アイドルオタク、古典文学オタクの私だからわかった“バズる文章”の秘密

三宅香帆

京都大学大学院在学中に書いた記事がバズったことをきっかけに、文筆業を始めた三宅香帆さん。現在は都内でOLをしながら、インターネットや雑誌にエッセイやコラムを執筆し、独自の文体とユニークな表現が話題です。新刊『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』では、人から“モテまくる文章”を書くにはどうすればいいかをまとめています。そんな三宅さんが、いかにして作家への道を歩んできたのか、インタビューしました。

<聞き手・國天俊治>

聞き手

京都大学卒、文芸オタクの25歳で、文筆家兼批評家……ちょっと気になる点が盛りだくさんすぎて、何からいじっていいかわかりませんが……。

どこからでも!

三宅
聞き手

小さな頃から、本は好きでしたか?

……だいぶベタなところからきましたね。はい、本は好きでしたよ。親がよく読み聞かせしてくれていたからもあるのかな。小学生から図書館に通って、休みはブックオフで漫画を読み倒す日々でした。

三宅
聞き手

なるほど、早くから文芸オタクの道に入ったんですね。

いえ、小さな頃はオタクというほどではなかったです。実家が高知県高知市なんですが、すごい田舎で、本以外の娯楽がありませんでした。小学校は山の中にあって自然豊かな環境だったけど、外で遊ぶのも嫌いだったので、本を読むくらいしかやることがなかった、というのもあります。あ、そういえばうちの地元の小学校は当時すごく荒れていて、毎日のように窓ガラスが割られていたっけ。懐かしいなあ。

三宅
聞き手

(追憶が急にバイオレンスに……)

聞き手

そんなハードな小学校時代に、どういった本を読んでいたんですか?

岩波少年文庫や、青い鳥文庫かなあ。でもそれよりも漫画にハマってましたね。『りぼん』とか『なかよし』っていう雑誌の全盛期で、友達とは漫画の話ばかりしてました。

三宅
聞き手

その頃から、文章は得意でしたか?

文章を書くのは好きでした。でも母から「文章がふわふわしすぎている、わかりづらい」と言われていました。うちの母は“批評家体質”で、私はしょっちゅう何かしらの指摘を受けていたように思います。

三宅

都会の女子高生に生まれて、同人誌を出したかった

聞き手

文芸の世界に触れたきっかけは?

中高一貫の中学に入って、月に4冊くらい本を読むようになったんですけど、そこで恩田陸さんが好きになったのが、始まりかもしれません。恩田さんは、エッセイなどで本の話をたくさん書いていて「この作品の元ネタはこの古典」なんて、赤裸々に紹介してくれていたんです。それで私も、じゃあそっちも読んでみようということで、文学や古典にも興味が広がっていった感じです。恩田さんから学んだのは、世の中にオリジナルはなく、いろいろなものが影響し合った結果として作品ができあがっているということでした。

三宅

聞き手

なるほど、ではその頃からついにオタクの道に……

オタクってところをやけに掘りたがりますね……。まあ高校で、古典を元ネタにした漫画にハマったというのはあります。『あさきゆめみし』と『なんて素敵にジャパネスク』が大好きすぎて、元ネタのほうも知りたくなって、古典に目覚めました。ただ、嗜好が古典の方面に行くと、なかなか友達ができないんですよね……。ひとりで盛り上がっている感じでした。それが寂しくて、ああ、私も都会の女子高生になりたかった、同人誌とか作ってコミケに出たかった、と思い、田舎に生まれたことを呪いましたね。

三宅

聞き手

当時の三宅さんの中では、都会の女子高生イコール同人誌だったんですね……。

古典を読むようになってから、歴史モノ全般に興味が波及して、新選組にもハマりました。司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んだり、大河ドラマのDVDを借りたり……。それで、京都に行きたい!と思うようになりました。

三宅

聞き手

え、まさかそれが理由で?

はい、京都大学の文学部を受験しました。京都大学に行けば、きっと私と同じ古典オタクがいる。心ゆくまで本の話ができる。それを原動力に、受験勉強に励みました。

三宅

聞き手

独特なモチベーションの上げ方ですね……。それで現役合格するのもすごいですが、入学してみて、夢は叶ったんですか?

はい!読書家がたくさんいて、「川端康成の『千羽鶴』のここがさあ」って言うくらいで大体話が通じました。友達と旅行に向かう車の中で「源氏物語を今実写化するなら、どんなキャストがいいか」なんて話で盛り上がったりしてね、んふふふ。

三宅

聞き手

(オタク感、出てきた!)

 

書店のアルバイトで書いた「本の紹介文」がバズった

聞き手

大学では、批評についても学んだんですか?

そうですね。大学の講義で、批評の魅力を知りました。例えば今まで恋愛ものだと思っていた作品が、批評を読んだことで、現代を強く風刺した作品に見えてくる、というように、批評によって読者のものの見方が変わる、解釈が変わるというのが、とてもおもしろいです。そこから人文系の本も本格的に読むようになり、フロイトから蓮實重彥、宇野常寛まで乱読していました。

三宅

聞き手

大学での研究テーマも、文芸批評だったんですか?

いえ、万葉集です。

三宅

聞き手

おお、古典オタクの面目躍如ですね。

……面目とかはとくにないです。日本最古の和歌集である万葉集には、天皇から庶民まで、幅広い層の人々が詠んだ4500首あまりの歌が集められています。
140年間にわたって編纂されているので、流行や言葉の読み方がその時々で変わっていきますが、その一方で、恋愛感情など、現代まで変わらない人間の本質が描かれているのが、面白かったです。

後日談になりますが、元号が令和と発表された時には、大学時代の友達と「万葉集キタ!」と盛り上がりましたね、ラインで。

三宅

聞き手

それで、大学院に進学されたんですよね。

はい、もう少し万葉集に浸っていたかったので。

三宅

聞き手

当時から、作家になりたいという思いはあったんですか?

いえ、考えてはいませんでした。

三宅

きっかけは、書店でのアルバイトです。天狼院書店っていうかなり攻めた書店があって、そこで働いていたんですね。その書店ではインターネットでのPRに力を入れていて、書店員が持ち回りで、ウェブサイトに記事をアップしていました。それで私にもその話が来たので、ちょこちょこ書かせてもらうようになり、その中で『京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。≪リーディング・ハイ≫』っていう記事がバズったんです。

三宅

かなり攻めた書店、天狼院書店。

聞き手

「2016年 はてなブックマーク年間ランキング」で、2位になりましたね、ハイパーバズ!

はい、ありがたいです。自分の記事でサイトのサーバーが落ちる瞬間をはじめて見ました。それが元で出版社の方からお声がけいただき、『人生を狂わす名著50』を出版したんです。

三宅

聞き手

重版三刷で、売れてますよね、その辺りから、「これは文章で食べていけるかも」とは思いませんでしたか?

いえいえ、そこまでは(笑)。
今はOLやりながら、インターネットや雑誌で、書評、エッセイを中心に書いています。

三宅

 

批評という言葉のイメージを変えたい

聞き手

それで、今回の『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』が二冊目のご著書になるわけですね。古今東西の作家、エッセイスト、俳優、お笑い芸人までが書いた名文を分析し、そこからバズるための法則を読み取っていくという構成で、三宅さんのエッセンスが詰まった一冊という感じでした。

一冊目を出版してから、個人ブログを始めて、今でもこつこつ書いているんですが、その中でバズったもののひとつに『大学院生がアイドルから学んだ「読んでて楽しい文章」を書くためのセブンルール』というのがあります。今回の本の大元は、そこですかね。

三宅

聞き手

アイドル!? 好きなんですか?

だって、かわいいじゃないですか! かわいいって、正義ですよね?違いますか?

三宅

聞き手

(圧がすごい……)

アイドルは、どうすれば自分を好きになってもらえるか、どうやったら自分がよりかわいくみえるかを、ものすごく研究していると思うんです。
私もそれを見て、「ああ、この子はこういう努力をしたから、売れたんだ」「こんなことをすれば評判になるのか」というのを考えるのが、楽しいんですよね。

三宅

聞き手

そこは批評家っぽい目線ですね。

それで、ネットで文章をバズらせようと思った時にも、「どうすれば読んでもらえるか」「何をすれば興味を引けるのか」っていうように、アイドルが自分を売り込む発想が必要じゃないかって考え出したのが、今回の本の始まりです。

三宅

聞き手

この本は表向き「バズる文章の書き方」を紹介する本であり、実際にそのノウハウがこもっていますが、その裏で批評のニュアンスも強く出ていますよね。文体批評というか。

そうですね、あまり批評っぽく見えないかもしれませんが。
私の野望として、批評という言葉の印象を変えたいというのがあります。批評ってなんだか上から目線で、偉そうなイメージがあるじゃないですか。でも実際には、対象に関するあらゆる資料を徹底的に読み込んで、新たな解釈や見方を発見、提示するのが批評であり、上から目線の批判とは全く違うんです。
そうした批評の魅力をもっと多くの人に知ってもらうために、これからも私ができることをしていきたいです。

三宅

<語り手=三宅香帆(@m3_myk )/取材・文=國天俊治/編集=橋本圭右(@ksk28)/撮影=大川美帆(@ThinkDont)>

Kaho Miyake | 三宅香帆

文筆家、書評家。
1994年生まれ。高知県出身。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。博士後期課程中途退学。大学院時代の専門は萬葉集。
大学院在学中に書籍執筆を開始。
現在は会社員の傍ら、文筆家・書評家として活動中。
著書に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)がある。

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