ライフスタイル

趣味から自給自足まで!失敗しない家庭菜園の始め方/きよ@えがおファーム@mkiyooka

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苗を植える(2)−−ひとつのプランターにひとつの苗

基本的には、ひとつのプランターにひとつの苗を植えるのがいいです。植えるとき、多くの野菜は真ん中に植えますが、キュウリなどは端っこを好みます。

トマトは、よく見ると茎の部分に白いヒゲが生えています。これを土に埋めると根っこになるのです。だから、先っぽだけ出すようにして土に斜めに入れる「斜め植え」という植え方をします。茎の半分以上、葉っぱも土に入れてしまってかまいません。そうすると、土の中で根っこが出てくるので、より成長しやすくなります。大玉でもミニトマトでも同じです。

スペースや土はケチらないこと

先ほども言ったとおり、プランターひとつに対して、植える苗は基本的にひとつです。プランターと野菜のサイズを見るときに、土の上の部分しか見ない方が多いのですが、実は「根っこがどういうふうに伸びるのか」が重要です。

家庭菜園が失敗するパターンのひとつは、密に植えすぎること。根っこの伸びるスペースがないと、成長は止まってしまいます。ひとつのプランターに2つの苗を植えるのは、家族10人が6畳一間で生活しているようなもの。10人が六畳一間って、むっちゃ生活しにくいですよね?

上が大きくなる分だけ、下も大きく伸びると考えて、その分の体積が要ると思ってもらうぐらいがちょうどいいです。実際には上の高さの半分ぐらいでいいですが、イメージとしては同じぐらい必要だと思ってください。

「土の量をケチって、プランターに半分ぐらいしか入れない」というのも、根っこが伸びるスペースがないのでNG。土はケチらず、プランターの深さの8分目、9分目まで入れましょう。これらの原則は苗だけでなく、葉物野菜も同じです。

水をあげる−−屋外なら基本的に水やり不要

次に、大事な水やりの話です。これは、育てる場所によって変わってきます。
庭や、オープンになっているベランダなど、つまり雨が降りこむ場所であれば、水やりは不要です。

というのも、プランターはプラスチックでできており、蒸発は上の方向にしかません。表面が乾いても、2、3センチ掘ると土は湿っています。日本は雨が多く、年間でならすと週に2日は雨が降るので、基本的にはそれだけでなんとかなるのです。

注意しなければならないのは、夏場の日照りだけ。何日も雨が降っていなくて、表面がカラカラ、土の中もカラカラのときだけ水をあげましょう。そうでなければ、プランターの中にいつも水がたまっているので、あげる必要はありません。畑でリアルにやっている農家でも、水をあげているケースはほとんどありません。たいていは雨でまかなえるのです。

毎日水をあげると、根腐れをして枯らしてしまいます。基本は「完全に乾いてからあげる」。外で育てる場合、完全に乾くケースは夏場以外にほとんどありません。意外だと思われるかもしれませんが、これを知ると、水やりもだいぶ楽になるはずです。

1日1回、朝起きたときに土の状態を見て、「濡れていたら、その日はあげなくていい」というやり方でOKです。お花も同じです。

室内や、雨が降りこまないベランダなどで育てる場合は、土の中が乾いていたら水をあげましょう。そうでなければあげなくていいです。ベストなのは、外で雨が降っているときにあげること。野菜も、湿度の高い低いが感覚でわかっています。雨が降っていると、「湿度が高いから雨なんだな」と野菜もわかっているので、そのときにあげるのが野菜にはやさしいです。人間も突然水をかけられたら驚くし、怒りますよね? それと同じです。

野菜に直接かからないように、できればカルキ抜きを

水は茎の下、地面に近いところからあげましょう。野菜は、上から水がかかるのを好みません。特に、カラカラしているときは、野菜がびっくりしないよう、野菜にかからないようにあげましょう。プランターには水抜き穴があるので、そこから水が出てきたらストップします。

可能であれば、水道水をそのままあげるよりは、一晩でもいいので、カルキ抜きをしたほうが野菜にとってやさしいです。面倒な人はそのままでもOK。ただし、ホースからそのままやるのは、野菜にとってはいきなり大雨が降ってくるようなもの。ジョウロを使ってやさしくかけてあげましょう。

家庭菜園で「芽かき」は不要

芽かきは、家庭菜園ならあまりしなくてもいいというのが私の考えです。例外はナス。実を採る頃ぐらいから、1番目の花より下の葉っぱはきれいに落としてあげて、上はそのままで大丈夫です。

ナスは2本仕立てといって、実がついたところから2つに分かれていく性質があります。本線といわれる太い方を残して、細い方を切る、というのが育て方の王道ですが、切るとナス自体が疲れてしまいます。だから私は、いちばん下の脇芽だけを切って、上はそのままにするのをおすすめしています。こうすると、上ではなく横に伸びていく形になるので、管理もしやすくなります。普通はあまりやらないやり方ですが、家庭菜園ならこれで十分だと思います。

トマトも、芽かきが必要な野菜ですが、やりすぎるとトマトが疲れてしまいます。あと、「どこで芽かきすればいいかわからない」という人も多いので、だったらしなくていいと私は思います。そのほうが楽ですよね?

肥料をあげる−−「肥料入りの土」なら追加の肥料は不要

次は、肥料についての話です。
私は、土の中は人間の腸の世界と同じだと思っています。つまり、菌の世界だということ。「根っこがどうやって伸びていくか」=「菌をどうやって繁殖させるか」なので、植えた後の肥料は必要ありません。

肥料がない土からスタートする場合は、菌を繁殖させる必要があるので、米ぬかか、なたね油かすをパラパラとまき、微生物を繁殖させるようにします。繁殖が始まったら、もう要りません。

どうしても気になる場合は肥料を使ってもらってかまいませんが、やり方には注意が必要です。やりすぎは虫を呼びます。根っこが養分を吸い、葉っぱが呼吸をして余分なものを吐き出すのですが、その際、人間にはわからないけど虫にはわかる匂いが出るのです。この匂いで虫が寄ってくるので、できれば肥料はあまりあげないほうがいいでしょう。

草対策−−「成長点」を切ることで成長を遅らせる

最後に、草対策のお話です。
市民農園やお庭で野菜を育てる場合、草対策としては、除草剤をまく、草刈機で刈る、抜くといった方法がありますが、それぞれに問題があります。

植物には「子孫を残したい」というDNAが組み込まれています。本当は花を咲かせ実をこぼすことで子孫を残したいのに、人間の都合で抜かれたり切ったりされるわけです。

草刈機などで草を刈った場合、残った部分はまだ生きています。そうすると「やべー、このままだと死にそうだから、もっと成長しないと」と思って、草はまた伸びてきます。

一方、草を抜く場合。草は、抜かれる時にアレロパシーという物質を出します。これは、芽吹いてない雑草の種に対して「俺は死んでしまうから、残ってる奴はよろしく頼む」と息絶え、芽吹いていない雑草の種は「俺の出番だ」と生えてくるわけです。抜いても抜いてもすぐに生えてくるのは、これが理由です。

おすすめの対策は、「成長点」を切ること。これは、植物の急所。地上と土の際のところにあります。ここの根っこ側をザクっと切ると即死状態で、成長点がない残った根っこは枯れてしまいます。抜かれているわけではないから、アレロパシーも出ません。少し面倒ですが、ノコギリみたいにギザギザした鎌をちょっと土に入れて刈りましょう。

刈った草は土の上に敷くのがおすすめです。太陽に当たらないようにすると光合成ができず、雑草の成長を遅くすることができます。農家が畑に黒いビニールで覆う「マルチ」にも、こうした雑草よけの効果があります。

草対策は、抜くのではなく刈る。時間はかかりますが、家庭菜園レベルだったらできると思います。以後の管理が楽になりますし、それまで草対策にかかっっていた時間を他のことに割けるようになり、作業時間が減るはずです。

(画像提供:iStock.com/Vaivirga)



清岡 賢さんのイベント動画が視聴できます。
https://www.sanctuarybooks.jp/event_doga_shop/detail.html?id=360



清岡 賢 (きよおか まさる)
 
合同会社えがおファーム代表社員
「お野菜を売らない農家」
「農薬も肥料も使わずにお野菜を栽培する農家」
「えがおファーム農縁長」
山梨県に拠点を置きと埼玉県と二拠点でお野菜作りを展開中

1976年 大阪府出身
サラリーマンの父親とパートタイマーの母親の元で育つ
1999年 株式会社東海デジタルホン(現:ソフトバンク株式会社)入社
エンジニアとして、「つながる」を作るネットワークの設計や保守、新サービスの企画開発部門に従事
2006年 上司との軋轢によりうつ病になり休職を経験
復職するもクスリが手放せない生活を送る
2008年 ソフトバンクモバイル株式会社(現:ソフトバンク株式会社)退社
以降もシステムエンジニアとして従事するが、クスリが手放せない生活は続く
2010年 家庭菜園をやりたいと思い、お野菜作りを家庭菜園を学べるスクールへ通う
スクールへ通う中でカラダが完全復調したこともあり、農を生業にすることを決める
2012年 えがおファームとして農業をスタート
農業体験をメインにお野菜の販売などを並行して行う
2020年 山梨県に拠点を移し、埼玉県と2拠点で農業を行う
2022年 「家庭菜園の先生」として「家庭菜園教室」を本格始動


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