占い師が考える、「この世界の仕組み」と「不思議」
今朝、あなたが口にしたコップ一杯の水。それはもしかしたら、1400年前に聖徳太子が流した涙かもしれません。
これは単なる詩的な空想ではありません。地球上の水は、蒸発、凝結、降水を繰り返し、絶えず循環しています。この壮大なサイクルを考えれば、私たちが触れる水分子の一部が、かつて歴史上の人物や遠い過去の生命の体を巡っていたことは、科学的にほぼ間違いのない事実です。
もしも、水が情報を記憶するのだとしたら。
これを証明できそうな面白い研究があります。神戸大学のツェンコヴァ・ルミアナ教授が提唱した「アクアフォトミクス(Aquaphotomics)」という革新的な科学分野です。
この新しい学問は、水が単に循環するだけでなく、通過してきた環境や受けた影響に応じて、その分子構造のパターンを変化させる、いわば「水の情報記憶システム」を解明しようとしています。
目次
水の「記憶」を読む最新科学
中学校で学ぶ水の化学式はH₂O。水素原子2つと酸素原子1つが結びついた、非常にシンプルな分子です。しかし、実際の水の世界は、この単純なイメージとは全く異なります。水分子は、隣り合う分子と「水素結合」でゆるやかに手をつなぎ合っています。この結合は極めて動的で、温度、圧力、溶けている物質など、周囲の環境に応じて、1秒間に約1兆回もの速さで組み替えを繰り返しています。この水の動きを「光を使って分析」するのが、アクアフォトミクスという研究分野です。
水に様々な波長の近赤外光(700-2500ナノメートル)を当て、どの波長の光がどれだけ吸収されたかを精密に観察することで、水に記憶された様々な情報を読み解けるのだといいます。
水分子は、その結合の仕方や動き(分子振動)に応じて、特定の波長の近赤外光を吸収します。異なる状態で結びついた水分子の集団は、光に対してユニークな吸収パターンを示します。そのパターンは大きく分けて下記の4つ。
・自由度の高い水:他の分子との結合が弱く、活発に動き回る水分子
・強く結合した水:氷のように、がっちりとネットワークを組んだ水分子
・協調的な水:中程度の結合で秩序を保持する水分子
・水和水:イオンやタンパク質などの周りに、秩序正しく配置された水分子
驚くべきことに、特定の環境下に置かれた水は、再現性のある水分子のパターンが観察されるのだそう。例えば、健康な人の血液と、特定の疾患を持つ人の血液では、特徴的で統計的にも有意な違いが現れることが複数の研究で確認されています。極論を言えば、水と光の関係を見ると「水がどんな情報を記憶しているかが分かる」ということです。
「水が情報を記憶する」と聞くと、データを記録・保存し、後で再生できる音楽CDのようになものを想像するかもしれません。しかし、アクアフォトミクスが示唆する記憶は、それとは少し違います。
ストラディバリウスのヴァイオリンを例に考えてみましょう。芸能人格付けチェックという番組でもよく使用される10億円以上の値打ちがある楽器です。300年以上前に作られたこの楽器が、人々を魅了するのはなぜでしょうか。それは、楽曲のデータ自体が木材に保存されているからではありません。最高の共鳴を生み出しやすい「構造」が保たれているからです。
水の記憶も、この構造の話と似ています。水は過去の出来事を音源そのものとして保存するわけではありません。特定の刺激(温度、化学物質、電磁場、圧力など)に対して、同じ反応をしやすい構造があるということです。一度受けた刺激と似た刺激に再び晒されると、水は以前と似たパターンを「思い出す」ように再現しやすくなります。これは、同じ条件が整えば、同じような分子構造の秩序が立ち上がりやすいという、パターン再現性の記憶なのです。記憶されているのは、楽曲そのものではなく、使用される楽器。料理でいえば、味そのものではなく、レシピといった感じです。