コンプレックスでご飯を食べる方法

9浪して早稲田に入ったけど…。学歴コンプを克服しても消えなかったモヤモヤの正体とは?

#連載エッセイ
#コンプレックスでご飯を食べる方法

周囲に同質の人間がいないのは、異質な環境で頑張れた自分の凄さを証明していた

自分の発信は、今いる環境で「マイノリティ」の層に共感いただける可能性がある。それに顔と名前を出してできる浪人経験者はまだ世の中にいない。だからこそ、今、自分が9浪の経験を発信することで、今いる環境で苦しんでいる人の声がSNS上で大きくなる。そうして、限られた場所で支持を集めていくと、やがて社会も動き、マス層への認知を拡大していくこともできる。

だからこそ、自分は、Twitter(現:X)で勇気を出して発信をしていきました。自分の経験や意見を発信し続けていると、賛同者も多く、自分のことを支持していただける人もいましたが、予想通り多くの人に嫌われました。多くの人のコンプレックスを刺激しましたし、とくに浪人経験者や、教育業界の人によく批判されました。

それでも私は発信することを続けました。発信を続けることで、自分と似たような経験をして、似たような思いを抱えていても社会のしがらみなどで泣き寝入りせざるを得なかった方が確実にいることがSNSの反応でわかりましたし、自分のことを応援してくださることが励みになったからです。

この応援してくださる方がいるという感覚が、今まで周囲に敵しかいないと思っていた浪人時代よりは断然いいと思えたことが、モチベーションになりました。

そして、発信を続けていくと、思わぬ効果もありました。自分の経験や、能力に自信を持てるようになったのです。

大学1~2年生のときの私は、あまりにも違う境遇から自分より若い年齢で難関大に受かった周囲の学生たちに比べて、能力が劣っているのだと信じて疑いませんでした。でも、賛否両論の発信を続け認知を拡大する中で、気づいたことがあるのです。9浪した自身と、現役で有名大学に行ける人間の大きな違いは環境であって、個人の能力自体には大きな差がないのだと。むしろ、自分の方が勉強の動機づけが難しい、不利な環境で継続して勉強を続けたことから、勝っている部分もあると思えたのです。

この経験から、私は「生まれつき」の根深いコンプレックスを克服するために大事なことを学びました。自分のコンプレックスは、見せ方・生かし方によっては武器に変わる。そのマインドを持つのが大事なのだと思いました。

だから、今、自分の努力で変えようがないコンプレックスを持っている人は、まずはそのコンプレックスと向き合い、次に生かす場所を探すことが何よりも大事だと思います。

私は賛否を含めて多くの人の声を聞き、自分の経験と向き合ううちに、今、周囲の学生に比べて劣っている知識や経験は勝てないけど、物事を継続する力は大抵の人には負けないから、いずれ今いる環境の利点を生かして追いつくことができると思うようになりました。

「自分みたいな場違いな人間がこんなところに存在していいのか」と悩んでいた2年生までの自分は消えて、4年生になるころには「明らかに不利な環境から、彼らと同じ大学に来れた自分は疑いようがなくすごい」と自分自身の能力を確信することができました。

学歴のコンプレックスに加えて、出自のコンプレックスも武器に変えることができたと思えた瞬間でした。

かつて私は失敗したら絶望し、何もかも手がつかなくなり、過去を振り返っては後悔する人間でした。でも、自分の「生まれ」に関わる根深い劣等感を克服したことで、失敗をしても、手足を止めず、前に進み続けることができるようになりました。失敗の経験は、何かしらの形で必ず生きるからという完全なプラス思考に生まれ変わることができたのです。


濱井正吾

兵庫県出身、1990年11月11日生まれ。「9浪はまい」のニックネームでX(旧Twitter)やYoutube、テレビ出演などを行っている。大阪産業大学経済学部経済学科に入学後、龍谷大学経済学部現代経済学科に編入学し、卒業。 在学中から仮面浪人として受験勉強を4年間続ける。大学卒業後、証券会社に契約社員として就職したが10日で自主退職し、同月中に配置薬会社に再就職。昼は会社、夜は予備校という生活に。同社退職後は受験勉強に専念し、9浪で早稲田大学に一般受験で合格し、2018年に教育学部国語国文学科入学、2022年卒業。現在はフリーの教育ジャーナリストとして、各媒体に記事を寄稿している。

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