正月に届いた督促状と、母の死
聞き手
ビジネスコミックという分野には、どのように進出したのでしょう。
漫画の依頼をしたい人と、漫画家をつなげる「まんがたり」という会社がありまして、その契約作家となったのがきっかけです。まんがたりを立ち上げた前田雄太さんは、僕と同じITベンチャーの出身者で、声をかけていただいたという経緯があります。
齋藤さん
聞き手
すばらしい人の縁に恵まれましたね。
そうなんです。それで実際に描いてみると、ビジネスコミックは自分にぴったりでした。ベンチャー企業で働いた経験がいかせて、できることとやりたいことがぴったりとはまった感覚がありました。
齋藤さん
聞き手
描きたいものがしっかりと定まったのですね。
はい。ただ、これからというタイミングでコロナ禍となり、広告系の仕事が激減してしまったんです。
齋藤さん
聞き手
それは悔しいですね……。
食べていかねばならないので、Youtubeなど漫画以外でできることにチャレンジしてはみたのですが、なかなかうまくいかず、途方にくれました。そうして焦りの日々の中で年を越し、2021年の正月に、1枚の督促状が家に届いたんです。
齋藤さん
聞き手
……経済的に、苦しくなってしまったということですか？
いえ、実はその督促状は、相続税の支払いに関するものでした。それが届いたことで、僕は2020年の夏に、母が亡くなっていたと知りました。
齋藤さん
聞き手
なんと……。
結局は顔も知らず、一度も会えないまま、母と別れたという事実に、唖然としました。そうして気づいたんです。僕が漫画の道へと進んだきっかけとなった母に、いつか漫画を読んでほしい、自分ががんばっていると伝えたいという思いが、自分の人生の目標となっていたことを。
齋藤さん
聞き手
…………。
母の死をきっかけに、僕の中で漫画を描くエネルギーが枯渇してしまいました。これからいったい何をして生きればいいのか。自分は本当に漫画が好きなのか。自問自答するばかりで、身動きが取れなくなりました。まさにゾンビ状態で、何もできずたださまようばかりでした。
齋藤さん
聞き手
……そこからどのように立ち直っていったのでしょうか。
きっかけは、まんがたりを通じ、サンクチュアリ出版からこの本の依頼があったことでした。つらい時期でしたが、せっかく選んでいただいたのだからとお引き受けしたのが、転機となりました。
齋藤さん
聞き手
自らの内面や学びを、話す、書く、行動するといったアウトプットにつなげ、人生を変えていくビジネス書『アウトプット大全』の、漫画化という依頼でしたね。
はい。ネームに取り掛かって気づいたのは、漫画を描くという行為もまたアウトプットであるということでした。主人公である健（たける）にゾンビ状態の自分を重ね合わせ、セリフで心情を吐露していく中で、次第に心が楽になっていく感覚がありました。
齋藤さん
聞き手
社畜ゾンビ化して苦しむ健は、まさに分身なのですね。
はい。健の「生きてる感じがしないんです……」「俺は自分のやりたいことすら言葉にできない」といったセリフは、僕自身の叫びでもあったと思います。
齋藤さん
聞き手
だからこそ、胸に訴えかけるものがあります。
健は、漠然と「成功したい」という思いを抱えていますが、そんなキャラクターを描くにあたり、じゃあ僕にとっての人生の成功はなんだろうと突き付けられ、自分の中で成功が定義できていなかったと知りました。
齋藤さん
聞き手
それで、成功の定義は見つかりましたか。
はい。まずは自分のように、人生が止まっている人に漫画を届け、その背中を押すような漫画を描くこと。それが今、目指すべき成功であると、目標が明確になりました。
齋藤さん
聞き手
アウトプットの成果ですね。
もうひとつわかったのが、やはり自分は漫画を描くのが大好きだということです。これからは母のためではなく、自分のために漫画を描いていく。そう思えたことで、迷いがなくなりました。
齋藤さん
聞き手
物語の中で、健はアウトプットを通じ、人生を取り戻していきます。
はい。人生にはときに、心がゾンビ状態になるようなつらいこともあるでしょう。しかしそこで、ほんの少しの勇気をもって、殻にこもることなくアウトプットを続ければ、いつしかまた前に進めるようになる。漫画を通じそんなメッセージが伝わるよう、願っています。
齋藤さん
聞き手
ビジネスコミックという分野には、どのように進出したのでしょう。
漫画の依頼をしたい人と、漫画家をつなげる「まんがたり」という会社がありまして、その契約作家となったのがきっかけです。まんがたりを立ち上げた前田雄太さんは、僕と同じITベンチャーの出身者で、声をかけていただいたという経緯があります。
齋藤さん
聞き手
すばらしい人の縁に恵まれましたね。
そうなんです。それで実際に描いてみると、ビジネスコミックは自分にぴったりでした。ベンチャー企業で働いた経験がいかせて、できることとやりたいことがぴったりとはまった感覚がありました。
齋藤さん
聞き手
描きたいものがしっかりと定まったのですね。
はい。ただ、これからというタイミングでコロナ禍となり、広告系の仕事が激減してしまったんです。
齋藤さん
聞き手
それは悔しいですね……。
食べていかねばならないので、Youtubeなど漫画以外でできることにチャレンジしてはみたのですが、なかなかうまくいかず、途方にくれました。そうして焦りの日々の中で年を越し、2021年の正月に、1枚の督促状が家に届いたんです。
齋藤さん
聞き手
……経済的に、苦しくなってしまったということですか？
いえ、実はその督促状は、相続税の支払いに関するものでした。それが届いたことで、僕は2020年の夏に、母が亡くなっていたと知りました。
齋藤さん
聞き手
なんと……。
結局は顔も知らず、一度も会えないまま、母と別れたという事実に、唖然としました。そうして気づいたんです。僕が漫画の道へと進んだきっかけとなった母に、いつか漫画を読んでほしい、自分ががんばっていると伝えたいという思いが、自分の人生の目標となっていたことを。
齋藤さん
聞き手
…………。
母の死をきっかけに、僕の中で漫画を描くエネルギーが枯渇してしまいました。これからいったい何をして生きればいいのか。自分は本当に漫画が好きなのか。自問自答するばかりで、身動きが取れなくなりました。まさにゾンビ状態で、何もできずたださまようばかりでした。
齋藤さん
聞き手
……そこからどのように立ち直っていったのでしょうか。
きっかけは、まんがたりを通じ、サンクチュアリ出版からこの本の依頼があったことでした。つらい時期でしたが、せっかく選んでいただいたのだからとお引き受けしたのが、転機となりました。
齋藤さん
聞き手
自らの内面や学びを、話す、書く、行動するといったアウトプットにつなげ、人生を変えていくビジネス書『アウトプット大全』の、漫画化という依頼でしたね。
はい。ネームに取り掛かって気づいたのは、漫画を描くという行為もまたアウトプットであるということでした。主人公である健（たける）にゾンビ状態の自分を重ね合わせ、セリフで心情を吐露していく中で、次第に心が楽になっていく感覚がありました。
齋藤さん
聞き手
社畜ゾンビ化して苦しむ健は、まさに分身なのですね。
はい。健の「生きてる感じがしないんです……」「俺は自分のやりたいことすら言葉にできない」といったセリフは、僕自身の叫びでもあったと思います。
齋藤さん
聞き手
だからこそ、胸に訴えかけるものがあります。
健は、漠然と「成功したい」という思いを抱えていますが、そんなキャラクターを描くにあたり、じゃあ僕にとっての人生の成功はなんだろうと突き付けられ、自分の中で成功が定義できていなかったと知りました。
齋藤さん
聞き手
それで、成功の定義は見つかりましたか。
はい。まずは自分のように、人生が止まっている人に漫画を届け、その背中を押すような漫画を描くこと。それが今、目指すべき成功であると、目標が明確になりました。
齋藤さん
聞き手
アウトプットの成果ですね。
もうひとつわかったのが、やはり自分は漫画を描くのが大好きだということです。これからは母のためではなく、自分のために漫画を描いていく。そう思えたことで、迷いがなくなりました。
齋藤さん
聞き手
物語の中で、健はアウトプットを通じ、人生を取り戻していきます。
はい。人生にはときに、心がゾンビ状態になるようなつらいこともあるでしょう。しかしそこで、ほんの少しの勇気をもって、殻にこもることなくアウトプットを続ければ、いつしかまた前に進めるようになる。漫画を通じそんなメッセージが伝わるよう、願っています。
齋藤さん
＜語り手＝齋藤邦雄／取材・文＝國天俊治／写真＝千葉悠＞
齋藤邦雄（さいとうくにお） 某メガベンチャー勤務後、『賭博黙示録カイジ』などの作者、福本伸行氏に師事。その後『GANMA!』『週刊SPA!』にて連載。著作に『スター★ボイス』『お金0.0/ ビットコインが★なくなりました』『超速ストレッチ』などがある。
もしも社畜ゾンビが『アウトプット大全』を読んだら
樺沢紫苑（著）・齋藤邦雄（漫画）
定価：1,400円（税込1,540円）
アウトプットってそういうことだったのか！
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