Twitterで累計50万以上リツイートされたマンガ『パフェねこ』シリーズ。初の書籍『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』は、人間関係に悩むさまざまな世代の読者から支持されました。そしてこのたび、待望の続編が登場! 著者のJamさんに出版への思いや裏話をお聞きしました。
<聞き手・三橋温子>
目次
コロナ禍に読みたくなる、「孤独」をテーマにした続編
サイン会や企業とのコラボでいろんな場所に行きましたが、その地域の読者や書店の方々から温かい感想を直接いただけて感激しました。
以前、西日本豪雨で家が流されてしまったという小学生のお子さんのお母さんからお手紙をいただいたことがありました。「子どもが絵を描くことが好きで、将来はJamさんのようになりたいと言っている」と。後日、広島で開催したサイン会にその親子が来てくださって、とても嬉しかったですね。
もともと『パフェねこ』シリーズの続編を描きたいなとは思っていて、描くなら「孤独」をテーマにしたいと考えていました。私自身、昔は孤独感に悩むことが多かったので、同じようにつらい思いをしている人がたくさんいるのではないかと思ったからです。
世の中がコロナ禍に陥ってからは、孤独に関する悩みをより一層耳にするように。強い人だと思っていた人がSNSで「孤独を感じる」と漏らしていたりして、みんな心の底にはそういう気持ちを抱えているんだなと思いました。
私は10年以上フリーランスで、しかもコロナ前に入院を経験していたので、ひとりの時間にはすでに慣れていましたが、「人に会えなくて寂しい」「ひとりだと仕事ができない」といった相談も多くいただきました。そんななか、サンクチュアリ出版の編集の大川さんから続編のお話をいただいたんです。
人と一緒にいるからこそ感じる孤独
仕事やプライベートでいろんな人と出会い、一人ひとり違う人間であることを理解してからは、「わかり合えなくて当然」と思えるようになりました。家族は「人生で最初に会う他人」だと気づいたし、恋人には「私をわかってほしい」と依存ばかりして、一緒にいるために自分らしく生きることを我慢していたことにも気づいたんです。
そもそも自分のことすらよくわからないのが人間。それなのに他人に100%理解してもらえるはずがないですよね。以前の私は、自分でも出せない答えを外に求めていたのだと思います。
読んだあとに自分なりの答えが見つかる本を
「初心を忘れない」ことです。本のタイトル『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』の元ネタになったマンガをTwitterに投稿して大きな反響をいただいたとき、「気持ちがラクになった」という声をたくさんいただきました。私と同じように人間関係に悩んでいる方々のために、その人の立場に立って丁寧に描こう。そんな思いで、そのあとも『パフェねこ』シリーズを描き続けてきました。
あれから何冊か本を出版させていただき、最初のころに比べたらこのお仕事にも慣れてきたと思います。でも、描く内容まで「慣れて」しまってはいけない。初心を忘れず、「これが最初で最後」と思いながら、伝えたいことを出しきるつもりで描きました。
そうですね。私自身、誰かにストレートに言われた解決策やアドバイスは、正直あまり身になっていなくて…。言われたあとに自分で考えて納得したことのほうが、何倍も印象に残っているんです。悩みは一人ひとり違うし、環境や状況の違いもあるので、本を読んだあとにみなさんがそれぞれ考えて自分なりの答えを出してくれたらいいな、と思っています。
あと、悩みを扱った本ではありますが、読んでつらくなるような本にはしたくありませんでした。そのため、教えたり諭したりするのではなく、相談に乗るような感覚で描くことを心がけました。
マンガを描き続けることがいちばんの野望
これからもずっとマンガを描き続けることが私のいちばんの野望です。出版しておいてナンですが、本来なら、人間関係に悩む人がいなくなってこういう本が世の中からなくなることが理想。そんな時代がきたら、誰もが楽しい気持ちになるような本を描きたいです。
あとは、昔バンドを組んでいたので、また機会があれば歌いたいですね。
やりたい気持ちを忘れず、諦めさえしなければ、できるタイミングがきっと訪れます。私もマンガを描いていない時期が20年以上ありましたが、フリーのゲームデザイナーになってから改めて自分のやりたいことを見つめ直し、ずっと頭の片隅にあった「マンガを描く」ということをTwitterでコツコツ始めるようになりました。それが今の私につながっています。
今はネットやSNSがありますから、年齢もあまり関係ない時代。タイミングが訪れるまで諦めずに、「やりたい!」という気持ちをぜひ持ち続けてください。
<語り手=Jam/取材・文=三橋温子>
Jam(じゃむ)
ゲームグラフィックデザイナー。イラストレーター。漫画家。
人間関係の悩みを描いたマンガ「パフェねこシリーズ」が、Twitterで累計50万以上リツイートされ話題になる。 著書にベストセラーとなった『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(サンクチュアリ出版)、『にゃんしゃりで心のお片づけ。』(PHP研究所)、『言いにくいことはっきり言うにゃん』(笠間書院)など。