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日本人と他国の英語教育の違い
前回は「そもそもなぜ、日本人は英語が話せないのか?」についてお伝えしました。
その理由はみっつあると私は考えていて、そのうちのひとつは他国、特にヨーロッパ諸国と比べて、「母国語以外を話さなくてはいけない理由」が著しく欠けているからだと思っています。
そして理由のふたつめは、英語教育の違い、と思っています。
第二言語習得論と呼ばれる分野(簡単にいうと、どうやって母国語以外はマスターできんの? を追求する学問)では、大きく分けてふたつの流派があるそうです。
ひとつは、「インプット仮説」と呼ばれるもので、
「第二言語はとにかく理解できるレベルのその言語の音声をききまくって、読みまくってれば、そんなにアウトプットしなくても自然に聞けるように喋れるようになります!」
と主張するもの。
日本人の中にも、「4歳までアメリカにいたんだよね〜」といういわゆる帰国子女さんは、このインプット仮説のとおり、文法知識とか語彙力とかそんなにないけど、とにかくその言語に触れまくった経験があるので、リスニングとスピーキングのスキルが嫌でも上達してしまう、ということが起こっているようです。
オランダなどの英語がめちゃくちゃできる国では、さっき言った通り、英語がもすごく身近にあるので、まさにこのインプット仮説に当てはまりますね。
学校でもいろんな教科の授業が当たり前のように英語で行われていて、高校生になる頃にはネイティブクラスの英語力が身についちゃうようです。
そしてもうひとつが、「自動化理論」と言われるもので、
これは
「まずはその言語のルール(文法)とボキャブラリーを意識的に学びましょう。
でもそれだけだとスムーズには使えないので、繰り返しの練習や経験を積んで、それらを自動的に使えるように特訓しようね!」
というもの。
日本の英語教育は、こちらの理論に立脚してデザインされているそうです。
日本の英語教育の落とし穴
私達、めちゃくちゃ英文法学びましたよね。
もはやネイティブでも知らないような難しいルールまで、徹底的に学ばされてきました。
ボキャブラリーも、「これ日常会話で絶対使わないよね?」というような難易度の高いものまで暗記しました。
でも、これらを流暢に使いこなせているかというと、ほとんどの人ができてないですよね。
これが、日本の英語教育の落とし穴で
「ルールとボキャブラリー、十分学べたね! オッケー! じゃあ、自動化するところは自分でやっておいてね! グッドラック!!」
ってかんじで、途中までしかやってくれてないんですって。
だから私達、あんなに勉強したのにしゃべれないんだよ!!!
想像してみてください。
教室で、今日はみなさんに、「泳ぎ方」を教えます。身体っていうのは、こういうふうにつくられていて、ここを動かすとこの部分がこう動きます。すると水の中でこのような動作になり、前に進みます……
と、先生が細かく「泳ぎ方」について説明してくれます。それで、生徒たちは、「オッケー理解した!」となったとします。それで先生はこう言うんです。
「じゃあ、今日学んだことをプールに行くことがあれば、ぜひ思い出して泳いでみてね!グッドラック!!」
実践は、しないんですね。
学んだことが自動的に使えるようになるにはたくさんのトレーニングがここから必要なのに、そこはそれぞれに任した!というかんじ。
途中で放り出される感じです。
これでは、英語が話せるようになるわけがありません。
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マインドセットが、英語学習の最も大きな障壁
最後に、個人的に一番大きな要因だと思っていることを言います。日本人のマインドセットです。
私達日本人である私達の多くは、「間違えるな!正解はいつもひとつ!!」という学校教育で育った方が多いのではないでしょうか? テストではいつも点数を競わされ、間違えたらバツをつけられる。「間違えることは悪いこと」という潜在意識が出来上がります。少なくとも私は、そうでした。ギャルですら、間違えるの怖かったです。
同じ制服を着て、同じような髪型をして、同じものを同じタイミングで学び、そこで決められたルールに沿う行動をしないと「落ちこぼれ」のレッテルを貼られます。
「違うこと」は「恥ずかしいこと」って、明確に言われたわけではないのに、なんだか思い込んでしまう。だからわたしたちは、失敗しないように、間違わないように、恥をかかないようにどんどんリスクをとらなくなる人が、他国に比べると、多いのかもしれません。
このマインドセットが、英語学習の最も大きな障壁になります。
母国語ではない言語をマスターしようとするプロセスの中で「間違わない」なんてことは、不可能です。天才でも、そんなことは無理です。
英語ネイティブの人だって、文法やスペルを間違ったりするんです。
私達だって、日本語は母国語だけど、間違った漢字を使っちゃったり、変な日本語使っちゃったりしますよね?
母国語ではない英語を習得しようと練習している人が、間違わずに上達するなんてことは、(言い切るね)ぜっっっっったいに無理です。
オランダ人だって、めっちゃくちゃ間違えながら、その間違いからすこしずつ修正しながら正しい英語を身につけるのです。
日本人はこれがしにくいから、いつまでたっても英語が話せないのだと私は思います。
かく言う私も、留学に行ったばかりの頃、間違った英語で発言して恥をかきたくなくて、友達とも十分に話せず、授業でも発言できませんでした。「今日も一言も発言できなかった……」と泣きながらトボトボ帰った日が、懐かしいです。
私の英語力がめきめきと上達しはじめたきっかけ
しかしある頃から、「もういいや、間違っていても伝わればいいや!」と開き直っちゃいました。
だって、ニューヨークにいる人のほとんどの人は英語ネイティブではなく、英語が第二言語の人で、私の気持ちがわかるだろう? そっちも理解に努めてくれや! と思えるようになってきたんです。
そしたら、「あ、いまの文法違ったな」と思う英語でも、まあまあ伝わるではないか!もし伝わんなくても、あちらも理解しようとききかえしてくれるし、コミュニケーションできているではないか!! と気づいたのです。
そこから私の英語力はめきめきと上達していきました。
英語を話せるようになりたいあなたにまずお願いしたいのは、完璧な英語を話そうとするその無謀な信念を、おもいっきり遠く遥か彼方に放り投げてください。そんなの絶対ムリなので。
とりあえずつたわりゃあいい!! と、芸人の出川さんを見習ってください(知らない方は「出川イングリッシュ」で検索して動画を見つけてください)。
出川イングリッシュを笑っている場合じゃありません。
あなたも、出川イングリッシュが出来るように、まずならないといけないのです。
ビリギャル本人 さやか(小林さやか) 1988年、名古屋市生まれ。高校2年の時に出会った恩師、坪田信貴氏の著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称:ビリギャル)の主人公。慶應大卒業後、ウェディングプランナーを経て、“ビリギャル本人”としての講演や執筆活動などを展開。2019年4月より、聖心女子大学大学院へ進学、21年3月修了。22年9月より、米国コロンビア大学教育大学院の認知科学プログラムに留学。24年5月修了。 著書に『私はこうして勉強にハマった』(サンクチュアリ出版)『ビリギャルが、またビリになった日 勉強が大嫌いだった私が、34歳で米国名門大学院に行くまで』(講談社)がある。