ウーマンラッシュアワーという漫才コンビの村本大輔と言います。
僕は2024年の2月からニューヨークに活動の拠点を移し、マンハッタンに住み、英語で、毎晩コメディクラブでネタをやってまわってる。
英語でというと聞こえがいいが、日本語で書いたものをChatGPTで英語にしてもらいそれを丸暗記して話している。高校も卒業していないので40歳でbe動詞を覚えたレベルだ。
そんな僕のニューヨークでの生活をここに書き、少しでも僕のことを知ってもらおうと連載を受けることになった。
目次
自分ファースト
ニューヨークに住んで1年半ほどが経った。
赤信号でも平気で信号を無視し横断歩道を渡るのは、ニューヨーカーだけでなく警察官も。
そんな景色にもずいぶん慣れてきた。
毎晩、コメディクラブにいき、コメディを観たり自分も出演したり。
しかしこの国のコメディアンたちは、時にお客さんよりもステージの上で楽しんでいる。
僕はライブをする時、笑っていないお客さんを見つけると、そのお客さんを笑わせるために頑張る。
ニューヨークで仲良くなったコメディアンは、それを気にしないと言った。
彼は、笑っていないお客さんは気にしない、笑ってるお客さんを意識する。そうすると、楽しくなってきて、おれが楽しいのを見ればお客さんも楽しくなってくるだろうって考えだ。
彼の考えは「自分が楽しければ、お客さんが楽しくなっていく」だ。
おれは、「お客さんが楽しめば、おれが楽しくなっていく」という考えだ。
おれはお客さんファーストだが、彼は自分ファーストだった。
その時、僕は主体を他者にしてることに気付いた。
***
ある時、いつものコメディクラブで、いつものコメディアンたちと話していると、ひとりのコメディアンがおれに少し差別的な発言をした。
もちろんジョークだ。だからまわりのみんなが笑った。
おれは笑えなかったんだけど、みんなが笑っていたから、一人だけ笑ってないと、おれが傷ついたと思われて、彼らの空気をしらけさせたら申し訳ないなと思い、彼らと同じように笑ってるふりをした。
おれは個人よりもまわりの集団を優先した。コメディクラブでネタをやる時と同じように。
ところで俺の友達が、カナダのトロントに長く住んでいて、彼らが一度、マクドナルドで商品をオーダーしたら、店員の女性が「これより、こっちの方がおいしいよ」ってまさかの違う商品を勧めてきたらしい。
彼はどうしてもそれが食べたくて、それを断ると、「じゃあ私からプレゼントするから、食べてみて」って、彼女のおすすめの商品をタダでもらったらしい。
これは稀なことかもしれないが、おれは有名チェーン店のスタッフでさえ、個人の判断でここまで決めれるのかと驚いた。彼らは、とても個人的なんだ。
おれは日本でチェーン店の居酒屋に行った時、店員さんに「おすすめある?」って聞いた。
彼女は上に確認します、と言った。
おれは彼女のオススメを知りたかった。店のおすすめではなく。
周りを気にしすぎる病
周りを気にしすぎる病になってしまっていないか。
お笑いライブをやっていると、お客さんから謎のメールをもらう。
「今度、ライブいきたいんですが、一人で行ってもいいですか…」だ。
勝手にしろよ、としか感想はないんだけど、よくよく街を見渡せば「おひとり様大歓迎」「おひとり様カラオケ」「おひとり様焼肉」と、ひとりでも大丈夫ですよ、とわざわざ書いてる。
たまに「昼飲みやってます」とわざわざ書かれた店を見ると「昼飲むかどうかはおれが決めるわ」と思ってしまう。
でも、お酒は夜飲むもの、みんな働いてる中、昼飲む罪悪感を背負わさないように「昼飲みやってます」とわざわざ書く。
「一人でライブに行ってもいいですか?」と言ってきた女性に、「なんでそんなこと聞くの?」と尋ねると「いやなんとなく、一人で行きにくくて、私だけひとりだったらどうしようかと」と返された。
全く気にしなくていいし、まわりからの見られ方を気にしすぎているし、そして、まわりはそんなにあなたを気にしてないのに。
コロナ禍を経て、マクスをとれなくなった若い人たちがいるらしい。
マスクをしてると写真写りが良くなる。だから、マスクをとった時の顔を見られたくない、マスクを取るのはハードルが上がるとこのクソ暑い中、マスクをとれない人たち。
それは、もう下着のように彼らは顔にマスクを履いている。
おれの20代の時に付き合ってた彼女が、コンビニにいくのもすっぴんで行くのを嫌がった。誰もあなたを気にしてない。
今の女性たち、ハードルが上がるぞ。
マッチングアプリのプロフィールは、加工アプリで顔を作り、化粧をし、マスクをする。
それで会った男は、出会って驚き、マスクをとって驚き、化粧をとって驚き、3回あなたに裏切られることになる。
まわりを気にせずそのままでいこう。
村本大輔 コメディアン。ウーマンラッシュアワー。 1980年生まれ。福井県出身。2008年中川パラダイスと漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。漫才コンクール、NHK上方漫才コンテスト、THE MANZAIなどで優勝。 Abema TVのMCとしてニュース報道に関わったことをきっかけに、政治・社会問題を取り上げた漫才をつくりはじめる。自身の考えをストレートかつスピーディーに届ける独演会が話題となり、舞台での活動が軸となっていく。2024年2月からニューヨークに拠点を移し、スタンダップコメディアンとして日々ステージに立つ。 Instagram:@muramotodaisuke1125 Voicy:https://voicy.jp/channel/820839