喧嘩腰で迫ってくる人、クレームをつけてきた顧客などに対し、感情を逆撫でせずに自己主張をするにはどうしたらいいのでしょうか。
この記事では、喧嘩腰の相手にも自己主張ができるようになる交渉術を、対人関係の全技術を凝縮した「頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術」よりご紹介します。ぜひ最後まで読んで、喧嘩腰の相手をいなしながら自分の主張を通す交渉術を身につけ、いざというときに活用してみてください。
目次
アサーティブ・コミュニケーションとは
喧嘩腰の相手をうまく抑えつつ自己主張する交渉術について説明していきます。
相手を受け入れてから主張をする
喧嘩腰になってくるような相手をうまく抑えながら自分の意見をしっかりと伝える交渉術があります。それは「アサーティブ・コミュニケーション」といい、相手の意見を大事にする姿勢を見せてから自己主張をするというテクニック。
相手を受け入れて尊重することで、喧嘩腰になっている攻撃性がやわらぎます。
たとえば「そのご意見、本当に大事ですよね」と伝えてから「そのうえで、もっと〇〇したらどうでしょうか」と伝えるのです。
これは、相手に考え方や行動を修正してもらいたいときや、何らかのフィードバックをするときにも役立ちます。
「その考え方は興味深いですね」など、相手の考え方や行動を尊重する姿勢を見せながら、その後に改善してほしいことを伝えましょう。
フィードバックで使うときのコツは、「優れている点→改善提案」の順で伝えること。改善提案は疑問形で締めましょう。こうすることでこちらの修正提案をポジティブな感情で受け取ってもらえます。
アサーティブ・コミュニケーションを実践することで、ぶつかりあうことなく、スムーズに自己主張ができるのです。
重視するのは立場ではなく共通の利害
「人は誰でも自身の意思や要求を表明する権利を持つ」という自己主張のことを「アサーション」といいます。広義では「アサーティブ・コミュニケーション」を指すことも。心理療法の1つである「行動療法」が源流だといわれています。
相手を尊重する姿勢を見せることで、関係性の維持や発展だけでなく、相手の自尊心を高めて「心理的安全性」を確保できます。
「心理的安全性」とは、チームや組織の中で自分の意見や考えを安心して誰にでも伝えられるような状態のこと。「アサーティブ・コミュニケーション」の土台となっています。
アサーティブ・コミュニケーションでは、相手との立場の違いによって自分の意見を捻じ曲げてはいけません。相手の立場は尊重しますが、要求内容を我慢したり、へりくだったりする必要はないのです。もちろん、忖度も不要。
交渉で重視すべきなのは、立場ではなく互いの共通の利害です。相手の立場は尊重しながら、あくまで「共通の利害」にフォーカスし、自分の主張をしっかりと相手に届けることが何よりも大切だと覚えておきましょう。
徹底的に反論を押し通すことが必要な場合もある
相手がアサーティブ・コミュニケーションでこちらをなだめてきた場合は注意が必要です。
特に権利侵害などに対しては、良好な関係性を維持するうえでも、徹底定的に反論を押し通しましょう。
たとえば、文章などの著作物や写真などが無断で相手に掲載されたとします。これは法的には著作権や肖像権の侵害に相当しますが、相手がまるめこんでくる可能性も。
法的な損害を被ることになりそうな場合はしっかりと主張することが大切です。
すぐに実践するためのコツ
アサーティブ・コミュニケーションを実践するためのコツをご紹介します。
2つのコツで効果を高める
アサーティブ・コミュニケーションをすぐに実践するコツとして、以下の2つがあります。
- 思い込みを排除する
- 順接の接続詞で自己主張をする
次から詳しくみていきましょう。
1.思い込みを排除する
相手を尊重するためには、自分の思い込みを可能な限り排除する必要があります。無意識による思い込みや偏見(アンコンシャス・バイアス)は取り除かなければなりません。
「思い込み」から生まれる「思い違い」が相手へのリスペクトの障壁になってしまうからです。「相手も自分と同じ考え方を持つ(べき)」という思考パターンは、相手を尊重できない人の典型例。自分の意見はしっかり主張すべきであるのと同時に、相手の意見も間違っていないと捉えること。
自分の意見が間違っていたり、相手の意見が正しかったりする可能性もあるというような柔軟な思考を持つことで、相手の意見を尊重しやすくなります。
2.順接の接続詞で自己主張をする
相手の意見を尊重したあとに伝える自己主張は、順接の接続詞を使って伝えることがポイント。逆説の接続詞で伝えると、相手の意見を尊重した効果が半減してしまうからです。
「〇〇さんのおっしゃることは素晴らしい考えだと思います。しかしですね、……」というように、「しかし」・「でも」・「だけど」・「けれど」などを使うと、相手の心にメンタルブロック(心の障壁)ができてしまいます。そこでおすすめなのは、「そのうえで」や「だからこそ」などの順接の接続詞。「〇〇さんのおっしゃることは素晴らしい考えだと思います。そのうえで、私の考えとしましては……」のようにすると、スムーズにあなたの主張が伝わるでしょう。
まとめ
喧嘩腰の相手でも、相手の意見を尊重したあとで自己主張をすれば、相手の感情を逆撫でせずにすみます。お互いの立場や主張を大切にしたアサーティブ・コミュニケーションを実践してみましょう。
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