人は、たった数冊の本に、人生の地図を描いてもらうことがある。
まだ輪郭のあいまいだった自分に、芯を与えてくれた言葉。
迷ったとき、何度でもページをめくりたくなる物語。
そんな「わたしを形づくった3冊」を、サンクチュアリ出版のイベント登壇講師が語ってくれます。
それは本の話であり、同時に「わたし」の物語でもあるのです。
目次
語り手:下田美咲
こんにちは。
2025年、かなり精力的にサンクチュアリ出版さんのコンテンツに出演している下田美咲です。ほんよまの連載「ズバリ言うわよ」、サンクチュアリチャンネル「美咲の部屋」楽しんでいただけていたら幸いです。
私は12年ほど前、前回の巳年の時に「生きているだけで死にたくなるような世の中で生きていてもいいような気がしてくる119の名案(竹書房)」という作品で作家デビューをしました。
そこから干支が一周する間に、有料noteを累計3億円売上げ、また本も7冊目まで出しております。
ちなみに、作家になる前は「盛り上げ女王」として活動していました。「コール日本一の人」と呼ばれていた頃の私のことなら、実は見かけている方が結構いるかもしれません。当時、よく「ライ縦ライ横ライ下田美咲」と叫んでいたのは私です。分からないなら帰ってWikipediaで、お願いいたします。
さて、そんな私ですが、実は12歳の時からエッセイストになるのが夢でした。エッセイストには結果的になったわけではなく、なりたくてなりたくて、エッセイストになるための仕込みとしてまず有名人になる努力をしたし、かなり戦略的にこの座を掴み取りました。
そして今も、生涯エッセイストであり続けるための努力を、当たり前にやりちぎって暮らしてます。なったら安泰、なわけがなさすぎるのが人気商売でございます。作家の人生、常に一寸先は闇。気を引き締めて、精進してまいります。
さて、ということで今回は、そんな私の「わたしを語る3冊」をご紹介していきます。
1冊目:『もものかんづめ』さくら ももこ (著)
私の人生を変えた作品といえば「もものかんづめ」です。当時12歳だった私が、人生で初めて読んだエッセイでした。
「エッセイって、こんな自由に悪口を書いていいんだ。エッセイなら、人生に起こる災難をこんな風にブラックユーモアに昇華して書くことができるんだ…!災難だらけの私の人生、絶対、エッセイストになって全てをネタに昇華して、お金を稼ぎたい!お金になれば全ては結果オーライさ!イエイ!」
そんな風に思わせてくれて、「エッセイストになりたい」という夢を与えてくれました。その夢を軸に生きた結果が今なので、本当に大きな出会いでした。
2冊目:『心理分析ができる本: 仕事・恋愛・人間関係』齊藤 勇 (著)
小学6年生で「エッセイストになる!」と決めた私は、「エッセイストになるためにはまずエッセイ以外の何かで一旗をあげて有名になる必要がありそうだな」と考え、中学1年生の時にさっそく芸能界に入り、ティーン誌モデルになったのですが、初めての撮影現場で大きなカルチャーショックを受けました。
現場にいる同世代の女の子たちの世渡り上手さが異次元すぎて。学校で会うような同級生たちとは完全に別の生き物で、「この世界で成功するためには五教科なんてやってる場合じゃないわ…五教科を極めた先に世渡り上手な未来はねえ」と気づいた私は、その日を境に、自分が持っている時間の全てを「世渡り上手になることに役立ちそうな本」を読むことに全振りする生活を始めました。
もちろん授業中も教科書は一切開かずに持参の本を読んでいたので、先生から教科書の角で殴られたりもしましたが(さすが平成)、そんな風だったので、私が人生で一番本を読んだ時期といえば中学の3年間で。
その中でとても印象に残っていて、いまだに手元に置いている唯一の本が「心理分析ができる本」です。心理学の本はいろいろありますが、私が読んだ中ではもっとも読み易く、切り口のセンスが良くて、書いてあることを吸収しやすい教科書でした。もう読んでから20年以上経っているのですがけっこう内容を覚えているし、自分の一部になっているように感じています。
3冊目:『不夜脳 脳がほしがる本当の休息』東島 威史 (著)
せっかくなので、最近読んだ本からも一冊紹介すると、「不夜脳」を読んで確信したのが「自分にとって面白い本って、最初の二行から面白いんだな」ということ。最初の二行から最後の一行まで、ずっと面白かった。
作家として次の本について考えているタイミングでもあったので、「ああ、私も、最初の二行から最後の一行までずっとこの濃さで面白い本を作りたい」と思いました。
薄めてください、と言われてしまいがちな業界だと、業界の人間だからこそ分かっているので、少しも薄めずに世に打ち出してきたこの作品を尊いと思いました。優しい人が易しく書く努力をした跡はたくさんあったけど、薄めてる箇所はなくて、誠実に本気で紡がれて、大切に編集された作品だと思いました。
私にとって世の中は、大人になるほど既知の情報に溢れていて、近年は「これは知らなかった・そんなこと自分では思い付かなかった」みたいな情報と出会うことがほぼないのですが、この作品はそんな私の知的好奇心をすごく満たしてくれました。未知との出会いがたくさんで、続きが読みたくて眠れなくなるほど面白かった。やっぱり本っていいなと、改めて思わせてもらえた作品でした。
専門家が書いた、くらいの本だと物足りないのですが(どの本を読んでも似たようなことが書いてあるから、その程度だと私にとって既知)、この本は、脳外科医という脳の専門家である上に、仕事関係なく脳のことが好きなのであろう脳の変態的愛好家で、公私とも脳の研究をやりちぎっている著者さんが書いたものだったから、すごく良かった。
すごく、本人の言葉だった(これ、専門書だと珍しいです)。
おわりに
次の巳年までの12年間で、最初の二行から最後の一行までずっと面白い本を作れるだけ作りたいな、そのために何ができるだろうか。今回この記事を書かせてもらう中で、改めてそんな風に思いました。
本の良さは、未知との出会いにあると思っています。「そうか、そういう仕組みなのか」とか「そういう考え方もあるのか」とか「このアイディアいいな」という情報と出会えた分だけ、自分の人生への対応力が上がり、幸せになり易くなるものだとも考えています。
今回紹介した3冊もまさにそうだし、そういう本との出会いで今の私がある。今までもこれからも、読者の人の人生にそういうレベルの影響を与えられる作家でありたいと思いながら、本気で紡いでいきます。
下田美咲 1989年生まれの36歳。 エッセイストで、2児の母。 21歳の時に始めたYouTube企画「下田美咲の動画プロジェクト」が人気を博し、 当時としては異例の再生回数を連発。「コールの女王」として注目を浴び、多数のテレビに出演する。「下田美咲参上」のフレーズも話題に。 現在までに出版した著書は「新型ぶりっ子のススメ」「人生の作戦会議!」など7冊で、作家として「セブンルール」「ボクらの時代」などに出演。 2018年より、読者の質問相談に個別対応するためのオンラインサロンをオープン。月額12500円と高額ながらも、現在までに2000会員と交流。誰よりも読者のリアルに詳しい作家になることを目指し、やり取りを重ねている。 下田美咲Instagram https://www.instagram.com/shimodamisaki815/profilecard/ 下田美咲サロン「人生を動かす目からウロコ」 https://lounge.dmm.com/detail/1612/



