動物が好きすぎて、動物とデートするマンガ描いちゃいました!/メセグリン

メセグリン

物心ついた頃から動物が大好き。ドキュメンタリーを見始めたら止まらないし、英語の専門書まで読みきっちゃう。そんな動物オタクのメセグリンさんが、ちょっと変わった動物図鑑で漫画家デビュー! 彼ならではのユニークな視点で語る動物愛とは?

動物と漫画に夢中になった子ども時代

「メセグリン」とは、エリザベス1世が愛したとされるハーブを漬け込んだ蜂蜜酒。それをペンネームに選んだ理由を、「英語の辞書を見ていておもしろい響きだったから」と少し照れながら教えてくれたメセグリンさん。3月にデビュー作『もしもキリンと恋に落ちたら デートでわかる どうぶつ図鑑』を出版した新人漫画家だ。

好きになったきっかけが思い出せないほど、幼い頃から大の動物好き。動物のテレビ番組に夢中になり、カレンダーの裏にはよく動物の絵を描いた。当時好きだったのはチーター。とくにインパラを追いかけているチーターの絵が得意だったという。

「急角度で曲がって逃げるインパラにも俊敏についていく姿がカッコいい。チーターは時速100kmと言われていますが、サバンナでは怪我しないように気をつけて走っているので、なにもないところを本気で走ればもっと速いんじゃないかな」

本が嫌いだったという子ども時代だが、『シートン動物記』だけは好んで読んだ。なかでも、狼の賢さや気高さを描いた『狼王ロボ』には子ども心にも感動し、当時読んでいた本は今でも実家に保管してあるそうだ。

そんなメセグリン少年には将来の夢があった。漫画家になることだ。ただ、その頃はまだ「動物」と「漫画」を結びつけて考えてはおらず、人気キャラクターが登場する漫画やオリジナル漫画を描いては友達に見せて楽しんでいた。

「初めて買った漫画が『ドラゴンボール』の39巻。そこから漫画に夢中になって、自分でも描くようになりました。プラ板ってあったじゃないですか。あれにキャラクターを描いて遊んだり。でも、当時のプロへの登竜門だった漫画コンテストへの応募は、自信がなくてできなかったんです。成長するにつれて、好きなことを仕事にしてしまったら楽しめなくなるんじゃないか…という不安も湧いてきました」

あるドキュメンタリーをきっかけに、動物愛がエスカレート

実は、メセグリンさんの本業はプログラマー。大学時代に同級生とともにソフトウェア開発会社を立ち上げた。大学卒業後、一度は別の会社に勤めたが、現在は設立した会社に戻って取締役を務めている。

「大学に入って、趣味でプログラミングをやるようになりました。自分でホームページやゲームをつくって楽しんでいたら、同級生が『そんなのつくれるなら一緒に会社をやってみない?』と声をかけてきたんです」

プログラマーとしての道を歩み始め、漫画家の夢はいつしか頭の片隅に。とくに新卒で入社した会社では、優秀な同僚たちに負けないようにがんばる多忙な日々が続き、漫画を描くことはほとんどなくなっていたという。疲れた心身を癒してくれたのは、帰宅後に見る動物のドキュメンタリー番組だった。

そんなメセグリンさんの動物の見え方がガラッと変わったのは、『野生ヒョウのマナナ 〜絆を深めた17年間〜』というドキュメンタリーを見てからだった。

「マナナというメスヒョウが赤ちゃんをヘビに食べられたときのこと。彼女はヘビを許さず、数時間のにらみ合いが続きました。やがてヘビは赤ちゃんを吐き出して逃げるのですが、マナナは亡くなった赤ちゃんを丁寧になめ、最後は自分で食べてしまったんです。その行動に弔いの意味があったのかはわかりませんが、マナナの一連の行動を見て僕は『動物にも心がある!』と確信し、とても嬉しくなりました」

そこから、動物がなにを考えているのかについて調べるようになったメセグリンさん。調べるうちに、霊長類やゾウも葬式のような行動をとることがわかった。カラスは穴を掘ってエサを隠すが、仲間が近くで見ているときはあとで戻ってきて別の場所に埋め直す。これは自分以外の動物から見られている感覚がある証拠だという。

また、メセグリンさんが「今まで見た動物動画の中でNo.1」と称えるYouTube動画がある。2007年ビデオ大賞 目撃者賞を受賞した、南アフリカのクルーガー国立公園で撮影された『Battle at Kruger』だ。水牛の群れがライオンに子どもを襲われ、一度は逃げるのだが、大群となって戻ってきて奪い返すというドラマティックな映像である。

「子どもを守る大人たちの強い思いが見てとれました。反対に、ライオンにも『一生懸命生きている相手を殺して申し訳ない』という気持ちがあるんじゃないか、と思ったりもします。人間が牛や豚を食べるときも、普段は意識しなくてもふと『命をいただいている』と思うことがありますよね。それに通じるものが動物にもあるのかな、そうであってほしいな、と思います」

漫画熱、再燃!

漫画への情熱を思い出したのは、20代後半になってからのこと。有名な漫画家がさまざまな漫画家と対談するテレビ番組内で、実際に漫画を描くところを定点カメラで撮影するシーンがあった。それを見ているうちに、自分でも描いてみたいという思いが再び沸き起こってきたという。

「昔の僕だったらきっと行動には移していなかった。でも、最初に入った会社で『できないところからできるところへ持っていく』『すごい人をとことん真似する』といった知恵や技術を学べたおかげで、やってみようという前向きな気持ちになれたんです。ちょうど時間に余裕が出てきた頃だったので、空き時間を見つけては漫画を描いてネットにアップするようになりました」

そんな中で生まれた漫画のひとつが、キリンの女の子と人間の男性がデートする漫画。動物の生態をおもしろく伝えるには、一緒に出かけたり、食事をしたり、家族に会ったり…という「デート」の形がいちばんいいと思いついて描いた作品だ。その漫画を見たサンクチュアリ出版の編集者がユニークな視点に興味を持ち、ほかの動物とのデート漫画も見てみたいと思ったのが出版のきっかけ。こうしてメセグリンさんの「動物とデート」シリーズは、1冊の動物図鑑として世に送り出されることとなった。

「最初にオファーをいただいたときは、『僕には無理』『恥ずかしい』という気持ちのほうが強かったです。でも編集さんから、最近は動物の本に人気があるというお話をいろいろ聞いて、徐々に僕もチャレンジしてみたいと思うようになりました」

描く動物はメセグリンさん自身がセレクト。特徴があっておもしろいのに、あまり本になっていなかったり、動物園で飼育するのが難しかったりと、日本人にとっては少しマニアックな動物を中心に20種以上を選んだ。漫画を描くにあたっては、上野動物園元園長の小宮輝之さんを監修に迎え、「図鑑」としてのリアルさをより一層追求した。

マイナーな動物も子どもたちに大人気

メセグリンさんにお気に入りのページを尋ねると、開いてくれたのはマナティーが男の子にキスをするページ。人なつこくてゆったりとした動きのマナティーは、メセグリンさんのいちばん好きな動物でもある。

「マナティーは描くのが難しいんです。間違えるとアザラシやセイウチになってしまう。この漫画ではくちびるや体の特徴をうまく描けたと思います。小宮先生にも『よく描けていて感心した』と言っていただけました!」

漫画を描くために調べた情報の中には、知らなかったこともたくさんあったという。オポッサムのおっぱいが13個あることや、黄緑色の動物がいること…。

「キミドリリングテイルのことは小宮先生に教えてもらいました。先生はご自身で撮影された動物の写真を大量に持っていて、著書の中にはすべて手持ちの写真を使っているものもあるほど。漫画の参考になりそうな写真はすぐに送ってくださいました。ウォンバットの四角いうんちとかね(笑)」

出版前、サンクチュアリ出版のスタッフの子どもたちに原稿を見てもらったところ、「おもしろい!」「本になったらクリスマスにほしい!」といった声があがったそう。すでに人気者の動物だけでなくマイナーな動物の魅力も、子どもたちには伝わったようだ。

出版後は全国の書店の児童書コーナーに展開され、評判は上々。メセグリンさんの地元である熊本県玉名市の書店では、手づくりのポップを設けてPRしてくれている。一緒に会社を立ち上げた現社長も、仕事と漫画家業の両立を応援してくれているという。「出版に関わってくれたすべての方に感謝の気持ちでいっぱい」と、メセグリンさんはしみじみと語った。

動物への飽くなき探究心

(↑メセグリンさん私物のゾウのフンから作られた紙)

動物への探究心は尽きることなく、最近は英語で書かれた専門書も読めるようになったというメセグリンさん。初めて読破した洋書は、今回の参考文献にも挙がっている『The Evolution of Beauty』。有名な鳥類学者による、異性をめぐる競争の中で生じる進化「性淘汰」について書かれた本だ。

「英語はずっと勉強していましたが、ニュース記事などは簡潔にまとめられたタイトルを理解するだけでけっこう難しくて。本嫌いな僕が『シートン動物記』だけは読めたように、好きな分野のものであれば挑戦しやすいのだと改めて感じました。英語の専門書が読めれば得られる情報量もグッと増えるので、それを武器に新しいことにもチャレンジしてみたいと思っています」

今、メセグリンさんがもっとも関心を寄せているのは、動物の子育て。動物のさまざまな生態が、実は子育てという行為に紐づいていることを教えてくれた。

「たとえば哺乳類のくちびるは、おっぱいで子どもを育てるという行動にともなって進化したのではないかといわれています。くちびるができたことで顔の筋肉が発達し、表情が生まれたとも考えられます」

「また、大脳皮質は哺乳類にしかありませんが、子育てをしていなかったら脳がここまで大きくなることはなかったかもしれません。群れで暮らし、子どもが大人を見て育つという環境があったからこそ、人類にミーム(模倣により人から人へと伝わる習慣や技能などの文化情報)が蓄積されるようになったのでしょう。このテーマをどうアウトプットするか、漫画なのか別の形なのかはまだわかりませんが、自分なりの方法で表現してみたいですね」

日に日に解明されてきている動物の生態だが、まだ謎に包まれていることもたくさんある。新しい発見に心を躍らせ、誰も知らない神秘に想像をふくらませる。そんなメセグリンさんの純粋な動物愛から生まれる作品は、私たちをワクワクさせ、優しい気持ちにさせてくれることだろう。


メセグリン

イラストレーター。漫画家。
動物がどんなことを考えているのか知りたくて動物の本やドキュメンタリー番組を見ることに莫大なエネルギーを使う自称動物オタク。
動物が好きすぎて仮免に落ちたことがある。
特に好きな動物はマナティー。


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