現在世界中で格差社会が深刻化しており、更に日本は少子化やGDP低下など問題が山積み。その解決のヒントは「持続可能な経済政策」にあるようです。8月16日発売の新刊『東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!』よりご紹介します。
目次
格差社会は広がる一方
2021年、アメリカの裕福度上位1%が、国民の全資産の32%を保有する一方、下位50%が保有する資産は、国民の全資産の2%だそうです。
格差問題はどんどん深刻化しています。これはアメリカだけにとどまりません。世界で見ても、世界人口の最も裕福な 10%は、世界全体の富の76%を所有しています。
格差問題が起こるとどうなる?
格差社会が起きるとどうなるか。どこかのタイミングで、貧しい人たちが「この状況はおかしい」と思い、必ず「貧富の差をリセット」しようとするからです。
そしていままでに起きた「貧富の差のリセット」は、 すべて革命・戦争・国家崩壊・疫病などの悲劇によるものでした。
また同じ悲劇をくり返さないためには、時間の経過とともに格差が広がり続けることなく、
世代ごとに「お金持ち」と「貧しい人」がほどよく入れ替わる必要があります。
持続可能な経済システムとは?
日本でも格差社会は問題になっており、現在の日本の仕組みは長い目で見ると「持続不可能」だと言えます。
貧富の差を食い止めるために必要なことは、「みんなで貧富の差を食い止めよう!」と声をあげて抗議することではなく、「持続可能な経済システム」を作ることです。
復元力のある法制度
まず1つ目は「復元力のある法制度」です。
これは、累進課税などの格差を広げないルール&政策そのものです。
貧しくても、「みんなの平均くらいの仕事」をしていれば、自然と中流層に戻っていく。反対にもともとお金持ちでも、「みんなの平均くらいの仕事」しかしていなければ、自然と中流層に戻っていく。 そんなふうに真ん中に引き戻そうとする力を働かせる法制度のことです。
でもせっかく「復元力のある法制度」を作っても、代表者がお金持ちの味方になり、「やっぱり元に戻しましょう」という話になったら意味がありません。
復元力のある政治制度
そこで2つ目の「復元力のある政治制度」です。
選挙の時だけ「格差是正します」と言い、当選したら、すぐにワイロを受け取ってお金持ちの味方になるような不まじめな代表者が自然と減り、「持続可能なお金のルール」の政策を実行しようとするまじめな代表者が自然と増えるような、「復元力のある政治制度」を作ります。
アメリカでは富裕層がほぼ税金を払っていないことが問題になっています。それが修正されない状況が続いてしまう政治制度そのものにも改善の余地があります。
復元力のある国の仕組み
3つめは「復元力のある国の仕組み」です。
せっかく「復元力のある政治制度」を作っても、悪い代表者が、「政治の仕組みを自分に都合よく変えてしまおう」と勝手に変更できたら意味がありません。
たとえば「大統領は3年で交代」「半分以上の人が賛成したら、大統領をやめさせられる」というような絶対ルールを、悪い代表者が簡単に消したりできたら、すぐに持続不可能なシステムに戻されてしまうからです。
そのため、悪いことができないようなしっかりした国家の仕組みを作る必要があります。 かといって、あまりにも変更が大変な仕組みだと「この絶対ルール、無い方がよかったなぁ」
となった時に、修正できないため、それはそれで大変です。悪い人が勝手に変えられないけど、必要な時に修正することができるバランスの取れた復元力のある国の仕組みが必要です。
ナチスドイツでは、首相のヒトラー率いるナチ党が、憲法の基本的人権条項を停止できたり、共産党員などを法手続きを取らずに逮捕できる大統領緊急令を発令できたり、都合の良いように議院運営規則を改正したり、ほぼ合法的に独裁政権を形成していました。当時のドイツの国の仕組みでは、内閣が権限を持ちすぎたようです。
でもせっかく「復元力のある国の仕組み」を作っても、たとえばどこかのヤバイ島が、「うちの島に資産を隠していいよ」と言ってきたり、突然ミサイルを打ってきて島そのものが破壊されたりしたら困ります。
復元力のある国際法
そこで4つ目の「復元力のある国際法」です。
そういう島をまたいだ問題行動を防ぐために、「こういうことをしたら、他の島からこういう罰を受ける」という国際的な決まりをしっかり作ります。
現在、国際法にはなにも罰則が存在しません。ただの努力目標です。突然どこかの大国が暴れはじめても、それを止めるルールがありません。できることは各国が独自に判断して、「遺憾の 意を述べる」「経済制裁を加える」などの介入をするだけです。
知ろうとすることが経済回復の1番の近道
「国とお金の仕組みをもっとみんなが知るようになれば、世界はもう少し良くなるのでは」と話すのは著者のムギタローさん。
『東大生が日本を100人の島に例えたら面白いほど経済がわかった!』では、本書で紹介した内容や、「景気ってどうやって誰が決めているの?」「お金ってどうして価値があるの?」「日本は借金大国と聞くけどどういう状況?」など、今更聞けない経済の「そもそも」の話や仕組みを「100人の島」で例えることによって、シンプルに分かりやすく解説しています。
経済がわかると、世の中の流れが見えるようになります。それと同時に、不思議と日頃の悩みが小さくなっていきます。この本で、ぜひ経済を知るきっかけにしてみてください。
この記事は、”東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!” ムギタロー(著)、井上智洋、望月慎(監修) の新刊コラムです。