ビジネス戦略とは、企業の課題解決や目標達成をするためのシナリオのことです。ビジネス戦略は、企業が事業目標を達成するために必要です。この記事では、ビジネス戦略について解説します。ビジネス戦略と戦術の違い、目的、計画する手順などについても解説するので、参考にしてください。
目次
ビジネス戦略とは
ビジネス戦略とは、自社の課題を解決したり着実に事業の目的を達成したりするために、ビジネスの方向性を定めることやプロセス、シナリオのことです。ビジネス戦略が定まると、企業は失敗するリスクを軽減できます。ビジネス戦略は、大きく分けて「企業」「事業」「機能」の3つです。ビジネス戦略の分類については、後ほど解説します。
戦術との違い
戦略と戦術は言葉が似ているものの、概念は全く異なります。戦術とは、戦略を実行するための具体的な施策や方法のことです。課題を解決したり目標を達成したりするために、戦術ではリソースの分配やパフォーマンスの測定など、さまざまな施策を立てます。ビジネスでは、両者を明確に切り分けて考えることが大切です。
ビジネス戦略の目的
ビジネス戦略を定める目的は、失敗のリスクを軽減するためです。ビジネス戦略を定めずに感覚や過去の成功事例で経営を進めると、致命的な失敗をする可能性が高まります。デジタル機器の普及や人口の減少など、変化が激しい現代だからこそ、ビジネス戦略を定めることが重要になります。
ビジネス戦略のレベル
ビジネス戦略のレベルは、大きく3つに分けられます。ここでは、それぞれのレベルについて解説します。
企業戦略
企業戦略とは、企業全体で推進する長期的なビジネス戦略のことで、一般企業や行政でも必要とされています。企業戦略で決める内容の事例は、以下の通りです。
・経営理念を定めてどの事業領域で戦うのかを決める
・事業の組み合わせを構築する
・事業ごとの経営資源の配分を決める
事業戦略
事業戦略とは、事業ごとに定めるビジネス戦略のことで、個々の事業で戦っても競合他社に負けないように、市場で勝てる対策を立てます。事業戦略では、以下のような内容を考えます。
・ビジネスモデルを設定する
・事業内の業務ごとに配分する経営資源を決める
・市場や顧客の分析をする
機能戦略
機能戦略とは、事業戦略を細かく分けた部署ごとのビジネス戦略のことで、営業部であれば営業戦略、人事部であれば人事戦略などが該当します。企業戦略や事業戦略を実現するために、機能戦略は欠かせません。機能戦略では、以下のような内容を決めます。
・部署ごとに定めた戦略の期限やアプローチ方法、成果を決める
・事業における機能領域ごとの方向性を明確にする
ビジネス戦略を立てる際に大切なポイント
ビジネス戦略を立てる際には、重視すべきポイントがあります。ここでは、3つのポイントについて解説します。
自社の強みを活かして競合他社と差別化する
ビジネス戦略を立てる際には、自社の優れている人材や技術などの強みを活かして、競合他社と差別化することが大切です。ビジネス戦略を立てて差別化できれば、失敗の軽減と利益の増加につながりやすくなります。
実行可能な計画を立てる
ビジネス戦略では目標やビジョンを明確にして、実行可能な計画を立てることが大切です。達成困難な戦略を立てると、実行できなくなる場合もあります。ビジネス戦略は長期戦略を立ててから、中期・短期の戦略を立てると方向性がブレにくくなります。
一貫性を持たせた戦略や施策にする
ビジネス戦略には、一貫性を持たせることがポイントです。企業戦略・事業戦略・機能戦略をバラバラに策定しても、効果は期待できません。それぞれの戦略をうまく機能させるためにも、一貫性を持たせた戦略や施策にしましょう。
ビジネス戦略を立てる手順
ビジネス戦略を立ててよい効果につなげるためには、手順が大切です。ここでは、5つのステップによる手順について解説します。
1.経営理念やビジョンを定める
まずは経営理念やビジョン、目的を定めましょう。経営理念とは、経営者が企業の価値観や使命、行動方針などを普遍的に表したものです。ビジョンとは、経営理念を元にして、企業が中長期的に目指す姿のことです。
経営理念やビジョンが定まると、戦略目標を設定する際の土台になります。企業によってはビジョンだけでなく、ミッション(使命)やバリュー(価値観)を定めているケースもあります。
2.ビジネス戦略を定める
自社に効果のあるビジネス戦略を立てるために、市場や顧客、競合他社などの外部分析と、自社の内部分析を行いましょう。分析結果がまとまり、事業を行う分野が決まったら、強みを活かせるビジネス戦略を定めてください。自社の強みを活かしつつ戦略を細かく定められれば、大きな失敗は避けられます。
3.経営環境を分析する
ビジネス戦略では自社を取り巻く外部環境と、内部環境に対する強みや弱みを把握しましょう。外部環境とは、国内外の政治や競合他社の動き、市場や顧客のニーズなどを指します。内部環境とは、自社の人・物・金、組織風土、生産性などです。
分析する際には、フレームワークを使いましょう。フレームワークとは、物事を考えていく際に使用する枠組みのことです。ビジネス戦略に適したフレームワークについては、後ほど解説します。経営環境が分析できたら、事業分野も決めてください。
4.具体的な戦術を決める
ビジネス戦略を実現させるために、始めに定めた経営理念やビジョン、目的などを念頭に置いて、具体的なビジネス戦術を立ててください。ビジネス戦術は経営理念やビジョン、目的などと乖離すると実現が難しくなるため、注意しましょう。
5.ビジネス戦略を実行する
具体的な戦術が定まったら、ビジネス戦略を実行しましょう。ビジネス戦略と戦術の整合性をとるためにも、評価や意思決定のルールも整理してください。ビジネス戦略は実行したからといって、必ずしも期待した結果になるとは限りません。1~3年周期で、定期的にビジネス戦略を見直して修正することも必要です。
ビジネス戦略を立てる際に役立つフレームワーク
ビジネス戦略には、外部環境と内部環境の分析が必要です。ここでは、分析に役立つフレームワークを4つ解説します。
SWOT分析
SWOT分析とは、経営戦略を計画する際に、内部環境と外部環境のプラス面・マイナス面を洗い出すフレームワークで、多面的に分析できます。SWOTは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの頭文字を取っており、観点を整理して分析できます。
3C分析
3C分析とは、ビジネスを行うにあたり、市場の関係性を理解するために使われるフレームワークで、マーケティング環境を抜け漏れなく把握できます。3Cは、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の頭文字の「C」を表しています。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは、自社にとっての5つのフォース(脅威)を分析し、競合各社や業界の収益構造を明らかにして、自社の競争優位性を探るフレームワークです。ファイブフォース分析は、アメリカの経営学者マイケル・ポーター氏により提唱されました。ファイブフォース分析の対象となるフォースは、以下の通りです。
・業界への新規参入企業による脅威
・売り手の交渉力
・買い手の交渉力
・既存の競合他社による脅威
・代替品の存在による脅威
VRIO分析
VRIO分析とは、価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の頭文字を取っており、それぞれの観点から自社の経営資源を評価するフレームワークです。自社の経営資源(人・物・金・情報)の競合優位性を知る際に活用でき、自社の強みを活かしたビジネス戦略が定められます。
ビジネス戦略に欠かせない代表的なキーワード
ビジネス戦略を定める際には、欠かせないキーワードがあります。ここでは、4つのキーワードについて解説します。
コア・コンピタンス
コア・コンピタンスとは、競合他社が真似できない、自社の中核となる能力や強みのことです。コア・コンピタンスでは、それぞれの企業が持つ能力や強みを活かして、自社の価値を顧客に提供していきます。コア・コンピタンスが満たす条件は、以下の3つです。
・顧客に利益をもたらす自社能力
・競合他社に模倣されにくい自社能力
・複数の商品や市場に大きく推進できる自社能力
イノベーション
イノベーションとは、革新や変革をもたらすことです。商品やビジネスモデルなどに新しい考え方や技術を導入し、生み出された価値により社会にインパクトを与えます。イノベーションには、さまざまなタイプがあります。ここでは、代表的なタイプを3つ解説します。
・破壊的イノベーション 積極的に新しい考え方や技術を導入して、商品やサービスを生み出すこと
・プロセス・イノベーション 新しい生産方式や流通方法を導入すること
・マーケット・イノベーション:新顧客やニーズを開拓すること
デジタルトランスフォーメーション
企業におけるデジタルトランスフォーメーション(以下DX)とは、デジタル技術を活用して、商品やサービスだけでなく、企業文化や組織などもよい方向へ変革させることです。DXの推進は、近年変化の激しい市場において、競争優位性を維持し続けるために重要なテーマといえます。
サステナビリティ
サステナビリティとは、持続可能性を意味しており、環境や社会、経済に対して用いられているキーワードです。環境・社会・経済に対して、企業が持続可能な状態を実現する経営を行うことを、サステナビリティ経営といいます。近年では社会的責任という観点から、サステナビリティに向けた取り組みに高い関心が集まっています。
まとめ
ビジネス戦略は、企業の課題解決や目標達成をするために欠かせません。ビジネス戦略を定めずに経営を進めると、致命的な失敗をする可能性が高まります。デジタル技術の進化や人口の減少などの変化が激しいからこそ、ビジネス戦略は重要な要素になると言えます。
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(画像提供:iStock.com/marchmeena29)