私が著者になるまで

会話力を上げれば人生が変わる。話し方教室35年のプロが最も大切にしていること 野口敏

#私が著者になるまで

.

教室を始めて世の中に認められるまで、19年かかった

聞き手
野口さんは、当時勤めていた呉服店を辞めて、20代でコミュニケーション教室を始められたそうですね。なぜコミュニケーションを仕事にしようと思ったんですか?
1980年代当時、結婚したいのにできない男性が増えているという世の中の流れがあり、「コミュニケーションを工夫すればうまくいくのに」と常々感じていて。若かったのであまり深く考えず「おもしろそうだからやってみよう」というノリで、花婿講座を開いたのがきっかけです。
野口さん
聞き手
じゃあ、もともとコミュニケーションがお得意だったんですね。
いやいや。口下手ではなかったけどうまく人間関係が築けなくて、そういうコンプレックスを抱えていたからこそコミュニケーションを勉強し始めたんだと思います。いまは友だちもたくさんいますが、大学時代までの友だちでいまも親交のある人はひとりだけ。同窓会に行ったら私のことはみんな覚えていないくらいです。「共感」「肯定」が大切だと気づいて実践するようになったら、一人ひとりと深い人間関係を築けるようになりました。25歳ごろを境に、その前と後では私はもう別人ですね。
野口さん
聞き手
いまの野口さんからは想像できないです……。教室運営は順調に行きましたか?
いえ、こうして世の中に出るまで19年かかりました。当時はSNSもありませんから集客にも苦労したし、コミュニケーションを教えるのに特別な資格や肩書きが必要なわけじゃないので、著書がない限りどうしても説得力に欠けるんですよね。バブル景気だったのでみんな700万、800万と稼いでいましたが、私はずっと300万。それでも毎日飲みに行っていましたけどね(笑)。どうやって暮らしてたんだろう。
野口さん
聞き手
(笑)。転機が訪れたのは?
最初の転機は2006年。大口のお取引先が倒産して、いよいよ崖っぷちに立たされ、「もう本を出すしかない」と思いました。1989年に花婿講座の本は出していますが大昔のことなので、コミュニケーション講師として世の中に認めてもらうには、新しい著書が必要だと。出版社に勤める友人がひとりだけいたので、原稿を勝手に書いて送りつけて……。
野口さん
聞き手
「もう後がない」感をひしひしと感じます。
その友人は出版とは別の部署にいたので「おもしろいけど無理」と言われ続けていたんですが、ある日彼が乗ったエレベーターに、出版部長を務めている昔の上司が乗り合わせて。とっさに私のことを伝えたら、原稿を読んでいただけることになったんです。原稿は好感触で、必死に書いた企画書も社内でとおり、見事出版が決定。その本は6万部売れて、さらにそれを読んだ別の出版社の方が「うちでも本を出しませんか」と依頼をくださったんです。
野口さん
聞き手
その本が、のちに120万部を突破するシリーズの第1弾『誰とでも15分以上 会話がとぎれない!話し方66のルール』(すばる舎)というわけですね。
はい。その本を書いているときに思いついた「会話は気持ちのキャッチボール」というフレーズはとくに反響がありました。みんなが「そうか!」と思うフレーズを出せたことは、本が売れた大きな要因のひとつだと思っています。
野口さん
聞き手
そこから人生が好転し始めたんですね。野口さんの情熱と執念が伝わるエピソードでした。
もうこのときばかりはコミュニケーションの基本を無視して、相手が嫌がってもかまわずアプローチし続けましたね。それが功を奏したのでしょう。人生成功のコツは、ここぞと決めた時は迷惑を顧みず押しに押すことです。
野口さん
聞き手
(笑)。では最後に、コミュニケーションの道に進んで35年の野口さんが今後チャレンジしたいことを教えてください。
いちばんは後継者の育成。コミュニケーションマイスター協会というものを立ち上げて、コミュニケーションを教えられる人を増やしたいです。あとは、本を出せるように書き方の指導もしたいですね。話し方の本でベストセラーをもっている人って、ほとんどがコミュニケーション専門ではなくビジネスなど別分野の人なんです。私自身もまだまだ本を出すつもりですが、これから後継者を本格的に育てて、世の中にコミュニケーションの可能性をより一層広めていきたいと思っています。
野口さん

<語り手=野口敏/取材・文=三橋温子>

野口敏
1959年生まれ。(株)グッドコミュニケーション代表取締役。関西大学経済学部卒。
1989年に男性にコミュニケーションを教える花婿講座を日本で最初に開講。マスコミから200社以上取材を受けるも、「男が結婚のために勉強するなど情けない」と世の中から猛バッシングを受け、時代を先駆ける者の苦難を経験。 以後、テーマをコミュニケーション全般に転じ、コミュニケーションスクールTALK&トークを主宰したが、苦労が20年間続く。
この間、研究と経験を地道に積み重ね、それを基に2009年『誰とでも15分以上 会話がとぎれない! 話し方66のルール』(すばる舎)を発刊。シリーズ120万部を突破。以後、著書は18冊を数える。
現在も大阪、東京、リモートでコミュニケーション講座を開催。「習ったその日にうまくなる」をテーマに、雑談力、スピーチ力、説明力UPの講座を開き、 全国から生徒が絶えない。公式YouTubeチャンネルでも定期的にライブ放送を開いている。

TALK&トーク:https://www.e-0874.net/ 
Youtube:https://www.youtube.com/c/talk3104 

2度目の会話が続きません

野口敏(著)
定価:1,400円(税込1,540円)
詳しくはこちら
仕事の場でも出会いの場でもプライベートでも、
この本を読んで関係を深める力をつければ、
2度目の会話だけでなく、初対面の会話も大きく変わっていきます。