私が著者になるまで

相手へのリスペクトを素直に表現する「かわいい言い方」で人生が変わる! 山﨑拓巳

#私が著者になるまで

人間関係を変える「かわいい言い方」とは?

 

聞き手
その後、「モチベーションアップ」や「コミュニケーション術」などをテーマにした本を次々に出版されて、最新作の『なぜか感じがいい人のかわいい言い方』は、山﨑さんの56冊目の著作となりますね。
サンクチュアリ出版では、ずっと編集者の橋本圭右くんとタッグを組んで本をつくってきました。これが2人でつくった14冊目の本だけど、何度も打ち合わせをするうちに「山﨑さんって人に何かを伝えるときに、独特の表現をされることがありますね」という話になって。自分では普通だと思っているんだけど、確かに他の人から見たら特徴的かもしれない。じゃあ、その“山﨑拓巳オリジナル”の話し方を文章化してみよう、ということになったんです。
山﨑さん
聞き手
挨拶から依頼、返事、提案、謝罪……など「こういうときはこう答えればいい」という実例が99例も掲載されていて、非常に実践的なつくりとなっています。ビジネスマナーやコミュニケーション術の本は数多くありますが、「かわいい言い方」に着目した理由は?
「感じの悪い言い方」や「人を怒らせる言い方」って、相手にマウンティングする話し方ですよね。一方で「かわいい言い方」っていうのは、その逆で、人をリスペクトするときの話し方。「魂のシッポを振る」イメージです。
山﨑さん
聞き手
「かわいさ」は、ビジネスにおいても武器になりますか?
だって、エライ人にかわいがられる人が、次に引き上げられていく人になるんだから。他にも、「かわいい」という表現は、日本人が持つ独特のセンスだと思うんですよね。海外にも輸出できるような、日本の良さでもある。皆さんがもともと持っているものなんですよ。
山﨑さん
聞き手
「かわいい話し方」って目上の方に実践するのは割とスムーズだと思うんですが、上司から部下へ、といったパターンだと難しいですよね。この本には、部下にパワハラと受け取られないよう、指導や注意をする際の例もたくさん載っています。
自分の立場が上になったときにこそ、その人の本質が出ると思うんです。たとえば、タクシーの運転手さんが道を間違えたとき、あなたならどう指摘するか。高圧的な言い方をするとしたら、それがその人の本質だといえる。もう、こうなると「話し方」というよりも、その人自身の「生き方」の問題だよね。
山﨑さん
聞き手
上司には丁寧なのに、レストランなどでお店の人に威張っているような人を見ると「うわっ」と思っちゃいますもんね。個人的に、この本は社会的な立場が高い中高年の男性にこそ、読んでいただきたいと感じました。
「タテ社会」しか存在しなかった昔なら、立場的に下の人たちを特にケアしなくてもよかったかもしれない。でも時代が変わって、「Z世代」のような若者たちが職場に現れたら、そういうわけにもいかないですよね。ネットやSNSのおかげで、タテだけでなく、横のつながり、価値観を共にする斜めのつながりなど、いろいろなコミュニティーが出現した現代では、今までなら出会わなかったような人たちとも、うまく接していく必要がある。そこで生まれるコミュニケーションの障害に対して、この「かわいい言い方」をトラブルシューティング的に使ってもらえれば、著者冥利に尽きますね。
山﨑さん
聞き手
「あまり気が進まない仕事を頼まれたとき」とか、「相手の要求がエスカレートしてきたとき」など、使えるフレーズがいっぱいです!
「あるある」っていうケースばかりで、非常に生々しいでしょ?(笑)
山﨑さん
聞き手
「陰口に巻き込まれそうになったとき」、「相手にマウンティングされたとき」などは、ビジネスに留まらず、ママ友付き合いにも使えそう。
「○○さんから聞いたけど、××さんってこうなんですって! ご存知〜?」って言われたらひと言、「……いろいろありますよねぇ……」って。「そうなんだ、分かるわ〜」と言ってしまったら、巻き込まれるからね。もうこれしかない!
山﨑さん
聞き手
「いろいろあるわよね」で済ませて、肯定も否定もしないところがポイントですね(笑)

一時感情を素直に出す練習を

 

聞き手
「建前」で話すことが社会人としてのマナーだと思い込んでいたので、ビジネスの場でも「一時感情」を素直に言葉にすることが大事だ、というメッセージは、目からウロコでした。
ミスを繰り返す部下がいたとして、その腹立たしさを突き詰めて考えていくと、「1回教えたら分かってくれるという信頼があったのに、それを裏切られたから」なんだよね。つまり、根底にはその部下に対するリスペクトがある。じゃあ、その元となる「信頼していたからこその悲しさ」という一時感情をそのまま表して、部下にも「どうしたらいい?」と相談してみるといいんです。頭ごなしに叱るよりも、きっと相手の心に響くはず。
山﨑さん
聞き手
なるほど。たとえば、憧れの人に会って何を話したらいいか分からないようなときは、うまく話そうと気負うのではなくて、「ずっと憧れていたので、今すごく緊張しているんです!」と素直に言ったほうが気持ちは伝わるということですか。
自分の心に今、起きていることの実況中継をしてみればいいと思います。その人に伝えたいことの元となる感情は何なのか、自分自身を探ってみる。そうすると相手に言いたいことがたとえ怒りや失望だとしても、その根底にあるものは「尊敬」であったり、「愛」であったりすることに気付くことができます。
山﨑さん
聞き手
自分の本当の感情と向き合うことが大事なんですね。
あとは、心を寄せて相手の話を聞くこと。いわゆる「傾聴」ですね。自分が話すときはイキイキしているのに、人の話を聞いているとき、目の力が抜けている人って結構います(笑)。無反応の人に対して、気持ちよく会話を続けるのって難しいよね。
山﨑さん
聞き手
マスク越し、PCの画面越しの対話が増えている今だからこそ、要注意ですね。
そう。「メラビアンの法則」として有名な研究だけど、コミュニケーションを取るときに人が重視するのは、視覚情報が55%、聴覚情報が38%。言語情報はわずか7%にしか過ぎない。ヴァーバルな事柄よりも、会話しているときの雰囲気やしぐさ、見た目から得る情報からその人の印象を判断しているんです。
山﨑さん
聞き手
「どうやってうまく話すか」というほうに注意が行きがちですが、本当に重要なのはまず「相手の話を聞く姿勢」ということですね。