分蜂シーズンがやってきた。女王蜂が巣分かれをして、新しい巣を見定める時期だ。チャンスは約1ヵ月。その期間に捕獲できないと、来年まで待たなければならない。なんとしても捕まえたい。「居酒屋お決まりですか?」「カラオケいかがですか?」そんな気持ちで花の季節、根津を舞い飛ぶハチたちを見守る。
雨のち曇り。4月も間もなく終わろうとしている。 ハチ来訪のビッグニュースだ。 この報道が流れて以来、スタッフや仕事の関係者から「恵比寿にミツバチ、出ましたね!」と声をかけられるようになった。 しかし弊社の屋上に、まだミツバチはこない ミツバチ一家には、“探訪バチ”と呼ばれる「引っ越し先の物件探しの内見」をするハチがいる。 駅近、日当たり良好、コンビニの近く。病院のそばなので救急車は少々うるさいが、夜になれば閑静な場所。なによりも徒歩2分のところに根津神社がある。 お祭りをやっているこの時期は、ツツジの花で溢れかえっている。仕事にも困らないだろう。これ以上なにを求めるというのか。大家にはわからない。 咲き誇るツツジと、写真撮影中の営業部長 焦っている。 どうしよう。 どうしよう。どうしよう。 ハチといえばなんだ。 ハチといえば花か。 会社の近所の花屋で、花を買うことにする。 飼育員 「ハチがくる花をください」 花屋さん「はい? ハチがこない花ですか?」 飼育員 「いや、ハチが好きな花です」 花屋さん「はい。それならば、マリーゴールドがいいでしょう。これは薬草なので、ハチを寄せにくい花です」 飼育員 「いや、だからハチを寄せつけたいんです」 花屋さん「…」 飼育員 「…」 花屋さん「そういった花はちょっと。うちの店にあまりハチはこないですから」 飼育員 「え? 花屋なのに?」 そう言った瞬間、なんとなく(しまった)と思った。 ハチがやってこない花屋さんを、見下すような言い方になってしまっていないだろうか。 反省しよう。 気まずい空気の中、「ハチがくるかはわかりませんが」という念押しとともに花屋さんからすすめられたペチュニアという花を買った。 (花なんてただ買ってきて適当に置いておけばいいだろう) ガーデニングが趣味だというデザイナーの内山さん 無事に植え替え完了 飼育員 橋本圭右
ミツバチに対する関心が、少しずつ高まっている。そんな実感がある。
スタッフや仕事の関係者の口ぶりからも、以前のようなミツバチに対する敵意は感じられない。
ゆっくりとだが着実に、良い方向に進んでいる。
そういうハチを屋上で2、3度見かけたが、弊社の用意した2箱の巣箱の入居者は未定。
関東の分蜂シーズンはもう半分以上過ぎた。シーズンが終われば、来年までチャンスは持ち越しだ。
養蜂家が集まるページには「今年もハチがきてくれました!」という明るい書き込みがあふれている。
就活、婚活、蜂活。
いずれも比較する他者がいなければ、存在しない言葉かもしれない。
だが飼育員は、養蜂こそ未経験だが、園芸だって未経験である。
このとき、花屋さんの表情がわずかに曇った気がした。
すべてをハチ第一に考えて、人と接するのは問題だろう。
さらに100円ショップで、土と植木鉢も買って帰社する。
とたかをくくっていた飼育員は、このあとガーデニングの大変さ、面倒臭さ、楽しさを思い知ることになるのだが、それは養蜂とは直接関係ないので、また別の機会に報告することにする。