会社をクビ、休職2回、発達障害……生きづらさを抱えた僕らの究極の仕事術/F太・小鳥遊

F太 小鳥遊

会社員として働きつつ、タスク管理のイベントを主催し、タスク管理ツールの開発なども手掛ける小鳥遊(たかなし)さん。ツイッターのフォロワー数約37万人のインフルエンサーであり、自らも経営に参加する会社を通じて仕事術やタスク管理について発信を続けるF太(えふた)さん。自由な働き方で、それぞれ成功を収めている彼らの共通項は、「要領が悪い」ことだといいます。二人がいかに出会い、なぜ共著で本を出版することになったのか、その歩みをインタビューしました。


<聞き手・國天俊治>

聞き手

小鳥遊F太さん……変わったお名前ですね。インターナショナルな落語家のような。

いやいや、今、目の前に人間、二人いますよね?(笑)

F太

共著です、共著!

小鳥遊

聞き手

ああ、すみません!
ノウハウ系のビジネス書で共著は、珍しいですね。

二人のノウハウを集約できたので、一冊で2倍の価値がある、濃い内容になっていると思います。

小鳥遊

僕と小鳥遊さんという、“要領がよくない二人”だからこそ書けた、『要領がよくないと思い込んでいる人の仕事術図鑑』であり、読者の方々の心に寄り添った本になっていると自負しています。

F太

聞き手

初手のツッコミの早さといい、お話ししている感じでは二人ともまったく要領がよくないようには思えませんが……。

朗らかなおふたり。喋り口も軽快でとても要領が悪い人に見えない……。けれどこのあと、いろんな闇エピソードが飛び出します。左がF太さん、右が小鳥遊さん。

いえ、私はめちゃくちゃ要領が悪い人間です。それは生まれつきの部分もあって、ADHD(注意欠陥・多動症)という発達障害の診断を受けています。

小鳥遊

小鳥遊さんのようにはっきりとした病名はないにせよ、僕もずっと自分を要領が悪いと思い込んでこれまで生きてきました。

F太

聞き手

そんなお二人が、どうやって出会い、本を出すにいたったのか、気になります。小鳥遊さんは、いつごろから自分がADHDであると感じるようになりましたか。

小さな頃から、なんとなく周囲よりも作業が遅かったりした記憶はあるのですが、昔は発達障害という言葉もなく、大学卒業までは、まさか自分が病気だとは考えたこともありませんでしたね。

小鳥遊

聞き手

いわゆる一流どころの大学のご出身だそうですが、受験勉強には影響しませんでしたか。

はい。予備校に通い、勉強の仕方を手取り足取り教えてもらえたおかげで、受験はクリアできました。最初の挫折といえるのは、就職活動ですが、これもADHDのせいというより、モチベーションの問題でした。何のために就職すべきかわからず、自己PRにも嘘を書くのが嫌でした。とにかく就職に興味がなくて……。

小鳥遊

聞き手

それでどうされたんですか?

それで、法学部だったこともあり、司法書士になろうと決めたんです。今考えれば、国家資格を取るという名目で、就活から逃げていたんですね。

小鳥遊

……それは、僕とまったく同じです。僕も、それなりにいい大学に受かったけれど、就職に興味が持てず、国家資格の勉強を始めました。僕が目指したのは会計士でしたが、結局はモラトリアム期間を引き延ばすというのが目的だった。2年は勉強してみたけれど、それであきらめました。本当になりたいわけではなく、熱意に欠ける状態で、難関試験に通るはずがありませんから。

F太

その通りです。私も6年間勉強しましたが、ついに受かることはありませんでした。

小鳥遊

自分の傾向を、すぐに変えるのは難しい

自分がADHDであると知ったのは、不動産屋でアルバイトをしていた時です。そこでの業務はいつも同じで、手順も決まりきっているのに、それが満足にできない。大事な書類を忘れたり、お客さんを物件へご案内しようとして迷子になったりしたりしてしまう。
そうして失敗すると、「なんでできないのか」と自分を責め、心が焦り、余裕がなくなる。それが次の失敗につながる、というような悪循環に陥りました。

小鳥遊

ご自身の経験を語る小鳥遊さん。いまの姿からは想像できないくらい大変な経験をおもちでした。

聞き手

それはしんどいですね。。。

すごく精神的に追い詰められましたね。
失敗続きで、バイト先での信頼はすぐになくなってしまって。別のバイト先では、事務所の鍵を取り上げられて、「あなたには、もうお金を払うことはできない」と言われ、クビ同然で辞めました。

小鳥遊

聞き手

鍵を取り上げられた!?

はい。なんかもう情けなくなってしまって。
なんで自分は、こんなにも仕事ができないのか……その理由を知ろうとネットで検索をかける中で、ADHDについて知り、「もしかしたらこれかも」と病院に行って、診断が下りたという感じです。

小鳥遊

聞き手

なるほど。

失敗する時って、常に焦りがありますよね。後で考えると、なんでこんなことができないのかって思うけれど、その時は脳のメモリーがいっぱいいっぱいで思考が止まってしまう感覚というか。

F太

聞き手

F太さんは、過去にどんなしんどいエピソードがありますか?

僕も、アルバイトでやっていたコールセンターで、焦りと不安から言葉が出なくなり、沈黙するのを繰り返してしまい……。3か月でクビになったことがあります。

F太

聞き手

焦らないってすごく大事なんですね。

そう思いますね。そうした失敗の仕方は、「要領が悪い」と言われる人の共通項かもしれません。

F太

確かに。自分では、なんとかしなきゃ、もっとがんばらなきゃって思うんだけれど、焦るほど自分を追い込んでしまって、精神の糸が張り詰め、切れてしまうという。
私は司法書士をあきらめて一般企業に就職した後も、そうして自分を追い込み、会社に行けなくなって休職したことが二度ほどありました。

小鳥遊

そんな状態の時に、いくら自分を変えようと思っても、無理なんですよね。自分の傾向というのは、すぐに変えられないということが、今ならよくわかります。

F太

自分と同じ悩みを抱える人の助けになりたかった

聞き手

お二人とも、なかなか社会に適合できずに苦しんだ時期があったのですね。そこからどうやって立ち直ったのでしょう。

僕は、2回目の休職明けに、初めて開き直れたんです。忘れる、先送りする、という自分をそのまま受け入れ、「忘れ、先送りしても、失敗しないためにはどうすればいいか」を考えるようになりました。

小鳥遊

聞き手

自分を変えずに、受け入れるかあ。でも難しくありませんか?

難しいと感じるかもしれませんが、じつはすごくシンプルなんですよ。
忘れるならあらかじめ書いておけばいい。先送りしないよう、締め切りも記しておけばいい。

小鳥遊

聞き手

つまり仕組みを作るってことですか?

そうですね。
そうして自分の行動をエクセルで管理してみたところ、仕事が劇的に変わったんです。すべての作業と締め切りが書いてあることで、「これで忘れない」という安心感を得ることができました。

小鳥遊

聞き手

安心感って、焦りの対極にありますもんね。

安心するから、気持ちが楽になり、焦らなくなって、ミスもでなくなった。すると、仕事の成果が一気に出るようになりました。
その威力があまりにすごかったので、自分と同じ悩みを持つ人に伝えたいと思い、他にもやっている人はいるのかと検索をかけたところ、自分がやっているのはタスク管理という仕事術なんだということに気づきました。

小鳥遊

聞き手

F太さんはいかがですか?

僕の場合、今の自分を作ってくれたのは、ツイッターです。苦しい時期にも、たくさんの人が見ていてくれているという感覚があり、それでなんとか自尊心を保ってこられました。

F太

Twitterに救われたと語るF太さん。自分の居場所をSNSに見つけられたといいます。

聞き手

フォロワー37万人はすごいです! 始めたきっかけは?

もともとは、ひとりだけで公認会計士の勉強をしていた頃、誰かとコミュニケーションがとりたくてツイッターを始め、最初は同じ受験生とつながって勉強法や集中する方法などを発信していました。

F太

聞き手

最初は公認会計士の受験勉強アカウントだったんですね。今と全然違う(笑)。

そうなんですよ。
そうしたら弁護士など他の試験の受験者からもフォローされるようになったので、睡眠や食事といった、より普遍的な内容を書くようになりました。そうして緩やかにフォロワーが増えていったのですが、受験勉強をどうマネジメントすべきかというテーマで発信を続けているときに出会ったのが、タスク管理です。

F太

聞き手

タスク管理という共通項が出てきました。そこでお二人がつながるわけですね。

はい。小鳥遊さんとは、タスク管理好きが集まるイベントで知り合いました。

F太

大きなイベントで初めてお見かけしたときは、「ツイッターの有名人がいる!」と思いましたね。それで、次にあった小さなイベントで私から声をかけたんです。タスク管理界隈って、狭いですからね、参加イベントが被るのはよくあります。

小鳥遊

聞き手

(タスク管理の界隈があるんだ……)

僕らは割とすぐ、意気投合しましたね。それで、一緒にイベントをしようという流れになって……。

F太

2016年9月に初めて、合同イベントをやりました。そのタイトルが「自分は要領がよくない、と思い込んでいる人のための仕事術」です。

小鳥遊

聞き手

なるほど、その経験が、今回の出版の基になっているということですね。

「自分は悪くない、やり方が悪かっただけ」と安心してほしい

聞き手

共著で一冊を仕上げていくにあたり、作業をどのように分担しましたか。

小鳥遊さんは、かなりの苦労や失敗を重ね、その解決策としてタスク管理の手法に行きついていますから、事例に具体性と説得力があります。

F太

聞き手

それではF太さんは?

僕は、ポイントをまとめたり、見せ方を工夫したりするのが得意です。互いの特徴を生かす形で、まずは小鳥遊さんに個別の事例を出してもらい、それに合わせて僕が各章のコンセプトを作ったり、導入文を書いたりするというような役割分担が自然にできました。

F太

編集の宮崎さんからの指摘で、私たちにとっては簡単な手法も、初心者には難しいという部分がわかり、何度も修正を重ねました。いかに自分が、タスク管理マニアなのか知りました。

小鳥遊

聞き手

小鳥遊さんは、タスク管理という単語が出ると、毎回笑顔になりますね……。本当に好きなんですね。

はい、大好きです(きっぱり)。

小鳥遊

聞き手

(なんてまっすぐな目をしているんだ……)
本書は、まさにタイトル通り、失敗を繰り返し、要領がよくないと思い込んでいる人に向けた仕事術がまとめられています。

タスク管理の話題になると大はしゃぎのおふたり。タスク管理愛が半端ないです。

僕たちが悩んだ末に辿りつき、本書でもっともお伝えしたいのは、「自分そのものを変えずとも、仕事のやり方や向き合い方を変えるだけでいい」ということです。本書の仕事術を実践してもらうと、きっと失敗も減りますし、何より安心して、焦ることなく仕事ができるようになるはずです。

F太

難しいことは書いてありません。誰でもできる、シンプルな仕事術です。しかし実践すればきっと、心に余裕が生まれます。
「自分は悪くない、やり方が悪かっただけなんだ」
「今の自分のままでも、大丈夫なんだ」
本書を読んで、そんな風に感じていただけたなら、本当にうれしいです。

小鳥遊

聞き手

仕事に悩む人、全員に読んでほしいですね。ありがとうございました!

<取材・文=國天俊治/撮影=大川美帆/編集=宮崎桃子>
F太(えふた)
1984年生まれ。Twitterを中心に活動。フォロワー数は約37万人。
学生時代に公認会計士の勉強を始めるも不合格。アルバイトも3か月でクビに。うまくいかない日々の中、だめな自分自身がかけて欲しい言葉や、めんどくさいながらも何とか行動するための方法などをTwitterでつぶやき続けていたところ、多くの共感を得られてフォロワーが急増。その後Twitterで独立。
こんな自分でも仕事ができるようになったタスク管理のよさを伝えたくて、本書共著者小鳥遊氏と「自分は要領が良くない、と思い込んでいる人のための仕事術」というイベントを継続開催。大橋悦夫氏の考案した「タスクシュート時間術」を世に広める活動もしている。2019年、jMatsuzaki株式会社の経営に加わる。
著書に『明日ちょっと運がよくなる、思考のメモ』(大和出版)がある。

Twitter:@shh7 @fta7

小鳥遊(たかなし) 1976年生まれ。本名は髙梨健太郎。 発達障害の1つADHD(注意欠如・多動症)と診断される。仕事の抜け漏れや要領の悪さから自分を責め、抑うつや適応障害から休職や退職をくり返す。その後、仕事の管理を自作Excelツールで工夫しADHDの特徴をカバーできるようになり、現在はネミー株式会社に勤務。本書共著者F太氏とともにその体験と仕事術を紹介するイベント「自分は要領が良くない、と思い込んでいる人のための仕事術」を継続開催。また自作ツールをクラウド化し、社会福祉法人SHIPの協力のもと「タスクペディア」として無料提供。さらに、障害者就労移行支援事業所EXP立川で自身の経験をもとにしたプログラムを毎週担当。その仕事術によってストレスフリーな働き方とパラレルワークを実現している。 Twitter:@nasiken ブログ:ForGettingThingsDone

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