私が著者になるまで

誰にでも分かりやすい説明を! 動物に簡略化された経済本ができるまで/ムギタロー

#私が著者になるまで

YouTubeの解説動画が経済本を出版するきっかけになった

石山
ムギタローさんは今回経済本『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』を出版されたわけですが、元々経済について興味があったのですか?
YouTubeで、経済に関する解説動画を出した時からですね。その動画は「内容が違う」とコメントが来て、今は消しましたが。いろいろ調べていたら本当に違うと分かり、そこから興味が出てきた感じです。実際にコメントをしてくれた方に話を聞いて、実はその方は高校生だったのですが。いろいろと教えてもらいましたね。
ムギ
石山
高校生…!?(その人すごい)
僕は研究者で学問を志しているので、正しいものは正しいと思っていますから、勉強したことを動画にしました。僕の動画が「分かりやすい」と少しずつ広まり、もっと動画を出して欲しいと言われましたね。適当に出すわけにもいかないので、勉強をして動画にしていきました。気づいたら本を書いていた、という感じです(笑)。
ムギ
石山
ということは、最初に経済に触れたのは、その動画を出したとき?
そうですね。そもそも、解説が上手だからと経済についても解説して欲しいと言われていたんです。そこで、「じゃあ動画を出してみるか」と思ったんです。
ムギ
石山
勉強しながら動画にして…という流れを繰り返していった感じですね。
そうです。それに、大人数の目に触れることで、「違う」という方も出てきますよね。そういった意見を見逃さないようにしています。
ムギ
石山
そんな経済の知識ですが、どのように知識を深めていったのですか?
一番は、詳しい人に話を聞くことでしょうか。その道に詳しい方に、読むべきものを聞いてという感じです。
ムギ
石山
なるほど。そこから書籍を出版されるまで、1年以上かかったと伺いました。一番苦労した点は、どんなことですか?
一度書いたものを、出版社の方(編集者)から動物化して欲しいと言われて、もう一回書き直ししているんですよね(笑)。文章量も、今の3倍くらいはありました。また編集者から「分かりにくい」と何度も指摘されて、何度も書き直しました。あとは、監修の方と語弊の無い言い方を考えた時は、大変でした。正しい表現、読者に悪い情報を与えないようにと。すべての文章について、裏付けをとっています。誰が読んでもおかしくない本にしたかったので。博士論文を書くよりも大変だったかも(笑)。
ムギ
石山
読む人によって捉え方って違いますもんね。私自身、経済の本はほとんど読んだことがなく、自然に遠ざけているようなタイプです(笑)。そんな私でも、「100人の島」に例えているところが、とても分かりやすいと感じました。このような、たとえを使った理由ってありますか?
僕は、昔から何事も一番簡単なケースを考えて勉強するタイプで。一番簡単な状況で試して理論を確かめるという感じで、何事も簡略化すべきだと思っています。それを経済学でも使ってみました。基礎的なところが分からない難しい理論であれば、なおさらですね。日本国民の人口で考えるよりも、100人でも成り立つことが重要かなと。
ムギ
石山
たしかに。簡略化することで分かりやすくなることが多いかもしれませんね。
僕も経済を理解するとき、「これって100人だったら」と考えます。簡単なケースを考えるのは科学をすすめる上で重要だと思い、今回は使ってみました。あとは、YouTubeで「分かりやすく説明する」ことに慣れていたのもありますね。
ムギ
石山
この本は、小学生や中学生にも読める本ですよね。イラストもかわいいですし!私の子どもが小学生になったら、見せてあげたいって思います。
動物にしたおかげですね(笑)。動物ですが、やっている論理は現実と変わらないですから、分かりやすくした方がいいですよね。
ムギ
石山
本の内容も、「動物のたとえ話」と「解説ページ」が交互に来ているので、理解が深まりやすいと思いました。経済初心者の私のような人間にとって、助かる本ですよ(笑)。
それは、僕のこだわりでした! 僕が実際に、このような構成の本で勉強したことがあって、分かりやすかったので使わせてもらいました。厳密な話からいきなり始めると、大抵の人はついてこられなくなってしまうので、最初にざっくりと概要を解説しました。
ムギ

自分のなりたい姿を意識した行動が結果につながった

石山
こんなにも説明が上手なのは、天性なのでしょうか?
僕からは、「説明の仕方は、誰でも練習すればできる!」とは言えません。僕は、元々説明が得意なのかもしれませんね。ただし、努力はしています。プレゼンの本を買ったり、情報収集したりと。誰に対しても説明が上手になりたいと思って、意識的に情報を集めて取り入れています。意識していると、情報に出会った時に集める姿勢も違ってきますからね。
ムギ
石山
なるほど。まずは意識するところからですね。
分かりやすく説明できる人になりたいと思っていたし、本も出せるなら出したいと思っていましたね。経済以外にも詳しいことはあります。自分の中で、やろうと思っているだけでも行動が変わりますね。それが結果として現れたのかなって思います。
ムギ
石山
ムギタローさんは、そのような意識をするだけではなく、誰かとコンタクトを取ったり情報収集のために行動したりといったことを積極的にされているのですね。ムギタローさんのような行動力も大事ですね。
そうですね。行動力も重要だと思います。
ムギ
石山
出版社の方から、「ムギタローさんは、かなりの量の厳しい要求にこたえてくださった」という話を伺いました。「行動力と課題解決力がとても素晴らしい」と高い評価を受けているようですが。
僕一人が集められる情報には限度があると思うんです。出版業界にいる方のお話は正しく、意見をぶつかり合いだと思ってはいません。書いた内容を否定されると、自分が否定されたと思う人って多いですよね。僕は、そうは思いませんでした。最初に書いた原稿よりも、今は100倍以上良くなっていますから。かなりの回数やり取りをして完成させたので、出版社のおかげでもありますね。
ムギ
石山
経済の本は、販売が難しいと聞きました。私も、ビジネス書はたくさん読みますが、経済本はなかなか手に取らないですね。難しい内容だと思ってしまいますから。でも、ムギタローさんの本は、表紙がかわいい動物なのでハードルは下がると感じます。
この本を読んで、不快に思う人があまりいないように作りました。他の本では見られいような内容になったかと思います。
ムギ

“誰も分かりやすく説明できていない分野”に挑戦したい

石山
今は就職・結婚・子育てと毎日忙しく過ごされているかと思いますが、これからの活動についてお聞かせください。
たしかに仕事が始まってからは忙しいですね。ただ、解説動画は引き続きアップしていきたいと思っています。パソコンや相対性理論の説明など、誰も分かりやすく説明できていないことをやってみたいです。
ムギ
石山
なるほど。私は、仕事と家庭と子育てで精一杯です(笑)。「どれか一つだけでもキャパオーバーになるものなのに、その体力はどこからくるの?」と出版社の方も不思議に思っているようですね(笑)。
奥さんにも協力してもらっています。あとは、無駄な作業はやらないようにしていますね。今までは研究と家庭、YouTubeを両立していたので、研究の部分が書籍執筆になった感じです。
ムギ
石山
最後に、「いつか自分の本を出したい方」へのメッセージをお願いします。
この記事を読みに来た時点で、すでに一歩踏み出していると思います。
ぜひ頑張ってください!
ムギ
ムギタロー
1994年生まれ。福島県出身。経済評論家。社会基盤学や粉粒体の物理学を専門とする研究者。
2013年県立福島高校卒。2017年東京大学工学部卒。2022年東京大学工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)取得。YouTuberとして、現代貨幣理論を中心とした最新経済学を一般向けにわかりやすく解説することに定評がある。ポエトリーラッパーとしても活動中。




石山 亜由美(取材/文)
保健師、看護師、ブロガー、ライターなどをマルチにこなす1児のママ。
国立大学医学部卒業。その後は大学病院、クリニック、健診センター、行政保健(母子担当)、産業保健など約10年間、さまざまな分野で働く。
現在は、主に企業からの委託により、働く人の健康相談やメンタルヘルス相談への対応業務を行うとともに、医療ライターとして医療・健康・育児・美容関係のホームページ制作や記事執筆、監修などを行っている。

東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった! ムギタロー(著)、井上智洋、望月慎(監修)

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定価:1,400円(税込1,540円)
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