私が著者になるまで

「お金がないと何もできない」はウソかもしれない

#私が著者になるまで

実は歌手をやってました!

聞き手
いい話だなぁ…。ゆにさんにもそのあたりのお話しを伺いたいんですけど、どうして応募を決意されたんですか? もともと自然で暮らすことにご興味があったとか?
いえ、以前は自然が好きという趣向はなくて。
私、昔は歌手を目指していて、それで高校を卒業して北海道から東京に出てきたんです。
ゆにさん
聞き手
アーティスト志望だったんですか!
……歌手って、どうやったらなれるんですか?(笑)
私もぜんぜん知らなかったんです(笑)。
最初はボイストレーニングを受けながら「一般公募」っていうオーディションみたいなライブに出てたんですけど、趣味程度で集まっている人が多くて、「こんなので歌手になれるのかなー」って(笑)。
そのあとはいろいろ模索しながら芸能事務所が運営しているスクールに入ったり、ライブハウスで歌ったり、ショッピングモールでライブしたり、ネット番組の企画に出たりしていました。
ゆにさん
聞き手
どんな歌を歌われていたんですか?
ジャンルでいうとR&BとかJ-POPとかになりますかね。
実は、今でも1曲だけiTunesストアやSpotifyに残ってるみたいで…。
ゆにさん
聞き手
えっ、曲名は?
「会いたくて神楽坂」という曲なのですが(笑)。
ゆにさん
聞き手
わー!これだ!
なんだか演歌風なタイトルですね?
はい(笑)。
私、当時は着物にはまっていて。あるイベントで、コスプレ感覚で初めて着物を着たんです。そしたら洋服の時よりたくさん声をかけられて、「あれ…和服と歌をかけ合わせたらいいかも!?」と思って、それでこんな路線の歌を出していた時期もありまして(笑)。
でも、最初はミーハー感覚だったんですけど、気づけばだんだんと着物のほうに軸足が移っていって、「自然と暮らしていきたいなぁ」と思うようになったんです。
ゆにさん
聞き手
あ、そこでつながるわけですか!
そうなんです。着物を通して伝統的な日本の文化って素敵だなぁ、自然と生きる暮らしっていいなぁと思ってたら、歌手になるっていう執着もなくなってしまって。
そんな頃に余一さんのお嫁さん募集を見つけたんです。
ゆにさん
聞き手
何事もタイミングですねぇ…。
メールではどんなやりとりをされてたんですか?
たとえば、『寄生獣』っていうマンガを紹介してもらって読んで感想を送ったりとかですかね(笑)。
当時は自然に寄り添った暮らしがしたいとは思っていたけど、知識はなかったんです。なので、余一さんの話を聞くことが単純に楽しかったんですよね。
メールのやりとりの中で価値観を深めていって、書いていくことで自分の価値観もまとまって、自分自身を知ることができたなって思います。
ゆにさん
聞き手
でも下世話な話、他にライバルもたくさんいたわけですよね。
はい。でも、自分がもし選ばれなかったとしても、余一さんのところでお手伝いをさせてもらいながら別にパートナーを探せばいいかって、そう考えてました。
ただ、後悔はしたくないと思って。オーディションのつもりで全力でメールのやりとりをしていたのは覚えています(笑)。
ゆにさん
聞き手
わぁ! 歌手時代の経験がつながったんですね!
今はお子さんのタイチくんもいて、畑の管理も食事のレパートリーもずいぶん増えたとのことですが、今チャレンジ中のことはあるんですか?

お金は人生の目的ではない

今年は畑が6年目なんですけど、面積が広がったのに管理が届かず収穫がちょっと落ちてしまって……その後悔があるので、栽培スキルを上げたいですね。
具体的には、「光合成細菌」を使った堆肥づくりを勉強中です。これまでの堆肥は、生ゴミや鶏さんの糞をただ放置して自然分解を待っていたんですけど、青森の短い栽培期間でよりサイクルを早く野菜に適した状態で堆肥として活用するために習得したいなと思っています。
ゆにさん
聞き手
日々勉強、日々成長なんですねぇ。
余一さんの今後のチャレンジは?
仲間を募って一緒にコミュニティ作りをしていきたいなと思っていて、つい最近、移住者募集のサイトを立ち上げたんですよ。
うちのまわり、土地はたくさんあるので(笑)。
余一さん
聞き手
それは楽しそうなお話しです! 何か応募の条件などあるんですか?
一応、「今の日本の法律に違反してない人」とか「ご飯だけ食べて働かない人はいやだなぁ」とかはありますけど(笑)、僕らが大事にしている「循環」という考え方をある程度理解してくれる方だったら素敵だなと思ってます。
特別な技術のある人を求めてるわけでもなくて、自然が好きで、未来のために自然のことを考えてくれるような人だったら嬉しいです。あと、シンプルに「都会に疲れたー」という人に来ていただいてもぜんぜんいいなと思ってますし。
余一さん
聞き手
ありがとうございます! では最後に、伝えたいことはありますか?
実は僕、最近「御用聞」(ごようきき/ご近所さんのお悩みの解決のお仕事)がやたら忙しくて、現金収入はあったんですけど、それで家のことがおろそかになってしまって。
結局、人にお願いして家のことをやってもらったり、仕事のストレスでお酒を買ったりしてしまったんですよ。そしたら、入ってきたお金もなくなるし。「あれ…これ仕事する意味あったっけ?」ってなっちゃったことがあって。これじゃあお金ないときと同じだなぁと思ったんですよね。
だから、お金は目的のためには必要ですけど、お金のために働くが生きることではないなと、あらためて思わされましたね。
余一さん
聞き手
まさに、この本のメッセージそのままな出来事だったんですね!
都会に疲れた僕も、読んで震えました。ぜひ読んでいただきたい本です!!

最近、余一さんが新たに身につけた技術「溶接」。壊れた原チャリのミラーに、トラクターのミラーを溶接した作品

 

<プロフィール>
田村余一
1977年、青森県南部町生まれ。大学卒業後もまともに就職することもなく、フリーターをしながら現代社会への不安と失望を加速させる。20代半ば、富士山で冒険死を試みるも見事に失敗し、おどるような人生を選択。以来ちょっとオカしいくらいのポジティブ思考で独自の人生をクリエイトし始める。伴侶の田村ゆにと電気・ガス・水道を契約しない生活を構築し、持続的DIY農生活を実践しながら、これまでの人生経験の集大成とも言える、地域の「御用聞屋」を開業。デジタルとアナログを混ぜ合わせつつ、一人で百の仕事をこなす現代版「百姓」を目指す。廃材建築家、イベント企画/演出、映像作家、デザイナー、イラストレーター、ナレーター、舞踏家などなど……スキルはムダなくらい多岐にわたる。

田村ゆに
1987年北海道札幌市生まれ。高校卒業後に歌手を目指して上京。アルバイトをしながらの歌手活動中に着物の魅力にハマり、365日着物生活をはじめる。衣食住の「衣」を自然素材へ変えたことをきっかけに、自然の中での暮らしやオーガニックフードにも興味を持つ。29歳になる年にSNSで発見した田村余一の「お嫁さん募集」へエントリー。その年の秋に青森へ移住し田舎暮らしを始め、2017年に入籍。オフグリッド生活や畑作業をスタートする。2018年第一子を出産。現在は子育てや畑作業の傍でインスタグラムを中心に暮らしの知恵や野菜の知識をシェアして活動している。



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