第2回「【読書術】誰にでもできる1冊30分で読む方法。」
はじめまして。しんや(Instagram:shinya__books)です。僕は「ちょっと知的な本紹介」というコンセプトでInstagramをメインにSNSで本の紹介を行っています。ありがたいことに、現在はSNS総フォロワー17万人を超えております。
今、僕が率直に感じていることは、本の情報を必要としている人が想像以上に多いということです。昨今、ネガティブな話題が多い本の業界ですが、何気ない僕の本の紹介に17万人もの方々が目を向けてくれるくらい本の情報が必要とされているということを考えると、微力でも僕の大好きな本や読書のためにやれることがあるんじゃないかと思うようになりました。
そんな中で、こちらの「今は読めていない人のための読書案内」の連載では、「本への苦手意識はあるけど、いつかは読めるようになりたい」「昔はよく読んでいたけど、最近は忙しくて読めなくなった」という方に向けて、読みやすくてタメになるおすすめ本の紹介や本の読み方、本を実生活に活かすコツなどについて書いていきます。
第2回目の今回は、「【読書術】誰にでもできる1冊30分で読む方法」です。
先にお伝えしておくと、僕は特別な訓練が必要な速読スキルやフォトリーディングと言った特殊能力は何も持っておりません。
一文一文を追う速さで言うと、一般的な人よりも遅いくらいです。
そんな普通の僕が実際にやっている、特別な技術を必要としない「年間300冊読み、SNSで書籍紹介できるようになった本の読み方」をご紹介します。
ちなみに、先月は「【厳選23冊】人生が変わるおすすめ本」を書き、来月は「読書を日々の生活に活かす方法」を書く予定です。お楽しみに!
目次
1冊30分で読む目的
まずは、「1冊30分で読む」目的を明確にしておきます。
そもそも本を読む目的は、大きく学習と娯楽の2つに分けることができる。
今回の「1冊30分で読む方法」は、学習が目的になる読書にのみ使える読み方であり、また、一口に学習と言っても、「本に書かれている情報をそのまま習得する」という側面と「本に書かれている内容をもとに自分の考えを深める」という側面がある。
例えば、心理学本を読み、そこに書かれている“ミラーリング”や“好意の返報性”といった心理学テクニックを習得するというのは前者である。一方、哲学書で哲学者の思考に触れ、それをもとに自分の思考を深めていくというのは後者にあたる。
今回の「1冊30分で読む方法」は、前者の「本に書かれている情報をそのまま習得する」ための読書に活用できる読み方だ。
忙しい時間の中に短い時間でも、本からインプットしたいと考えている方は、ぜひこの方法を参考にしてみてください。
1冊30分で読む方法
それではここから、1冊30分で読む方法をご説明していきます。
この読み方は、さまざまな本の読み方に関する本を読んだ上で、僕が辿り着いた我流の読み方です。(笑)本の読み方に関するおすすめ本も最後にご紹介します!
「1冊30分で読む方法」の神髄は、「読む文章量を減らす」こと。
訓練によって、人間の能力が飛躍的に伸びることは考えにくい。例えば、走力で言っても、これから僕がどれだけ良い監督のもと最高の訓練を積んだとしても、今の100m走のタイムが半分になるということはありえないだろう。文章の処理スピードにおいても同じことだ。すべての文章をしっかりと追いながら読んだ場合、読み切るまでの時間を一気に短くすることは難しい。
そこで、今回提案する「1冊30分で読む方法」は、文章の処理スピードを速くするのではなく、読む文章量を減らすことがポイントになってくる。
「読む文章量を減らす」には、「読む章節を減らす」と「読む文章を減らす」という2つの視点がある。
ここから、この2つについて、それぞれ詳しく説明していきます。
読む章節を減らす
「読む章節を減らす」とは、その本から得たい情報が書かれている章節のみを読み、その他の章節はさらりと読み飛ばすということだ。
細かい説明に入る前に、「本は全て読まなくていい」ということを伝えておきたい。なぜか本というものは、途中で読むのをやめてしまったら、その本を読んでいないことにされてしまう。しかし、漫画やドラマでは、「○○話まで読んだ」や「○○君が出てくるところだけ見た」みたいなことが通用する。本も同じでいいと思う。読みたい部分、読むべき部分だけを読めば、その本を読んだのだと認めてしまってもいい。
では、具体的に読む章節をどのように取捨選択すれば良いのかを説明していきます。
まず、タイトルや“はじめに”“おわりに”といった本の本文以外の部分から「本の主張」を把握する。
多くの本はタイトルや“はじめに”を読むだけで、その本における著者の主張はだいたい把握できる。良いプレゼンの構成を考えてみても、発表の冒頭には抽象的な主張があり、途中で具体的な話などで説明し、最後に改めて抽象的に主張を伝えて終わる。本も著者の主張を伝えるための媒体という意味でこれと同じく、本も「主張(はじめに)→具体的な話(本文)→主張(おわりに)」という構成になっているパターンが多い。なので、まずは“はじめに”や“おわりに”などからどのような主張のもと書かれている本なのかを捉えておく。
次に、目次を読みながら、どの章節に自分が得たい情報が書かれているのかを見定め、読む部分を取捨選択する。
得たい情報が書かれているであろう章節、何となく興味を持った章節などを選択して読み進める。また、“はじめに”などから予め本の主張を捉えられていれば、一部分を読むだけでも十分に理解することが可能だ。
以上を意識するだけで、もともと1冊2時間かかっていた人で読む分量が半分まで減らせたとしたら、単純計算で時間も1時間程度まで減らすことができる。
読む文章を減らす
「読む文章を減らす」とは、本文を読んでいる際に、自分がすでに知っている内容を読み飛ばすということだ。
順を追って説明していきます。
まずは、前述の目次を見る際に、各章節の内容を予測する。“はじめに”などから捉えた「本の主張」をもとに目次の章節タイトルを見れば、ある程度の内容の予測が可能になる。もちろん「読む章節」のみでいい。慣れるまでは、箇条書きで簡単にメモしておくのもおすすめ。
実際に、本文に入るときには、この目次で立てた予測の正誤を判定する感覚で読み進めていく。目次で立てた予測通りで既知の内容だった場合は、さらりと読み飛ばす。逆に、目次で立てた予測が外れている、或いは、予測すら立てられない未知の内容だった場合には、詳しく読み進める。そして、詳しく読んでいる時にも、その先の内容を予測して、予測と一致するようになった時点で、その他とはさらりと読み飛ばして次の章節に移る。(予測を判定する感覚で読むことには、誤っていた時に記憶に残りやすいというメリットもある。)
また、予測の正誤は意外と簡単に判定できる。各章節に書かれている内容も基本的にはその章節ごとの「主張→具体的な話→主張」という構成で書かれている場合が多い。なので、章節の冒頭数行と末の数行を読み、自分の予測が正しかったか誤っていたかをある程度判定できる。
このように、徹底的に既知の内容の文章を読み飛ばすようにすれば、「読む章節を減らす」から、さらに読む分量を減らすことができる。慣れてくれば、普通に読む三分の一くらいの時間で読み切れるようになる。
もう一つ大切な「時間制限」
最後に、1冊30分で読むためにもう一つ重要なことがある。それは、少し短いと感じる時間制限を設けることだ。
今回は30分としているが、実のところ、あまり時間の長さに大きな意味はない。15分でも45分でもいい。はじめは1時間くらいで設定してもいいと思う。大切なのは、「少し短いと感じる時間」で区切るということだ。
人間は、少し短いと感じる時間制限がある方が集中力が高まる。例えば、高校生の時の小テストの勉強なんかを思い出してほしい。次の授業に小テストがあることをすっかり忘れていて前の休み時間10分ほどで詰め込まないといけない時、10分という時間制限があるおかげで、前夜に長時間かけてダラダラ覚えるよりも集中して一気に覚えられたりする(よくやってました笑)。
読書も同じ。自分にとって少し短いと感じる時間、少し足りないなと思う時間を設定して、その範囲内でその本から得たい情報を得るために「読む分量」を絞ることを意識する。そうすれば、高い集中力を維持し、最大限まで読書の効率を高めることができる。
まとめ
「1冊を30分で読む方法」をまとめるとこんな感じ。
①“はじめに”や目次などから本の全体像を捉え、読む章節を絞る。
➁各章節の内容を予測し、正誤を判定する感覚で読み進めることで、既知の内容の文章をさらりと読み飛ばす。
③時間制限を設けて、読む時間配分を考えつつ、自分の集中力を最大限まで引き上げる。
ちなみに、➀は書店で済ましてしまうことが多いです。
1冊30分で読む注意点
ここからは、1冊30分で読む上での注意点を3つご紹介します。
注意点➀:使えないジャンルがある
この「1冊30分で読む方法」には、適さないジャンルというものがいくつかある。
❒ 小説、文芸作品
❒ 哲学書や学術書
❒ 予備知識が少ないジャンル
上の2つのジャンルは、今回の「1冊30分で読む方法」の目的の「本に書かれている情報をそのまま習得する」が読書の目的となりづらいことが理由だ。次に、一番下の「予備知識が少ないジャンル」については、目的はあっていたとしても、予備知識がないと読む分量の絞り込みや内容の予測が極めて難しい。
この読書術は最低限の予備知識を持っているビジネス書や自己啓発本、実用書などのノウハウ本への活用に適している。
注意点➁:読んでいない部分が生まれる
ここまでに何度も書いてきた通り、この方法は読む分量を絞ることが神髄である。ということは、読んでいない部分も生まれてくる。
例えば、他の人との話の中で、その本の話が出てきたとしても、満足な紹介や説明が難しくなる。「読んでるって言ってんのに、全然知らないやん」みたいになる可能性も考えられる。(笑)
しかし、これに関しては割り切ってしまうしかない。学習のために本を読む以上、30分で1冊分のある程度の知識を頭に入れるということに対して、多少の読み漏らしが生まれるということは、仕方のない損切だと考えるべきだ。
注意点③:自分の頭で考えられない
最後の注意点が「自分の頭で考えられない」ということである。
読書に関する名著中の名著ショーペンハウアーの『読書について』の中で「本を読むことは、他人の頭で考えること」と書かれている。これは、多読により自分の頭で考えない読書をすることへの批判的な内容の本だ。
今回紹介した「1冊30分で読む方法」には、「自分の頭で考える」という手続きはない。本に書かれた内容をそのまま効率的に習得するための読書術だからである。その結果、ショーペンハウアーが言っているように自分の頭で考える事を放棄してしまった読書(他人の頭で考えている読書)になりかねない。
なので、バランスを意識する必要がある。ビジネス書や自己啓発本、実用書などの情報をインプットするための本を読む際に今回の読書術を活用しつつ、時には長い時間をかけて哲学書や文芸作品を読み耽り、本の内容について自分の頭でじっくり考える時間を設けることが大切だと思う。