100人分を作れるようになったのです。そのため、5人は仕事を辞めることになりました。
仕事を辞めた5人にタヌキが声をかけて、別の会社でヒコウキを作る仕事を始めたのです。タヌキは銀行からエンを借りて、5人に1人100万エンの給料を支払い、ヒコウキを作る材料を500万エンで買いました。
このとき、給料を受け取った5人とタヌキに材料を売った人たち合わせて、財布には1000万エン入ることになります。
この住民たちは、お金を手に入れたことにより、買い物を始めるでしょう。
これを「買いたい人が増える=物価が上がる」状態になり、インフレーションと言います。
新しい仕事を始める人を増やして文明を発展させる
島のヒコウキ会社は、売上がアップして儲けたことで、従業員を10人に増やしました。
しかし、ヒコウキの生産技術が高まり、5人でも100人分のヒコウキが作れるようになったのです。そこで、5人の従業員は仕事を辞めることになりました。
タヌキは新たにロケットを作るために、この5人に新しい会社を用意してあげました。
こうして、タヌキは新たなモノを生み出して島を便利にしただけではなく、仕事がなくなった人に対して仕事を与えるという状態を築き上げたのです。
政府はタヌキのような住民が増えて欲しいと考え、「新しい仕事を始める人を増やす政策」を行いました。
タヌキのような住民が現れ続けることで、島の文明が発展し、物価が上がり続けることになったのです。
みんなが便利で幸せに暮らせることを重視する
新しい仕事を始める人が増えたことで買い手が増えると、ゆるゆると物価が上がっていきます。
このインフレを起こしている状態を、政府は「いい調子だ」と思うのです。
反対に、仕事を辞めた5人がなかなか新しい仕事を始められないと、給料がもらえず買い物ができません。
島にとっても5人が買い物をしない分、商品が売れなくなります。
つまり、買いたい人が減るため、物価が下がるデフレーションの状態になるということです。
このデフレの状態は、政府は「悪い状態だ」と思ってしまいます。
しかし、島の政府の目的は、「島の文明発展」と「島の平和」を達成することです。
物価を上げることが一番の目的ではなく、島の住民全員が便利で幸せに暮らせることが大切だと考えます。
基本的には、インフレになると景気が良くなるのではなく、景気が良いことで結果としてインフレになるのです。
また、「コストプッシュインフレ」という、原材料費や賃金の急激な上昇により引き起こされる、みんなの暮らしを良くしないタイプのインフレもあります。
このように、物価を上げることばかりを重視した場合、みんなの暮らしが良くなるとは限りません。
みんなが便利で幸せに暮らせるように文明が発展することで、自ずと物価も上がるという状態が理想と言えるでしょう。
まとめ
島では、100人の住民みんなの暮らしが便利になるために、新しい仕事を始める人が増えました。このような住民が増え続けることで、買い手も増えていき、その結果物価が上昇することにつながりました。
この島で使われている「エン」が、私たちの生活において「お金」として置き換えて考えてみると分かりやすいでしょう。
このように、日本を「100人が住む島」に例えると、難しい経済の話がグッと身近なものになりませんか?
今回ご紹介した内容の他に、「経済というシステムが生まれる前の話」「お金の増え方」「国や政府の役割」「景気と物価」など、シンプルに分かりやすく解説しています。
興味がある方は、ぜひ本書をご覧ください。
文/石山 亜由美
(画像提供:iStock.com/AndresGarciaM)