ウーマンラッシュアワーという漫才コンビの村本大輔と言います。
僕は2024年の2月からニューヨークに活動の拠点を移し、マンハッタンに住み、英語で、毎晩コメディクラブでネタをやってまわってる。
英語でというと聞こえがいいが、日本語で書いたものをChatGPTで英語にしてもらいそれを丸暗記して話している。高校も卒業していないので40歳でbe動詞を覚えたレベルだ。
そんな僕のニューヨークでの生活をここに書き、少しでも僕のことを知ってもらおうと連載を受けることになった。
目次
自虐ネタとアジア人
僕は今ニューヨークで芸人をやっている。
なぜ日本ではなくアメリカを目指したか。
それはアメリカで活躍してるたくさんのかっこいいコメディアン達を見たからだ。
前回の記事ではクリスロックのことやデイブシャペル、BLACKのコメディアンの話をしたけど、アジアのコメディアンも負けていない。
日本にいる時にたまたま、Netflixに「ロニーチェン」というコメディアンがでてきた。
日本のタイトルはアメリカを破壊するみたいなタイトルだったと思うんだけど、彼のジョークが、いままでの僕のコメディの概念を変えた。
僕は日本の芸能界にいる時から年に1回は1ヶ月の休みをとり、アメリカに行っていた。コメディの勉強だ。
ロサンゼルスに10年前ぐらいに行った時に、コメディクラブに行ったらアジア系の芸人達はみんな、自虐ネタをやっていた。
目が細いことをネタにしたり、ちんちんが小さいことをネタにしたり。
まあ、コメディの鉄則は自虐だ。自虐は誰も傷つけない。
日本でも自分の不細工な顔をネタにしたり貧乏なことをネタにしたり。
笑いは特にアジアでは「可愛げ」が必要だと言う。
大衆はバカにできる対象を無意識に求める。そこに芸人はつけ込む。
自虐ネタ、日本ではもう主流だけど、アメリカではアジア人達はそれを主流としてやってた。
しかし黒人たちは、白人社会を皮肉ったり、自分の可哀想な自虐に走ってなかった。
その中で、ロニーチェンというアジア系のコメディアンを見た時、彼はアメリカ人の客の前でアメリカ人をバカにし、アメリカのおかしいところを批判し、爆笑をとっていた。イジメではない笑いだ。
これが白人がアメリカでのライブで客席の少数のアジア人をバカにして笑いをとるんじゃなく、舞台の上で一人のアジア人が、たくさんのアメリカ人の客の前でアメリカを皮肉って笑いをとる。
弱いものがコメディで大きなものを笑いのものにする。そして、絶妙なラインで笑いとっていた。
その時、おれは日本で芸人をしていながらもアメリカでやる時のネタをメモ帳に書いていたが、俺のネタは何年遅れのネタをやってるんだろうと、ネタをいくつか削除したぐらい、新鮮だった。
自虐ネタで笑わせるアジア人の時代が終わりを告げ、「いまのアジアの人」って感じだった。
ロニーチェンという存在
すぐに彼のTwitterをフォローした。すると、フォローが返ってきた。
多分、おれのTwitterをみて芸人だと思ったんだろうか。
そして彼がたまたま渋谷のスクランブル交差点の写真を投稿していたので、ダイレクトメッセージで彼のNetflixをみた話を伝えた。そして何度かやりとりした。
僕がニューヨークに到着する日は彼のライブの日に合わせた。
場所はレディオシティホール。老舗のホールで3,000人ぐらい入る場所。
ここで彼のコメディをみて、ニューヨーク生活を始めるためのガソリンにしようと思った。
たしか、その時にもメッセージを送った。そのままだ。
ニューヨークに来た、ここで俺も芸人をやる、そのエネルギーをもらいに、ショーに行くよ、みたいなことを書いた。
すると、「金は要らないから、受付で名前を言って入ってくれ」と言われたんだけど、もうチケットを買っていた。その代わり、友達を通訳として連れて行っていいか?と、おれは正直まだ全く理解できないから、と彼に送った。
ちなみに、おれが彼と流暢に、メールのやり取りをしてると思ってる方、全部ChatGPTに訳してもらってそれをコピペしてるから誤解なきように。笑
彼はいいよと言って、おれは通訳としてアメリカに住む友人を連れてライブに行った。
圧巻だった。
30秒、いや1分に一度、ぐらいだ、おれのネタの笑いは。
彼は10秒に1回、大きな笑いを、60分とり続けた。
圧倒的なジェスチャー、言葉の間の取り方、日本で20年やっていたがこれがスタンドアップコメディの世界の一線か、と、言葉は理解できないまでも目の前で、圧倒されたのを覚えてる。
終わって友達に覚えてるところ訳してもらった。
後にそのショーがNetflixの最新作で「love to hate it」というタイトルで公開されたので字幕付きで見たら、友達が訳してくれたのと全然違ったので、おれはちゃんと英語を自分で学ぼうと思った。
海を渡って
俺はそこから、ニューヨークにきて、1年だ。
ニューヨークにコメディセラーという老舗のコメディクラブがある。
そこの上にBARがあって、最近、そこでビールを飲んでいたら、
隣に座った客が
「ねえねえ、あなたもこのコメディクラブにきたの? さっきまでそこの席にロニーチェンがいたのよ!!」
って興奮しながら教えてくれた。
そういや、あれから1年か。まだ一度もロニーチェンとは、会えてない。
メッセージのみで、それも半年に一度、ほどだ。
もしロニーに会ったら、何を話そう、フォロワーさん同士が、初めて会うみたいな感じだろ?「ロニーさんですよね?あぁ、村本です、フォロワーの」みたいなことか?
その1週間後にコメディセラーでロニーが出てると言うので、観に行った。
相変わらず最高の空気を作ってた。
終わってBARに行ったら、ロニーが後ろで飲んでた。
おれは挨拶だけしようと思ったけどなにを話したらいいかわからず、とりあえずビールを一気飲みし、彼のところに行き、挨拶した。
彼は日本に行ったらみんなに村本知ってるって言ってるよ、と。彼は日本でもどんどんツアーしろよ、とおれにアドバイスした。アジア人で両方でやってるやつは本当に少ない、と。だから絶対やったほうがいい、と。
今夜も見てて思ったが、アメリカではアジア人のコメディアンが本当に少ない。特に日本人は滅多に見ない。
ロニーはアメリカでスタンドアップコメディでやってるアジアのコメディアンの少なさを感じてるんだろう。
日本の芸能界は、芸人はお笑いの大会や、なにかで売れて、テレビに出て、MCは、だいたいこの人たちがやって、あとは、彼らの番組の雛壇で、トークするか、ロケするか、地方の番組でMCか、自分のYouTubeか、だいたい、自分たちの日本でのできることの終わりが見えてきてる。
今少しずつ、渡辺直美とかゆりやんとか、それこそ、ぜんじろうさん、サクヤナガワ、ユリココタニ、ユミナガシマ、まだまだたくさんの日本人が、海を渡って行ってる。
彼らが活躍すれば彼らの後を追う人たちが出てくる。
それはダウンタウンなどの跡を追って大阪、東京に出た僕たちのように。
ロニーを見てアメリカにきた僕のように。
これからどんどん、海を渡っていくんだろうな。楽しみだ。




村本大輔 コメディアン。ウーマンラッシュアワー。 1980年生まれ。福井県出身。2008年中川パラダイスと漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。漫才コンクール、NHK上方漫才コンテスト、THE MANZAIなどで優勝。 Abema TVのMCとしてニュース報道に関わったことをきっかけに、政治・社会問題を取り上げた漫才をつくりはじめる。自身の考えをストレートかつスピーディーに届ける独演会が話題となり、舞台での活動が軸となっていく。2024年2月からニューヨークに拠点を移し、スタンダップコメディアンとして日々ステージに立つ。 Instagram:@muramotodaisuke1125 Voicy:https://voicy.jp/channel/820839