お金

お金ってどうやって増えるの?

#お金

―もしも、日本が100人の島だったら?―
そんな設定で経済をわかりやすく解説した本、『東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!』から、内容を一部抜粋してご紹介します。
今回のテーマは「お金の増え方(民間銀行による信用創造の場合)」です。銀行が住民たちにお金を貸すことで、貨幣供給量が増える仕組みなどについて解説していきます。

「通帳」によりお金の受け渡しが簡単にできるようになった


 

100人の島に、「エン」が普及されて、住民全員がお金を持つようになると、「エンを家に置いておくと盗まれそう」「エンをなくしたら大変だ」という新しい問題が生まれました。
そこで、厳重な金庫を持つシマウマが銀行マンとして現れます。住民からエンを預かり、それぞれ「〇〇さんから、〇〇エン預かりました」というメモを添えて厳重に保管することにしました。このメモが「通帳」です。
住民たちはエンを持ち歩かずとも、「自分の通帳」と「相手の通帳」を使って、簡単にエンの受け渡しができるようになりました。
つまり、「通帳」に支払った金額と振り込まれた金額が記載されることで、安全でスムーズに住民間のお金が移動できるようになったのです。

銀行が何もないところからお金を生み出した

島の住民100人が、銀行に1人1万エンずつ預けた場合、銀行の金庫には100万エンが保管されていることになります。
そこに、商売人のキリンが「いい商売を思いついたから、200万エン貸して」とシマウマ銀行にお願いしました。シマウマ銀行は承諾し、「キリンに200万エン貸した」という借用書を作り、キリンの通帳に「201万エン(元々預けていた1万エンに加えて)」と記載します。

キリンは新しく出店するために、銀行から借りた200万エンをゾウに支払いました。するとキリンの通帳は「1万エン」、ゾウの通帳は「201万エン」と書き換えられます。

ゾウは手に入った200万エンを使い、島の中でたくさん買い物ができるようになりました。
つまり、銀行は「何もないところから、200万エンのお金を生み出した」という状態になったのです。
このように、銀行がお金を貸して貨幣供給量を増やすことを、「銀行による信用創造」と言います。

 

国がルールを決めて銀行を助ける体制ができた

島の住民たちは、シマウマ銀行からエンを借りるたびに、それぞれの通帳に数字が書き込まれ、島全体のお金が増えていきました。しかし、このままでは島のエンは無限に増えてしまいます。
そこで、国は銀行に対して「貸してもいい金額は〇〇〇エンまで」「お金を返せない住民には貸してはいけない」などの厳しいルールを定めました。
その厳しいルールの代わりに、国は銀行に「もしも銀行の現金が足りなかったら、エンを発行して助ける」といった約束があります。
日本では、もしも銀行が「多額の預金引き出し」に応じられない場合は、日本銀行(島でいうエンを印刷する係)が現金輸送車で届けてくれることになっています。つまり、銀行は金庫に保管している現金以上に貸しても大丈夫だということなのです。

国内に流通するお金が増えた

100人の島では、「国がエンを発行すること」「住民が銀行からエンを借りること」でお金が増えると分かりました。その一方で、「税として国が回収すること」「銀行が貸したエンを住民から返してもらうこと」で島全体のお金は減ります。
たとえば、国が発行して島に出回ったお金が100万エンあり、住民たちが銀行から100万エン借りた場合、島全体のエンは合計200万エンとなります。
政府が公共事業に50万エン使った場合、島全体のお金は250万エンに増えることになります。
島の住民たちが新しい事業をどんどん始めて、合計で1000万エンを銀行が貸した場合、島全体に流通するお金は、1100万エンに増えるのです。
つまり、国が発行したお金を国民が銀行から借りることで、国内に流通するお金が増えると考えられるでしょう。
現在の日本国内に流通している現金は、約100兆円~200兆円と言われています。


まとめ

島で生活している100人の住民たちは、銀行にエンを預けたり借りたりと自由で安全にエンを使えるようになりました。そして、国がエンを発行し銀行から住民がエンを借りることで、島に流通するエンが増えるという仕組みが整ったのです。
この島で使われている「エン」が、私たちの生活において「お金」として置き換えて考えてみると分かりやすいでしょう。

このように、日本を「100人が住む島」に例えると、難しい経済の話がグッと身近なものになりませんか?
今回ご紹介した内容の他に、「経済というシステムが生まれる前の話」「お金の増え方」「国や政府の役割」「景気と物価」など、シンプルに分かりやすく解説しています。

興味がある方は、ぜひ本書をご覧ください。

文/石山 亜由美

(画像提供:iStock.com/GCShutter/nisi/artisteer)


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