あの本とカフェへ。

vol.1 「ダメ」の吸引力

連載エッセイ「あの本とカフェへ。」
大人気Webマガジン「かもめと街」を運営する、街歩きエッセイストのチヒロがサンクチュアリ出版の本を持ってお気に入りのカフェを巡ります。

「押すなよ、押すなよ!」は「ぜったい押せよ!」の意味だということは、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんが身を以て全国民に教えてくれたことだ。

言葉と逆の意味を指す現象で思い出したのは、目標を達成できない人は、あえてそれを「絶対にやらない」という目標を立てるとやりたくなるという、やる気を逆手に取った勉強法のこと。

たとえば、ブロガーとして週3くらい更新しているわたしの場合。
「毎日1,000文字書く」が目標なら、「絶対に1文字も書かない!」と強く決心する。

すると、どうだろう。

天邪鬼な性格の場合だが、SNS用のテキストとか、はたまた依頼された記事だとかがするりと書けちゃったりする。あんなに書けなかったのに。書けなすぎて、部屋の掃除を始めちゃったりもしたのに。

禁止されたものへの抗いたい欲求は、誰にでもあるのかもしれない。

わたしは毎日ブログを書くことを目標にしていた。いや、今もしている。

が、まるで出来ていない。毎日見てくれている人も少なからずいるし、せっかくなら少しでも楽しみになれたら嬉しい。気持ち的には、たった1日で23記事もアップしちゃうような、市川海老蔵さん並みに更新したい。(2021年2月1日20時の時点です)

「書くならきちんと書かねば。」と思うと、いつまでも更新できなくて、いつまでもネタは山積みで、ひとりで脳内パニックを起こしてもがくこともしばしば。

頭に溜めておける容量には限界があって、それを整理するためにブログを書いているところも大きい。

それなのに気楽に更新できないのは、少しでも読んでよかったと思われたいから。すごいモノを生み出す力もないのに、みんなが驚くクオリティーを自らに求めてしまう。つらい。

いつになったら「自分を良く見せたい欲」を捨てられるのだろうか。やり続けるしか方法はないだろうに、堂々巡りで頭がいっぱいになってしまうこともしばしば。

そんな風に頭が重くなった時には、「すみません!ちょっと助けてください!」とばかりに、喫茶店やカフェへダッシュする。

こういう時は、日常とは違った世界観にどっぷりひたれる店がいい。

中野にある喫茶店で、ブルーなクリームソーダでも飲んで落ち着こう。上野にある2号店にはお邪魔したけれど、ルーツとなる1号店も気になってたんだ。

中野駅を出て、商店街をぐんぐんと進むと吸い込まれるようにブロードウェイへ。

つい最近まで、なぜか中野ブロードウェイの先は行き止まりだと思っていて、その先にも街が広がってると思っていなかった。なぜ…。ブロードウェイがあまりにも異界への入口っぽいからなのかも。

ブロードウェイを通り抜けて、まず目に入るのは〈天下一品〉。その上には〈不純喫茶ドープ〉の文字が。天一のラーメン食べた後に行くドープも、なんだかギャップが中野っぽくていいな。

ところで、店の名前、ちょっと気になりますよね。「純喫茶」じゃないの?って思いますよね。

「不」がついただけで不穏な雰囲気。

いまブームになっている「喫茶店」はいわゆる「純喫茶」なわけであって、なぜわざわざ「喫茶店」に「純」をつけたかといえば、特殊喫茶とよばれる大人の喫茶店?などが登場したことによるものなのです。どんな店かはご想像にお任せします。

そういえば先日、とある街を散歩していたら、山ほど喫茶店が並んでいてびっくり。

喫茶店をテーマにした本にも雑誌にも全然マークされてない地域がまだあったなんて…!と興奮し、足を踏み入れようとしたところでストップ。

「喫茶店」という名の、とある大人の案内所でした。危なかった。無知は危険。

でも、〈不純喫茶ドープ〉は、キチンとした喫茶店なのでご安心を。

「不」がつく理由のひとつは、「純喫茶」を名乗るところはアルコールを出さないという括りがあったから。

そう、ここではお酒が飲めます!子どもが好きなクリームソーダのアルコール入りも!

「不純」というフレーズに惹かれてしまうのは、闇が落ち着く日もあるからでしょうか。

思わせぶりなさくらんぼのネオンサインも、「不純」をキーワードにするとなんとなく納得。

喫茶店とカフェと酒場を混ぜ合わせたら、〈不純喫茶ドープ〉の完成!

2020年にオープンしたとは思えない雰囲気のインテリアは、もともと喫茶店だった物件をそのまま使っているから。

古いものへのリスペクトを持ちつつ、現代らしくアップデートしているからなのか、そのごちゃまぜ感にドキドキします。

こんな高度なこと、なかなか出来ない。新しくおしゃれに作るのは簡単かもしれない。けれど、古いものを、古臭くなりすぎずに新しく見せるセンスに脱帽。

〈不純喫茶ドープ〉でオーダーしたいメニューは、もちろん青いクリームソーダ。

セーラーマーキュリーのような水色のソーダに浮かぶ、まんまるのバニラアイスには、さくらんぼがちょこんと鎮座しています。うーん、フォトジェニック!

ついついじっくり写真を撮りたくなっても大丈夫。すぐにアイスが溶けないように、しっかりと氷でホールドされています。

まるで宮古島の海のような、まばゆいブルーのソーダに浮かぶ気泡を見ているだけでうっとり。

デザートには、試行錯誤してたどり着いたレシピで作られた、クラシックなプリンを。

スプーンで救おうとすると、ぎゅむっとプリンの抵抗を感じるほど、しっとりとかためのプリン。

ゆっくりと、ひとくちずついただきながら、つかの間の読書タイムを。

ここで読みたい本は、「ぜったいに おしちゃだめ? ラリーとおばけ/ ビル・コッター(著)」。

なんと、シリーズ累計45万部突破を誇るベストセラーの絵本だそう。

帯には「この絵本を読んだ2~4歳児の91%が大興奮!」と書かれています。

そんな本ある?数値上乗せしてない?(すみません)

おそるおそるページをめくると、丸いボタンが大きく描かれていました。

絵本の見開き左ページには、赤くて丸いボタンが描かれ、右ページにいるモンスターの「ラリー」がこちらに話しかけてきます。

しょっぱなから主人公のラリーは「そのボタン、おさないでよ!」と念を押します。

でも。

「押すな、押すな」は「ぜったい押せよ!」の意ですよね。だって上島竜兵さんが熱湯風呂に入ろうとして、誰も押さなかったら「押せよ!」って怒ってましたもんね。

この本はいわゆる子供向けのおもちゃがついた本と違って、紙の絵本。紙に印刷されたボタンを押したって何も変化はないはず。

さて、あなたならどうする?

わたしは、そう言われたら押しちゃう。ごめんね、ラリー。押さないでって言われたから押しちゃった。紙だし、どうせバレないかなと思って。

「いい大人のくせに、ダメって言われたことやっちゃうんだね」って?ダメって言われるとやりたくなるもんなのよ、大人も子どもも。立ち入り禁止の先に何があるのか見たくなっちゃうのと一緒ですよ。

さて、押してみますか。

…ボタン押したら、まあそうなるよね。ごめんよ、うん。わかった、もう一度押せば元どおりになるのね。

あれ?なんかおかしくない?いや、こっちにだけ見えているだけかな。

あ、気付いちゃった?

え、コレを押したからこんなことになっちゃったって?

ごめんー!って謝ってももう遅いよね…えっ、今度はたくさん押せって?わがままだなぁ。わかったよ、押せばいいんでしょ。あれ、押してよかったのかな…?

という具合に、何度もボタンを押してしまった。

これはたのしい。

この絵本を読んだ90%の子どもが、「もう一度読んで!」とせがむというのも分かる気がする。

あまりに楽しかったので、妹へ送り、2歳と4歳の甥っ子の反応を聞きました。

2歳はとあるページで号泣し、4歳は届いてすぐ3度読んだものの、怖くて結局ボタンは押さずじまいとのこと。

…ボタン、押さない子もいるんだね…!

著者:チヒロ(かもめと街)

かもめと街
https://kamometomachi.com

Twitter:
@kamometomachi 

■不純喫茶ドープ
中野店 / 東京都中野区新井1-9-3 グレースビルTMY 2F
Twitter:https://twitter.com/kissadope
Instagram:https://www.instagram.com/kissadope/

この記事は、「ぜったいに おしちゃダメ? ラリー と おばけ」の新刊コラムです。


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え!? おばけ!? どこどこ? 今までさんざんな目にあわせてきた謎のボタン。今度こそは「絶対に押さない」と決めていたけど、突然の停電で真っ暗に。