私が著者になるまで

心の奥の本音、吐き出せていますか? 1万人を施術した整体師が説く新時代の健康法/いっせい

#私が著者になるまで

口コミだけで1万人以上が訪れる人気整体院、「卒業させる整体院」を経営する整体師・いっせいさん。カラダの不調を膜の施術とメンタルから根本解決する独自メソッドは、SNSでも話題を呼んでいます。そんなメソッドを凝縮した初の著書『ちゃんと生きない。自分を優先する勇気』(サンクチュアリ出版)について、出版にいたるまでのエピソードや想いをお聞きしました。

この記事は書籍『 ちゃんと生きない。 自分を優先する勇気 』の関連コラムです。

すべての不調の原因は「心の我慢」

聞き手
人生初の著書、読ませていただきました! 表紙を見て「ゆるめのエッセイかな?」と想像していたんですが……
想像と違いました?(笑)
いっせいさん
聞き手
それはもう(笑)。エッジの効いた理論が端的な文章で展開されていて、ズバズバ心に入ってくる感じでした。
ありがとうございます。まさにそこは編集の大川さん・松本さんと工夫したポイントなんです。調子が悪いときって長文を読むのがつらいので、1ページ1コンテンツで読みやすくして、普段の僕のX投稿みたいに端的にまとめました。表紙をあえてゆるいテイストにしたのは、「見た目はやわらかいけど中身は武士」という僕のイメージを編集者さんが表現してくださって。
いっせいさん
聞き手
武士(笑)。きっと「卒業させる整体院」でも、この本のように芯を食った言葉を真正面から伝えているんだろうな、と思いながら読みました。本では、すべての不調の原因は「心の我慢」と謳われていますが、これはいっせいさんの持論なんでしょうか?
はい。僕自身の実体験や、これまでに来院いただいた1万人以上のお客さまの事例をもとに、西洋医学や東洋医学の理論と照らし合わせながら導き出したものです。実際の症状から共通点を拾って、どんな「心の我慢」が原因となっているかを特定していった感じですね。「100人中100人が当てはまる法則」でなければその理論は使わないと決めているので、信頼性は高いと思います。
いっせいさん
聞き手
一般的な整体院や病院での治療とは全然違うアプローチですよね。
たとえば、膝が痛くて病院に行くとします。レントゲンやMRIで検査しても異常がなかった場合、原因はそれ以上追及されませんよね。たいていは薬が処方されて終わり。

でも、本当の原因が目に見えるところにあるとは限りません。僕はその本当の原因を「心の我慢」だと考えています。我慢してストレスを溜めることで、皮膚・皮下脂肪・筋膜からなる「膜」がどんどん硬くなり、体の不調として現れるわけです。だから僕の整体院では、施術と対話で膜をゆるめ、不調の根本的な解決を目指しています。

いっせいさん
聞き手
医学界はいっせいさんの考え方をどう捉えているんでしょう?
う〜ん、否定的だと思います(笑)。科学的に分析できるものじゃないですからね。以前、理学療法士として病院に勤めていたときも、こういう話をして大批判を受けたことがありました。

ただ、どんな医療を試しても改善しなかった原因不明の症状が、僕の整体を通じて改善したという例がたくさんあるのも事実。僕自身もそうでした。最近では医療関係の方が来院されることもあり、関心は寄せていただけているのかなと思います。

いっせいさん

19歳で寝たきり生活、28歳で胃に穴があく大怪我

聞き手
この本が出版されたことで、いっせいさんのメソッドへの注目度はさらに高まりそうですが、そもそも本を出すことになったのはどんな経緯からですか?
サンクチュアリ出版さんからオファーをいただいたのが始まりです。実は他社さんからもよく「本を出しませんか」と連絡をいただいていて、僕はそのたびに「一度整体を受けにきてください」と返していました。一緒にお仕事をするからには、僕の整体を体験いただく必要があると思ったので。ただ、実際に来てくださる方はほとんどいませんでした。

そのなかでもすぐに来てくれたのが大川さん。お会いしてみてとても誠意のある方だと感じましたし、これまでにヒット作を何冊も手がけてこられた編集者さんなので、ぜひご一緒したいと思いました。

いっせいさん
聞き手
もともと出版に興味は?
すごくありました。自分の考えを早く広く伝えるには、出版という手段がいちばん効果的かなと。
いっせいさん
聞き手
本にも書かれていますが、いっせいさんが現在の持論にたどり着くまでには、さまざまな苦労があったそうですね。始まりは、医学部生時代に発症した原因不明の不調だったとか。
はい。家でYouTubeを観ていたらいきなり激しい腰痛と右足のしびれに襲われて、半ば寝たきりの状態に。3年で300万円かけて治療しても治らなかったのですが、あるとき体の使い方のクセに気づいて、独学でいろんな方法を試してみたら、たった1か月で完全に回復したんです。「病院では解決できないことを解決できる整体院」を開こうと思ったのは、このときでした。
いっせいさん
聞き手
その不調が「心の我慢」と関係していたことに気づいたのは、いつだったのでしょう?
確信したのは28歳のとき。でもその前からなんとなく気づいていました。気づいていたけど、その事実から逃げていたんだと思います。

不調から回復後、24歳で一度起業して整体院を開いたのですが、その起業は大失敗に終わりました。共同経営者との関係がうまくいかず、集客もできなかったんです。その後、病院勤務を経て26歳のときに再び起業しようとしましたが、母と姉の猛反対を受けまして……

いっせいさん
聞き手
お母さん・お姉さんとの関係がよくなかったことは、本にも書かれていましたね。ケンカの多いふたりの仲裁ばかりして、本音を言えずに育ったと。
はい。そもそも医学部に進学したのも、姉が受からなかった代わりに僕が受けただけ。家庭の空気を読むクセがついてしまっていたので、そこに僕の意志は一切ありませんでした。

その母と姉から離れるために、一度結婚という選択をしました。ただ、結婚相手は母や元共同経営者と同じ支配的な性格で……。28歳でようやく整体院を再開業できたのも束の間、その3か月後に今度は自転車事故で胃に穴があく大怪我をしてしまったのですが、彼女は病室で僕に怒鳴りました。「私の言うことを聞かないからこうなったんだ」と。そのとき、「このままじゃダメだ」と強く思ったんです。

いっせいさん
聞き手
それでご家族や元パートナーと本音で向き合うことにしたんですね。
実は、大怪我をしたときにパッと頭に浮かんだのが、自分の両手が切れる映像でした。19歳で寝たきりになり、28歳で事故に遭い、このままいけば次はきっと両手をもっていかれる……。そんな恐怖から、向き合わざるを得なかったという感じです。でも、本音を吐き出せてからは心身が驚くほど回復して、理想のパートナーと出会えてラクになり、整体院も再開。いろんな苦難を乗り越えたからこそ、現在の施術スタイルを確立することができました。
いっせいさん
聞き手
いっせいさんの「心の我慢」が、不調や怪我という形で体にアラートを出していたんですね。整体院を再開してからは順調でしたか?
前例のない理論なので、最初はお客さまにうまく伝えられずに悩みましたね。あやしい宗教だと思われたことも。でも、あるとき僕のなかでブレイクスルーが起きて、「自分で無理に伝えなくていいや」と思い立ったんです。「僕は整体師なんだから施術に専念しよう」と。すると、お客さまが僕の代わりに伝えてくださるようになり、新しいお客さまをどんどん紹介いただけるようになりました。
いっせいさん
聞き手
すごい! お客さまが広告代わりに。
現在も口コミが中心ですが、このあとちょうど「本を読んで予約した」という方がいらっしゃる予定です。今回の出版をきっかけに、僕の整体に興味をもってくれる方が増えたらうれしいですね。
いっせいさん

川の流れに身を任せて「自分だけの島」へ

聞き手
「卒業させる整体院」を経営して5年ほど経ちますが、1万人以上の施術をするなかで新たな気づきはありましたか?
これまで、膜が硬くなって体に不調が現れている方の多くは、幼少期の家庭環境で強いられた「心の我慢」が根本的な原因でした。ただ、そうではないケースも出てきたので検証してみたところ、その方の親御さんの家庭環境に原因があることが判明したんです。
いっせいさん
聞き手
えっ!?
親が膜にストレスや痛みを溜めたまま子を授かると、それが胎児にも受け継がれるということです。人間の脳は受精して約18日後にでき始めるのですが、脳ができて自我が芽生えるよりも前に、細胞レベルで親のストレスや痛みが伝わってしまう。アダルトチルドレンならぬ「アダルト受精卵」です。親に限らず、先祖から代々受け継いでいる場合もあるんです。
いっせいさん
聞き手
その場合、どう解決すれば……?
自分自身が「心の我慢」をやめて本音を言うようにしていけば、そして「膜」に溜まったストレスを抜く施術をすれば、ちゃんと卒業できますよ。それが先祖供養にもなるし、子孫への連鎖を止めることにもつながります。
いっせいさん
聞き手
自分の「心の我慢」に気づいて、やめたいと思ったとしても、本当にやめるのってなかなか難しいですよね。いっせいさんのお客さまは、たとえばどんなきっかけで「心の我慢」をやめられるようになったのでしょう?
「ちょっとしたことを手放せた瞬間」という方が多いですね。毎日休まずに働いていたけど、勇気を出してズル休みしたり、遅れて出勤したり。毎日彼氏に手料理をつくっていたけど、今日はデリバリーにしてみたり。そうすると心がふっと楽になって、「意外と大丈夫だな」「また手放してみようかな」という気持ちになる。罪悪感が少しずつ薄らいで、笑顔が増えている自分に気づく。……そんなふうに段階的に我慢をやめていくイメージです。
いっせいさん
聞き手
まずは小さなことから手放していくんですね。それならできそう。
現代を生きるすべての人に言いたいことですが、何事もがんばりすぎないでほしい。この本だって、ちゃんと読もうとしなくていいんです。処方箋として手もとに置いておいて、読みたくなったときに少しずつ読んでもらえればいいし、途中でやめたっていい。

僕たちにはそれぞれ「自分だけの島」があります。その島に流れ着いてしまえば全部うまくいくはずなのに、川の流れに逆らって常識やルールや社会的地位という島へ泳いでいこうとするから、流されたり溺れたりしてしまう。がんばりすぎず川の流れに身を任せていれば、いつでも本当の自分に還れるということを、ぜひ忘れないでほしいと思います。

いっせいさん
聞き手
まさに本のタイトル『ちゃんと生きない。』ですね。いっせいさんご自身は、これからどんな島へ流れていくのでしょうか。
「卒業させる整体院」という名前のとおり、「整体」や「医療」が必要ない時代をつくりたいと思っています。健康であることが当たり前の時代。そのためにも、僕のこの理論を粘り強く広め続けていきたいですね。僕は『チ。―地球の運動について―』というマンガが大好きなんですが、あのイメージです(笑)。
いっせいさん
聞き手
地動説の証明に挑む人たちのお話ですね。アツい……!
理論は優れていると思っていますが、僕自身はただの凡人。たとえ創始者の僕がいなくなっても、本や施術を受けた人が残っている限り、誰かがまた理論を積み上げて広めてくれればいいと思っています。だから機会があれば2冊目を書きたいし、翻訳版を海外で出版することも夢のひとつ。もちろん「卒業させる整体院」も、お客さまに僕の考えを直接お伝えできる場として大切に経営していきたいです。
いっせいさん

(取材・文/三橋温子)

いっせい 
整体師。「卒業させる整体院」代表。 
某国立大学医学部在学中、突如として激しい腰痛と足のしびれを発症し、以来、半ば寝たきりの状態となる。考えうるあらゆる治療方法を模索しながら大学に通い続け卒業。理学療法士として病院に就職し、整形外科の手術前後の患者を担当した。 
他方、自身の症状は3年間で300万円以上の治療費をかけても症状は改善しなかったが、とあることがきっかけで「カラダの使い方」を見直すこととなり、独学の末、わずか1ヶ月で完治させることに成功。独立し、整体院を開くことを決意する。 
その後、生死の境をさまよう事故に遭うなど紆余曲折を経て、「卒業させる整体院」を2019年に開院。 病院ではできない方法で、体調に悩める人々の問題を根本から解決し、「通わせない状態」を目指すというコンセプトのもと、口コミだけで1万人以上が訪れる人気院となっている。
 「カラダの膜の記憶」と「言えなかった本音」という、極めてシンプルでありながら、どの医学領域にも属さない独自の理論は、SNS上でも多くの共感と、時に激しい賛否を巻き起こし、話題を呼んでいる。 X:@film_issei_maku

いっせいの「健康常識から卒業させる」ラジオ
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この記事は書籍『 ちゃんと生きない。 自分を優先する勇気 』の関連コラムです。