犬と暮らしたいと思った人が最初に訪れるのがペットショップ。しかし最近では保護犬の里親になる選択をする人も増えてきています。それぞれのケースで、犬を迎える前にどんなことに気をつければいいのでしょうか?専門家に教えてもらいました。
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「犬と暮らしたい人は、4人に1人」
「犬と暮らしたい」と願っている人は、約4人に1人という調査結果があります。
欲しいけれど、どこで手に入れれば良いの? と、悩む人も多いのではないでしょうか。ペットショップには可愛い赤ちゃん犬がいるけれど、高い価格に驚いてしまったとか、保護犬を迎えたいけれど初めて飼うにはハードルが高いかな…。など、一歩が踏み出せない人もいるでしょう。
そこで、『犬が伝えたかったこと』の著者で、ドッグカウンセラーの第一人者でもある三浦健太さんに、犬を迎える前に知っておきたいことを教えていただきました。
「ペットショップで犬を買うのはあり?」
犬と暮らしたいと思う人が最初に訪れるのは、まずはペットショップでしょう。現在、日本には約160種類の犬種がいると言われています。たまたま通りかかったペットショップにすべての犬がいるわけではありませんが、代表的な犬種の子犬はたいてい並んでいます。犬は大きさだけでなく、色や体型、顔の形もまちまちです。お気に入りの犬を探す楽しみもあります。雑種犬の場合は、成長に連れ毛色が変わったり、耳の形が変わったり、時には予想をはるかに超えて大きくなったりと、成犬時の姿が変わってしまうことがありますが、純血種の場合は、たいてい予想した姿になります。
近年は、犬の価格も上昇を続け、一昔前に比べるとかなり高額になりつつあります。初めて犬を買う人が知っておかなければならないのは、犬の価格はその犬種により体型や毛色によって決められていて、性格や飼いやすさといった条件はまったく反映されていないということです。
純血種の場合は、専門団体が決めたスタンダードと呼ばれる体型や色に近い犬ほど高い価格がつけられます。両親がドッグショーなどで優秀な成績を収めた犬の子であれば、価格も高くなります。たまにチャンピオンの子を高い価格で買ったのに、まったく言うことを聞かないと嘆く人もいますが、これはもともとまったく別の話なのです。電化製品などは、価格が高ければ高いほど特別な機能がついていたり、高性能なのですが、犬の場合は体型や毛並みの美しさは予想できますが、性格や健康が保証されているわけではないことを知っておく必要があります。
「最低120日は母犬と過ごさせてから引き取ろう」
ただ、ペットショップでの購入で気をつけておきたいのは、たいてい幼い赤ちゃん犬を購入してしまうことです。確かに赤ちゃん犬は愛らしく、見ているだけで癒やされます。ところが、母犬が子犬に世の中の協調性や、友達付き合い、初対面の挨拶を教えるには生後120日以上はかかると言われています。
ですから、犬が他の犬と仲良くできる社会協調性を知るのは本当は母犬の元で生後4ヶ月経過したところなのです。ペットショップは「かわいい!」と誰もが思ってくれる赤ちゃん犬を店頭に置きますので、なかなか4ヶ月を超えた犬に出会うチャンスがないというのが現実です。もし、ペットショップ等で幼い犬を買われる方は、母犬に成り代わって子犬に犬の社会協調性を教える必要が出てくるのです。
では、保護犬はどうでしょうか。
20年前には犬の年間殺処分は約40万匹でしたが、現在は1万匹にまで減少してきています(環境省自然環境局データより)。それでも、何らかの事情で飼えなくなった犬が保護され、場合によっては殺処分という悲しい道をたどっています。ですから、保護犬を引き取る人が増えることは、動物愛護の面からもすすめられることです。
保護犬だから飼いづらいとか、危険などということはありません。不安であれば、ボランティアなどによる一時預かりを経て、社会性を取り戻した保護犬を引き取るのもおすすめです。
「人の心を癒やし、健康にも導く犬との暮らし」
犬は人の生活を大きく変えます。
たとえば健康面。ある獣医学の先生の研究によると、犬を飼っていない人は、飼っている人に比べて、症状の軽い病気で通院する率が1.75倍も上回ると言います。日本の保険医療に換算すると、約4兆円もの削減。国の財源を助ける、経済的なメリットも認められているのです。
また、アメリカでは受刑者の精神的リハビリとして犬の飼育をさせています。西海岸の女性刑務所では、再犯率が8割から2割へ激減したという報告もあります。
独居高齢者や登校拒否児の心の回復にも犬が活用され始めています。
犬と暮らすことで、人は心も身体も豊かになります。
ふと寂しい気持ちになったとき、やるせないことがあったとき、『犬が伝えたかったこと』を読んでみてください。犬が与えてくれる無償の愛に触れ、ひたむきに生きる素晴らしさを思い出してもらえるはずです。
(取材/文 鹿住真弓)
(画像提供:iStock.com/VladimirFLoyd/filadendron/M_a_y_a/kukiatB/FatCamera)
この記事は、”犬が伝えたかったこと” 三浦健太(著)の新刊コラムです。
三浦健太 Kenta Miura 1950年生まれ。東京都出身。NPO法人ワンワンパーティクラブの代表。 1994年に日本初のドッグイベント“ワンワンパーティ"を企画・運営。 1995年よりクラブとなり、その後NPO法人となる。 現在、ドッグライフカウンセラーとして全国各地でイベントや教室・セミナーを多数開催。 全国の都市公園でマナーの啓発やドッグランの設置や運営アドバイスを実践。 毎春に全国100万人の犬の飼い主に正しい飼い方を書いた小冊子を制作し手渡しで配布している。