今も昔も、小学生のなりたい職業に上位ランキングする”マンガ家”。けど、ほとんどの人がいつしかその夢を諦めてしまう……。私(西島)自身もそうでした。
ところが、四十近くなり、なんとなく自分のこの先の人生が見え始めた頃、絵が描けなくてもマンガ業界に携わることができる方法を知ったんです。それが、マンガ原作者への道。そして、私自身はアラフォーでデビューしました。
周りを見渡してみると、私のように社会人になってから、小学生の頃の夢であるマンガ作りに携わりたいという人は意外と多いんですよね。その方法の1つがマンガ原作者になること。
ただ、なる方法は人それぞれ。そこで、毎回、ゲストをお迎えして、マンガ原作者になる方法を語っていきます。
第1回目のゲストはマンガ原作者、編集者、プロデューサーとして多岐に渡ってご活躍の青木健生さんです。
青木健生さんは、24歳でリイド社のマンガ『探偵屋の女房』で、原作者としてデビュー。以降、マンガ業界に携わってこられ、今年で25年目に入ります。
今回は、青木さんにマンガ原作者としてデビューするにはどうすればよいのか、長く続けるコツなどをお聞きしていきます。
目次
マンガ原作者はマンガのストーリーを提供する仕事
第1回目 なので、マンガ原作者とはどういう仕事なのかから、お教えいただけますか。
マンガ原作者は、ストーリーはもちろんのこと、登場人物(キャラクター)の設定や、アイデアを提供する仕事です。セリフや構成も作ります。
デビューしやすいのは、”これだけは誰にも負けない”というぐらい好きな題材がある人
青木さんは、現在、原作者としてだけでなく、編集者&プロデューサーとして、さまざまな方のデビューにも携わっていますが、どういう方がデビューしやすいんでしょうか。
好きな題材がある人ですね。私は「題材とは作品で扱うネタのことだ」と定義しています。”〇〇〇〇”についてなら誰にも負けないというぐらい詳しい題材がある人はデビューしやすいです。
よく「葛藤を描きたいです」とか「青春ドラマを作りたいです」とか言う人がいるのですが、それではなかなか通りづらいです。漠然としていて、どういうものか、編集者に伝わりづらい。そもそも葛藤や青春は題材じゃないですからね。
そう言えば、私のデビュー作も好きな大衆酒場を舞台にしたものでした。
西島さん以外にも、バトミントン、ゴルフ……と自分が好きなことを題材にしてデビューしたマンガ原作者は多いです。
好きなものがあるってことは、作家として大切なことですよ。だから、私は好奇心を持って何でも興味を持つようにしています。
例えば、道端にモノが落ちていて、それを「汚い」と思って触らない人よりも「なんだろう」と思って、とりあえず触ってみる人のほうが好きなものが増えやすいですね(笑)。
好きなものが多ければ、それだけ作品の幅も広がりますよね。
そうです。そもそも書くものに困るのは、好きなものが少ないからだと思うんです。
マンガは題材と主人公の組み合わせで成り立っています。題材も主人公も自分自身が好きで詳しいものであることが大切です。この2つを生み出し続けようと思ったら、好きなものを増やすことです。
さらに、おもしろいマンガにしようと思ったら、題材と主人公はかけ離れたものに設定するとよいですね。
例えば、私プロデュースで出した西島さん(聞き手)原作の仮想通貨マンガ『なにわコイン娘』がそれに当てはまりますね。
このマンガは、関西の女の子が主人公の仮想通貨マンガなんですが、仮想通貨という硬めの題材に、仮想通貨とは縁がなさそうな関西の女の子たちを主人公として組み合わせたものです。好きなもの、詳しいものに真逆なものをくっつける。それだけで、マンガはおもしろくなります。
そうです。あの頃は仮想通貨が話題になった頃で、好奇心を持って始めてみたんです。そのとき得た知識がマンガになったんですよね。それに、私は生まれも育ちも関西ですから、題材だけでなく主人公のバックグラウンドについても詳しいんです。
当時、仮想通貨という題材も目新しかったので、編集者の目を引いたこともありますね。
デビューして25年目の今でも編集部に持ち込みを
やはり編集者の目に触れるためには、どんどん持ち込みをしたほうがいいですよね。
私は、今でも持ち込みはやっていますよ。
20代の頃はそれこそ毎週のように持ち込みをしていましたね。昔はマンガ雑誌に掲載されている編集部の番号に電話をして、アポを取って、編集者に直接見てもらうという方法でしたが、今はメールや編集部のホームページにある専用フォームから送っています。
昔よりも今のほうがはるかに持ち込みはしやすくなりましたね。
落ち込む暇があったら、次の打席に立てるように動くこと
持ち込んだ原作が落ちたときは落ち込みませんか。
落ちたからといってダメだったわけじゃないですから。編集者や編集部、会社との相性もありますし。次の打席に立つためにさっさと行動したほうがいいですね。
そんな青木さんのポジティブな姿勢も、マンガ業界で長く続けてこられた秘訣なんでしょうか。
何にでも興味を持つから、好きなものが多いことが理由としてあると思います。
利き酒師、野菜ソムリエ、ファイナンシャルプランナー、いろいろ資格も取りましたし。
飲食店に入っても、珍しいもの、飲んだことがないものを注文します。歯磨き粉も4種類持っていますね。毎日同じ歯磨き粉だと飽きますから。
出版社に打ち合わせに行くときも、同じ道は通らない。毎回、行く道を変えています。
好きなものがたくさんあるので、それを順番に形にしていけば、そりゃ25年くらい持ちますよね。
江戸川の土手をランニング、昨年はロードレースにも出場
書き続けるには健康であることも大事ですよね。青木さんは、四六時中書いているイメージがありますが……。
いや、実際に書くのは5、6時間です。あとは図書館で調べものをしたり、ランニングをしたり、毎晩22時には寝ていますよ。
24歳でデビューしてすぐに腰をやられてしまったんですね。そんなとき、ランニングが趣味の兄貴に勧められて走り始めました。兄弟で東京マラソンにも出ましたね。
コロナ禍で外に出られなくなってからは、暇さえあれば、江戸川の土手を走っていました。夏場でも1日おきに走っていましたね。去年はハーフマラソンにも出場しましたし。
自宅で筋トレもするようになりましたね。腹筋も割れました。今が一番、痩せていて、健康だと思いますよ。
最後に今後の目標をお願いします。
私が代表を務めるクリエイターグループWCGで練りに練ったマンガが、来年から複数作品スタートするんです。
直近の目標としては、これらが世に認められて、長く連載が続くことですね。
新連載、楽しみです! 本日はありがとうございました。
脚本を担当した『攻撃力極振りの最強魔術師 ~筋力値9999の大剣士、転生して二度目の人生を歩む~』(秋田書店)
脚色を担当した『コミック版 ザ・ゴール3』(ダイヤモンド社)
ゲスト
青木健生さん(あおき・たけお)
漫画原作者・シナリオライター(日本脚本家連盟会員)・編集者・ライター
1999年にコミック「探偵屋の女房」にてデビュー(シナリオ協力)代表作「鉄板少女アカネ!!」(少年画報社)※テレビドラマ化 コミック版「ザ・ゴール」シリーズ(ダイヤモンド社)コミック版「攻撃力極振りの最強魔術師」(秋田書店)など多数。
X(旧Twitter)@p_kobushi
聞き手
西島ユタカ(にしじま・ゆたか)
マンガ原作者
縦スクロールマンガ原作に『スクールカーストは逆転する~この美貌で復讐のターン~』(小学館)、マンガ監修に書籍『マンガで読む 学校であった怖い話 絶望教室』(池田書店)、マンガシナリオに書籍『コミック版 やってはいけない老後対策』(小学館)、マンガ原作にWEB『なにわコイン娘〜仮想通貨にツーカーになろう〜』(小学館)など多数。
X(旧Twitter)@toyoko_t
(画像提供:iStock.com/Oleg Lyfar)