絵が描けなくてもOK!マンガ原作者になる方法とは?

志望者が既存のプロと戦って連載を勝ち取るためには?

#連載エッセイ
#絵が描けなくてもOK!マンガ原作者になる方法とは?

今も昔も、小学生のなりたい職業に上位ランキングする”マンガ家”。けど、ほとんどの人がいつしかその夢を諦めてしまう……。私(西島)自身もそうでした。
ところが、四十近くなり、なんとなく自分のこの先の人生が見え始めた頃、絵が描けなくてもマンガ業界に携わることができる方法を知ったんです。それが、マンガ原作者への道。そして、私自身はアラフォーでデビューしました。
周りを見渡してみると、私のように社会人になってから、小学生の頃の夢であるマンガ作りに携わりたいという人は意外と多いんですよね。その方法の1つがマンガ原作者になること。
ただ、なる方法は人それぞれ。そこで、毎回、ゲストをお迎えして、マンガ原作者になる方法を語っていきます。

第3回目のゲストは、マンガ原作者・放送作家の茶谷葉さんです。

茶谷さんが原作を担当した初めての連載マンガ『もんれす-異種格闘モンスター娘-』(マイクロマガジン社)は日本だけでなく、海外版も発売されました。

今回は、茶谷さん自身の経験を通して、志望者が既存のプロと戦って連載を勝ち取るためにはどうすればよいのかなどをお聞きしていきます。

ゲームメーカー50社に営業メールを送り、未経験でもシナリオの仕事を獲得!

茶谷さんとのお付き合いも10年近くになるんですが、初めてお会いしたときはまだマンガ原作者志望でしたよね。

そうです。西島さんとお会いしたのは、関西から上京したばかりの頃でした。
拠点を移した理由は、持ち込みを集中的に行うには出版社が多い東京の方が有利だと思ったからです。

そもそもマンガ原作者を目指した経緯から教えてもらえますか。

大学卒業後は、金融機関で働きつつ、趣味でネット小説を書いていました。
そのうち、「一度きりの人生なら好きなことをして生きたい」と思い、金融機関を退職して小説系の専門学校に通うことにしたんです。

専門学校を卒業した後は、趣味でよくプレイしていたゲームのシナリオを書く仕事を始めました。
実績はありませんでしたが、仕事を得るために、ゲーム―メーカーに営業メールを送りまくりましたね。

どのぐらいの数の営業メールを送ったんですか。

約50社です。良い返事をくれたのは、そのうちの2社ですね。

けど、そのうち「自分の考えたオリジナル作品を世に出したい」と思うようになり、腕試しのつもりでヤングジャンプに原作シナリオを持ち込んでみました。
採用されなかったものの、掲載会議までは進めたので、「マンガ原作が向いているのかな」と感じ、本格的にマンガ原作に取り組むことにしたんです。

作品が完成すると、マンガ雑誌に掲載されている連絡先に電話をして、アポを取って持ち込みました。
なかには、マンガの持ち込みはいいけど、原作はNGという編集部もあるので、アポのときは必ず「シナリオ形式の原作でもOKですか?」とお聞きしていましたね。

デビュー前でも、受けつけてくれる編集部はありましたか。

7編集部に電話をして、3編集部が見てくれました。まったくの素人ではなく、ゲームのシナリオライターとしての実績があったということも大きいと思います。
シナリオライターとしての実績がまったくなくても、アポの取り方によっては見てくれる編集部もあるんじゃないでしょうか。
たとえば、トラック運転手のマンガを売り込みたいのであれば、普段トラック運転手をしているということをアピールすると、見てもらえる可能性が高まると思います。

いまも編集部への持ち込みはしていますか。

もちろんです。今はメールで持ち込めるところが増えましたね。昔よりも持ち込みは楽になっています。
持ち込み先は、X(旧Twitter)で検索をかけて調べたり、マンガ情報をまとめたサイトを定期的にチェックしたりして、探しています。

デビューできたのは、自分が“好き”で“詳しい”ことを武器にしたから

その後、モンスター娘たちによるプロレス興行の世界を描いた『もんれす』で初めて連載を開始したんですよね。デビューの決め手は何でしょうか。

自分が“好き”で“詳しい”ことを武器にしたからだと思います。
デビュー前の志望者がキャラやシナリオ制作能力などの基本的なスキルで既存のプロに勝つのは難しいと思います。
けど、たとえば普段トラック運転手として働いている人が“トラック運転手”を題材にしたマンガ原作を書けば、少なくとも“トラック運転手”に関する描写は既存のプロを上回りやすい、自分ならではの武器になりやすいはずです。
加えて、マンガは原作者がいなくても成り立つ媒体です。マンガ家さん一人では思いもつかないようなストーリーやキャラクターを作らないと存在意義が出しづらい。
そういう意味でも、自分の“好き”で“詳しい”ことを武器にした方が有利ですね。

原作を担当した『もんれす-異種格闘モンスター娘-』(マイクロマガジン社)

 

『もんれす』がまさにそうですよね!

『もんれす』については、元々モンスター娘が好きだったこと、PRIDEやK1が盛り上がっていた時代に総合格闘技をよく観ていたこともあって、「その2つを掛け合わせれば自分の知識を活かしつつ、新しさもある作品にできるのではないか?」と考えて発案しました。
ただ発案した頃にはもう世間では総合格闘技が下火になっていたこともあり、プロデュース担当の青木健生さんから「総合格闘技要素をプロレスに変えてみてはどうか」とのご提案を頂き、モンスター娘×プロレスという形になりました。
好きなモンスター娘のネタだけあってさまざまなキャラクターが作りやすかったですし、プロレスと総合格闘技の違いはあるものの、技やバトルシーンについてもアイデアを出しやすかったです。

2022年に配信を開始した縦読みスクロールマンガ『追放戦士の反省譚』もそうです。ウルティマオンラインというMMO(多人数参加型のオンラインRPG)でサーバーのポイントランキング1位だったという経験と流行の追放モノを掛け合わせる形で発案しました。
経験もあって好きなMMOネタの作品でしたので、キャラ作りやバトルシーン、そのほかの展開などでもアイデアが出しやすかったです。

 

さまざまなゲーム作品の大会に出場し、優勝経験も多数。
「“好き”で“詳しい”ゲームはマンガ原作にも活かしています」(茶谷さん)

 

『もんれす』については日本だけでなく、海外でも発売されましたよね。

電子書籍の普及で、海外からでも日本のマンガが読みやすくなりました。日本の人口減少なども踏まえると、将来的には海外でウケやすいネタであるかどうかも大切になってくるのかもしれません。