NOと言えずにデニムを６回着た僕。

ウーマンラッシュアワーという漫才コンビの村本大輔と言います。
僕は2024年の2月からニューヨークに活動の拠点を移し、マンハッタンに住み、英語で、毎晩コメディクラブでネタをやってまわってる。
英語でというと聞こえがいいが、日本語で書いたものをChatGPTで英語にしてもらいそれを丸暗記して話している。高校も卒業していないので40歳でbe動詞を覚えたレベルだ。
そんな僕のニューヨークでの生活をここに書き、少しでも僕のことを知ってもらおうと連載を受けることになった。

6本のデニム

ニューヨークにきてまだ1年。
43年間日本で生きてきた僕の「日本人らしさ」は消えることはない。

この前、服を買いに行った。

店員さんと雑談でもして英語の練習でもしようかと「最近、インスタを見てたら、ここの店のデニムがでてきてそれがカッコよかったんだよね」と話した。

そしたら彼は「それは膝に穴が空いてたか？」と聞いてきた。

正直、適当に話しかけたかっただけだから「そんな感じかなぁ」みたいなことを言ったら「色々あるからなぁ、倉庫見てこようか？」って言ってきて、正直、今日はデニムを買いに来たわけじゃなく靴を買いに来たわけで、デニムは必要なかった。

でもなぜかわからないけど俺の口から出て来た言葉は

「Oh! really? Nice」

だった。

彼は、そのまま倉庫に行った。

正直、この後予定があるから、長くここに入れないし、デニムは、ちょうどここの同じブランドで最近、デニムを買ったから、本当に買う気はなかった。どんないいものでも要らなかった。

でも俺の口から出てきた言葉は

「Nice」

だった。

欲しくないデニムを、いかにも欲しそうにしてしまい、店員さんに余計な仕事を増やさせてしまった。

めちゃくちゃいい男で、しばらくしたら、両手に抱えるぐらいのデニムを持って来た。６本のデニムだ。しかもそのうちの １本は、おれが前に違う店舗で買った同じデニムだ。

彼は「履いてみる？」と聞いてきた。

正直、デニムは要らない、と言いたかったんだけど、おれがNOと言えないばかりに、彼に倉庫まで行かせてこんなにたくさんのデニムを抱えて持ってこさせてしまったことに対して申し訳なくて、Noと言えずに「Wow? really!? Nice」とまた単調な単語を繰り返し、おれはその買う気のない６本のデニムを抱え、そのまま試着室に入った。

「これおれ、持ってるからこれはいいわ」と言えればよかったんだけど、せっかく持って来てくれたから、が勝ってしまい、断れなくて、全てのデニムを持って試着室へ。

彼が嬉しそうに「どうだ？」って聞いてくるから、おれは買う気の全くない全部のパンツを履き、いちいち試着室の外に出て「So Good So Good」と言いながら履いては、外に出て彼にみせた。自分が家に持ってる同じデニムも含めて。

彼が嬉しそうに「どうだ？」と聞いてきて、俺が嬉しそうに「NiceNice」なんか言うから、彼は俺が本当に欲しいと勘違いさせてしまって、彼に無駄に仕事を増やさせて。おれはおれで、買う気のないデニムを全部履き、気に入ってるふりをする。

Noとさえ、言えていれば。

最後に勇気を出して「ごめん、やっぱりもう少し考える」と言って断った。
それも「こんなに持って来てやったのに」って怒られたらどうしようとドキドキしながら断った。

彼は怒らなかったけど、おれたちは必要のない時間を過ごしてしまった。

エッグタルト

そう言えば、この前、ポルトガルのリスボンに行った。

おれはリスボンといえば、エッグタルトが美味しいと聞き、日曜の家族連れやカップル、観光客などが賑わう昼下がりのリスボンの街中を、ホテルのフロントにきいたおすすめのエッグタルト屋を目指して、歩いていた。

すると、数メートル歩くたびに、強面の地元の男達がおれに、鼻から何かを吸うポーズをしてきて「どうだ？」みたいなことをやってくる。「コカイン」だ！　映画で見たコカインを吸うポーズだ。

すごい。昼間の家族連れが賑わう街中でコカインの販売。多分違法なのだろうか？
「石焼き芋ー焼き芋ー」のように堂々とではなく「これどう？」とポーズだけしてくる。

アジア人の男一人、カモだと思われたのか、おれは震えながら声をかけてくる売人達に

「エッグタルトエッグタルト」

と、返していた。

すると、俺の後ろに彼らがずっと「どうだどうだ？」とニヤニヤしながらついてくる。

他の人たちは「No」ってちゃんと言うのに、おれは「エッグタルトエッグタルト」と半笑いで答えてくるから「こいつは、押しに弱そうだ、いける」と思われてんだろう。

おれはドラクエのチームのようにコカインの売人達を後ろにぞろぞろ引き連れ、エッグタルト屋に向かった。

ハーメルンの笛吹のようにこのまま、湖に入って沈めてやりたかったけど、とにかくエッグタルト屋に。

とてもおしゃれな店で店内は若い女の子達で賑わっていたので彼らは入ってこれず、おれはサッと中に逃げ込み、エッグタルトを頼んだ。

しかし彼らは、窓の外に張り付いてる。怖すぎる。

エッグタルトを食べ終わり店員が「もう一個食べる？コーヒーおかわりする？」と声をかけて来て、おれは食べ終わってそのままここにいるのは申し訳ないと思い

「Wow! NICE! NICE!」

と、本当はお腹いっぱいで、コーヒーでお腹、ちゃぷんちゃぷんなのに、おかわりをもらった。

アメリカもポルトガルも、日本と違って食べたらすぐ出てください、みたいなのはない。みんな食べた後、ずっと雑談してる。

でもおれは日本が染み付いてるから、店にいるなら追加で頼まないとだめなのか、と必要以上に気を遣ってしまった。

そして、彼らの目を盗んで、店を出てホテルに逃げ帰った。

NOと言えていたら、と、痛感した外国の経験。

～村本大輔の一時帰国スタンドアップコメディツアー情報～

※お問い合わせは、各主催者様へお願いいたします

＜沖縄県＞

「chickens」 in 名護市
日時：2025年4月22日（火）OPEN18:00／START19:00
場所：カフェ オキナワン (CAFE OKINAWAN 沖縄県名護市大中1-5-3 )
料金：3500円
予約先：07038035273

「chickens」 in那覇
日時：2025年4月23日（水）OPEN18:30／START19:00
場所：ライブハウスoutput
料金：3,500円（1ドリンク代別）
メール予約：outputticket@gmail.com

「chickens」 in 読谷村
日時：2025年4月25日（金）OPEN18:00／START19:00
場所：真常寺読谷サロン
料金：4000円
お問合せ：shinjyoji.salon@gmail.com
申し込み：下記QRコードより

＜岐阜県＞

トリコローレフェス × ウーマンラッシュアワー村本大輔の独演会
日時：2025年4月26日（土）1部 14:00 ～ 16:00／2部 18:00 ～ 20:00
料金：各部 3,000円 + 1DRINK　(1部2部セット購入の場合 5,000円)
場所：トリコローレ

＜群馬県＞

「chickens」 in高崎
日時：2025年5月4日（日）OPEN16:30／START17:00
場所：Lounge 775
料金：5,000円ワンドリンク付き（※当日現金にてお支払いください）
お問合わせ：8yyosuni6@gmail.com
予約：下記QRコードより

＜宮城県＞

「chickens」in 仙台
日時：2025年5月5日（月）OPEN 13:00 / START 13:30
料金：￥4,500
場所：仙台市民活動サポートセンター B1階 市民活動シアター
お問合わせ：shadanwith.application@gmail.com
申込：下記QRコードより

＜北海道＞

「chickens」in 函館 ＠やまじょう
日時：2025年5月5日（月）OPEN 19:30 / START 20:00
料金： 4,000円＋ワンドリンク（500円）
場所：北海道函館市元町30-5
申込：080-3237-3946 / yamajo-ohta@ezweb.ne.jp

「chickens」in 小樽
日時：2025年5月8日（火）OPEN 18:00 / START 19:00
料金：4,000円＋ワンドリンク（500円）
場所：裏小樽モンパルナス
申込：https://peatix.com/event/4323637

「chickens」in 二風谷
日時：2025年5月9日（金）OPEN 19:00 / START 19:30
料金：4,000円
場所：萱野茂二風谷アイヌ資料館
お問合せ:contact@nibutani-vanto.com
申込：下記QRコードより

「chickens」in 新得
日時：2025年5月10日（土）START19:00
料金：4000円
場所：新内ホール（北海道上川郡新得町新内西1線144番地）
定員：先着50名 (※18歳以上の方のみ入場可)
予約・問い合わせ：インスタDM（@ryo_ftb)

「chickens」in 釧路
日時：2025年5月11日（日）START18:00
料金：大人 ￥5,000 / 高校生以下 ￥2,000
場所：港まちベース946BANYA
申込：https://forms.gle/Mr1STeamPKfHDAXu6

「chickens」in 札幌
日時：2025年5月13日（火）OPEN 18:30 / START 19:00
料金：4400円＋1drink
場所：PROVO
お問合わせ： 090-9089-5984 / washizutamaki1118@gmail.com

村本大輔
コメディアン。ウーマンラッシュアワー。
1980年生まれ。福井県出身。2008年中川パラダイスと漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。漫才コンクール、NHK上方漫才コンテスト、THE MANZAIなどで優勝。
Abema TVのMCとしてニュース報道に関わったことをきっかけに、政治・社会問題を取り上げた漫才をつくりはじめる。自身の考えをストレートかつスピーディーに届ける独演会が話題となり、舞台での活動が軸となっていく。2024年2月からニューヨークに拠点を移し、スタンダップコメディアンとして日々ステージに立つ。

Instagram：＠muramotodaisuke1125
Voicy：https://voicy.jp/channel/820839