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知っておきたい美しき暦 夏の終わりの「処暑」とはどんな意味?

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日本人が1000年以上使ってきた、「二十四節気・七十二候」という暦。
先人たちが生み出した美しい暦と四季を、8月発売の新刊『いとし、君へ。 超訳 日本の暦 24+72』(著者:k o t o )よりご紹介します。

この記事は書籍『 いとし、君へ。超訳 日本の暦 24+72 』の関連コラムです。

日本の伝統的な暦「二十四節気・七十二候」とは

「二十四節気」とは太陽の日長変化、地球に届く太陽の光量に関わる暦です。春夏秋冬を6つに分けることで、1年を二十四に等分し、それぞれの季節に相応しい名がつけられているそうです。
「七十二候」とは、さらにその二十四節気の各一気(約15日)を約5日ごとに初候、二候、三候と3等分し、1年を七十二に分けたものをいいます。

大昔のものと思いきや、実は150年ほど前まで人々があたりまえのように使っていたといいます。そこに刻まれているのは、絶えず移ろっていく日々の中で、限られた瞬間を切り取った風景。自然との営みの中から生まれた、神秘的な言葉。

たとえば
4月の頭は「玄鳥至」(つばめきたる)
5月の頭には「蛙始鳴」(かわず、はじめてなく)
6月には「梅子黄」(うめみのり、きなり)

といったように、動植物や自然の風景がモチーフになっています。
ツバメが巣をつくっていたり、田んぼで蛙が鳴いていたり、梅の実がなっている木があったり…見たことのあるなんでもない光景でも、言葉にされた瞬間、鮮やかに美しく見えてきませんか。

「処暑」(しょしょ)

「処暑」とは、暑さが峠を越えた8月末の頃。
「処」とは、あるべきところにおさまるという意味。

徐々にではあるけれど、熱が抜け、平静に還っていく。
生命が実り、繁栄する結びの時期。
同時に、大地は雨風で荒れやすい時期。

ほうけてばかりでは、結びはやってこない。
その身を、明け渡せ。
天とつながれ、内に根を張れと、促される。

「綿柎開」(わたの、はなしべ、ひらく。)

8/22〜8/27頃

綿のはなしべとは、綿の実を守っていた、ガクのこと。
夏に咲く綿の花は、淡い薄黄色から、ふわふわの綿の実。
その後に実るのが、ふわふわの綿の実。
実は秋に収穫されて、綿糸となる。糸は衣類や寝具に変わり、種は油となり、人らの生活を支えてきた。
どうしてこんな姿をしているのか。まるで人のために用意されたような、大自然からの贈りもの。
筑紫の土地でつくられた、逸品の綿。まだこの身で試したことはないが、見るからに暖かそうではないか。
冷えてくる頃が、楽しみになるよ。

「天地始粛」(てんち、はじめてさむし。)

8/28〜9/1頃

8月の終わり。
山の上や北の土地では、朝方の涼しさが急激に増していく。
本格的な秋の到来と、夏が去っていく、寂しさ。
子どもの頃の記憶なのか、それとも別のなにかなのか。
郷愁のおもかげを感じる頃、景色は黄色く、あかく、色づきはじめていく。

「禾乃登」(こくもの、すなわち、みのる。)

9/2〜9/6頃

9月は、田んぼに実った稲が黄金に色づき、熟す頃。
育った稲を守りながら、空模様と相談をしながら、いよいよ収穫が始まりだす。
禾(のぎ)とは、穀物の穂先をあらわした文字。
先人たちは、稲穂が灯火のようにあかく熟していく姿に「秋」の字を託し
この実りの季節をかたどった。
夏には袖に水垢がつくまで、田植えに勤しんだ農夫たち。
次は植えた苗を守るために、獣よけを張りめぐらせる。
夜を徹して田を見張り、夜露に濡れ、朝霞に濡れ、また、袖が濡れる。
なんとも秋というのは、すごい季節だ。

日本の暦を物語のように

伝統的な日本の暦「二十四節気・七十二候」を基にした『いとし、君へ。 超訳 日本の暦 24+72』は、作家のk o t oが独自の視点で再解釈し、「現代の美しい風景」と、「季節の和歌」を組み合わせ、物語のように美しい文章で表現しました。
この美しき暦の世界に、夏の項目を読めば暑さを感じ、秋や冬の場面では寒さや寂しさを感じる、日本の美しい風景や情緒を堪能できる一冊です。

この記事は書籍『 いとし、君へ。超訳 日本の暦 24+72 』の関連コラムです。